ロシアのハリコフ生れでアメリカの経済学者。アメリカに移住,帰化し,1926年にコロンビア大学で博士号をとり,ペンシルベニア大学,ジョンズ・ホプキンズ大学,ハーバード大学教授を歴任。この間,アメリカ統計学会会長,アメリカ経済学会会長をつとめた。クズネッツ経済学の特色は,経済統計量の長期的趨勢についての実証研究に徹することにある。彼は,アメリカにおける国民所得会計の成立に際して主導的役割を演じたが,その後は世界各国の国民総生産やその構成要素の分析を通じて,長期波動,産業構造の変化法則,平均貯蓄性向の長期的安定性,所得分配の平等度の逆U字型変動等の多くの規則性を発見した。クズネッツ・サイクルは有名であり,著書は《国民所得とその構成》《近代経済成長の分析》(以上1966),《諸国民の経済成長》(1971)ほか多数がある。これらの業績で71年にノーベル経済学賞受賞。
執筆者:安場 保吉
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アメリカの経済学者。ロシアのハリコフ(現、ウクライナのハルキウ)に生まれ、若くしてアメリカに帰化し、コロンビア大学に学び、1926年に同大学で学位を取得。ペンシルベニア大学(1936~1954)、ジョンズ・ホプキンズ大学(1954~1960)の教授を経て、ハーバード大学経済学部教授(1960~1971)。この間、全国経済調査会(NBER)の主要メンバーとしても活躍した。専攻分野は、国民所得論、景気変動論、経済成長論などであり、とくに国民所得の推計や経済成長の国際比較についての数量的・実証的分析で高く評価されている。また、景気循環についてのクズネッツ循環、平均貯蓄性向の長期安定性、所得分配の平準化傾向などについての経済学的貢献がある。1971年にノーベル経済学賞を受賞。主著には『経済成長――六つの講義』Six Lectures on Economic Growth(1959)、『近代経済成長の分析』Modern Economic Growth(1966)などがある。
[藤野次雄]
『塩野谷祐一訳『近代経済成長の分析』全2巻(1968・東洋経済新報社)』
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…主循環とはジュグラー・サイクルのことを意味していたので,ワードウェルは,ジュグラー・サイクルより長く,コンドラチエフ・サイクルより短い周期の循環運動の現れているのに気づかなかった。 1930年になると,S.S.クズネッツは,アメリカ,イギリス,ドイツ,フランスなどのいろいろの商品の生産量と価格の系列からトレンドを除いた後に,20年を少し上回る平均周期をもったサイクルを発見した。彼は,このサイクルをコンドラチエフ・サイクルと同じ種類のものと考えていた。…
…これが産業構造の変化を大ざっぱな3分類法によって分析した最初のものである。その後S.S.クズネッツらによっても,同様な分析がなされている。 産業構造の分析を工業部門に絞って行ったものとして有名なものに,ドイツの経済学者ホフマンWalther G.Hoffmannの例がある。…
…所得の不平等は第2の方法で計測されることが多い。 所得分布は経済成長の過程で当初こそ不平等化が進むが,一定の時点をすぎると一転して平等化に向かうというS.S.クズネッツの逆U字仮説がある。この仮説は先進18ヵ国の経験から導き出された。…
… アメリカには,〈新しい経済史〉には入らないとしても,数量経済史の中に含めて差支えないいくつかの流派がある。国民経済計算(社会会計)の方法を用いて経済成長や経済変動を描写し,経験法則を見いだすもので,長期波動,産業構造変化法則,平均貯蓄率の安定等の発見を含むS.S.クズネッツの業績が代表的なものである。ほかに人口史,物価史,貨幣史などの分野でも多くの業績がみられる。…
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