ルーマニア生まれのギリシア人作曲家。音楽の勉強と並行してアテネ工科大学で建築学を学んだ。第二次世界大戦中は地下組織に身を投じて対独抵抗運動に参加。大戦後も反独裁政府抵抗運動を行い、そのため死刑を宣告されたが、1947年パリに亡命し、65年にはフランスに帰化。1948年からル・コルビュジエのもとで建築設計を担当するかたわら、オネゲル、ミヨー、メシアンに音楽を学ぶ。55年初演の『メタスタシス』、57年初演の『ピソプラクタ』以降、一貫してコンピュータを利用した作曲活動を続け、確率分布の法則、蓋然(がいぜん)性理論を音楽に導入した作曲家として広く知られている。ミクロ的には偶然的にみえてもマクロ的にみれば統御されているような構造を音楽に適用した。カオス(混沌(こんとん))と秩序の厳密な階層構造を特徴とする。表面的にはリゲティらの音群技法とも似ているが、クセナキスの場合、音の密度の濃淡、音域の計算などから、巨大な音の壁を聴くようなところがある。80年代にはデジタル・コンピュータを用いた音楽教育、作曲プログラムの開発などにも従事した。代表曲に『エオンタ』(1964)、『ポリトープ』(1967)、『ノモス・ガンマ』(1969)、『ペルセポリス』(1971)などがある。97年(平成9)京都賞受賞。著書に『形成化された音楽』Musiques formelles(1963。英訳『Formalized Music』1971)、『Musique. Architecture』(1971。邦訳『音楽と建築』)がある。
[細川周平]
『高橋悠治訳『音楽と建築』(1975・全音楽譜出版社)』▽『オリヴィエ・ルフォー・ダロンヌ著、高橋悠治訳『クセナキスのポリトープ』(1978・朝日出版社)』▽『武満徹著『すべての因習から逃れるために――武満徹対談集』(1987・音楽之友社)』▽『武満徹著『歌の翼、言葉の杖――武満徹対談集』(1993・ティビーエス・ブリタニカ)』▽『Iannis Xenakis:Formalized Music;Thought and Mathematics in Composition(2001, Pendragon Press)』
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ルーマニア生れのギリシア人作曲家。第2次世界大戦中の抵抗運動のため祖国を追われ,1947年以来パリに定住し,フランス国籍を獲得。H.シェルヘンの支援を受け,アテネ工科大学で音楽と建築学を学び,そこで得た数学の知識を音楽に応用する試みを行う。ル・コルビュジエの下での建築の構造計算の仕事は,やがて《ポリトープ》(1967年,モントリオール。1972年,クリュニー)という光と建築と音楽の総合をはかる作品として結実。コンピューターによる確率論にもとづく諸作品をみずから〈ストカスティック音楽stochastic music(推計音楽)〉と呼び,コンピューター音楽に多大な影響を与える。代表作に《ピソプラクタ》(1956),《エオンタ》(1964),《ノモス・ガンマ》(1968)などがあり,また彼が携わった主要建築にブリュッセル万国博のフィリップス館(音楽はE. バレーズ)などがある。
執筆者:細川 周平
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…前者の方向はアメリカのヒラーL.A.Hillerなどによって追求され,アイザクソンL.M.Isaacsonと共作した弦楽四重奏のための《イリアック組曲》(1957)などが作られたが,音楽的に評価されるものはあまりない。後者の方向を積極的に追求したのはクセナキスである。彼は当初より数学的な形式モデルに基づく作曲を行っていたが,音の分布状態等を推測統計学を応用して確率論的に決定する方法を採るようになると,その計算のためにコンピューターを導入した。…
※「クセナキス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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