クセノファネス(読み)くせのふぁねす(その他表記)Xenophanes

デジタル大辞泉 「クセノファネス」の意味・読み・例文・類語

クセノファネス(Xenophanēs)

[前565ころ~前470ころ]古代ギリシャの哲学者詩人。擬人的神観に反対し、神は一にして一切なるものと説いた。エレア学派の祖とする見方もある。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「クセノファネス」の意味・読み・例文・類語

クセノファネス

  1. ( Xenophanēs ) 古代ギリシアの詩人。哲学者。イオニアコロフォンに生まれる。ホメロスヘシオドスの擬人的神観をきびしく批判し、神は唯一全能で不変不動であると説いた。(前五七〇頃‐前四七五頃

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クセノファネス」の意味・わかりやすい解説

クセノファネス
くせのふぁねす
Xenophanes
(前565ころ―前470ころ)

ギリシアの詩人、哲学者。小アジアのコロポン生まれ。祖国が紀元前540年ころペルシア人に占領されたのちは諸国放浪。イオニアの自然哲学土壌に育った彼は、徹底した合理精神を貫いて、当時の思想宗教倫理に激しい批判を加えた。とくにホメロスやヘシオドスに描かれている擬人化された神々を否定し、「人間と神々のなかで最大の唯一の神」の存在を主張した。彼の思想はエレア学派に強い影響を与えた。

[橋本隆夫 2015年1月20日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「クセノファネス」の意味・わかりやすい解説

クセノファネス
Xenophanēs

前6世紀のギリシアの詩人哲学者。生没年不詳。イオニア地方のコロフォンの人。ホメロスの擬人的な神々に痛烈な批判をあびせた啓蒙的知性の持ち主。〈しかし,かりに牛,馬,獅子などに,手によって人間のように描き作品をしあげる能力があるとすれば,馬は馬に似せて,牛は牛に似せて神々の姿を描くことだろう……〉。彼自身は,人間のように動きまわることなく,しかも全宇宙を見通して支配する一なる神を想定した。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「クセノファネス」の意味・わかりやすい解説

クセノファネス
Xenophanēs

前6世紀のギリシアの哲学者。イオニアのコロフォンに生れ,故郷がペルシア軍に荒されてのちエレアに移住ピタゴラスと同時代人でエレア派の創始者。「すべては一つである」という命題を初めて述べたといわれている。またミレトスの自然学的教養を身につけた彼は「唯一の神は神々や人間のなかで最も大きく,姿も考えも死すべきものとはいささかも似ていない」として人間的な神々を否定,ホメロスやヘシオドスを痛烈に非難した。エレア派のいう「一にして全」はいまだ彼にあっては神学的宗教的性格を有していたが,神を有限化する述語を拒否し,単一性と不変性をその本質としたことは同時に彼の哲学上の原理の表明であったといえよう。主著は『自然について』。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「クセノファネス」の意味・わかりやすい解説

クセノファネス

前6世紀のギリシアの詩人,哲学者。イオニアのコロフォンの人。各地を放浪し,風刺詩を作り,ホメロスの擬人的な神々を否定したことで知られる。〈馬や牛に絵を描く能力があれば,馬は馬に似せて,牛は牛に似せて神々の姿を描くであろう〉。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のクセノファネスの言及

【イオニア学派】より

…この派は唯一つの原初的物質(アルケー)を想定し,これから世界が形成されるとしたが,これは真実在についての体系的説明としての哲学にとって,重要な一歩を踏み出すものであった。コロフォン市に生まれ,シチリアに移住したクセノファネスもこの派に入れられることがあるが,彼がイオニアの宇宙論に精通していたことは疑いえない。エフェソス市生れのヘラクレイトスもこの派に数えられることがあるが,〈相対立するものの調和〉の思想を唱えた彼は,原初的物質の考えを自身のうちになおとどめるとはいえ,物質的一元論の限界を超えており,すでに古代の学説史家の間でもこの派に入れるのは疑問とされている。…

【ギリシア神話】より

… ギリシア神話についての解釈もギリシア自身に始まる。前6世紀の自然哲学者クセノファネスはその擬人観を批判したし,同じ世紀のテアゲネスTheagenēsは神々を擬人化された自然力または倫理的原理とみなすことで神々の栄誉を救おうとした。寓意的解釈の濫觴(らんしよう)であった。…

※「クセノファネス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android