翻訳|klystron
速度変調管ともいう。1939年アメリカのバリアン兄弟Sigurd Varian,Russel Harrison V.により発明された極超短波帯(UHF以上)の増幅用真空管。陰極よりの電子を高い直流電圧で加速し,これより十分小さい高周波電圧をかけた電極間隙を通過させると,電子速度が周期的に変化する。これがある距離を進む間に,位置的に密度の変化した電子流となる。すなわち速度変調が密度変調に変わる。十分密度の振幅が大きくなったところに電極間隙を置き出力を取り出す。ふつうの真空管で,周波数の上昇とともに,電子走行時間の影響による入力抵抗の低下を改善したものである。入,出力電極には,同形の空胴共振器を設けたものが基本であるが,両者の間にさらに2~3個を加えたものが多く実用されている。これにより増幅率,能率,出力ともに著しく高くなる。Q値の高い空胴共振器を用いるため,周波数帯域は狭い。数百~数千MHzの間で,出力連続1MW,パルス30MW,増幅率50dB,能率60%が得られている。高エネルギー物理実験および医療用加速器,レーダーなどに用いられている。
執筆者:相浦 正信
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
マイクロ波(1ギガヘルツ以上の電気振動)の増幅・発振用の電子管。電子管内の電子の走行速度を入力信号で変調し、これら電子が出力側に達するとき電子流に密度差が生ずるのを、共振空胴により取り出すもので、速度変調管ともよぶ。1935年にドイツのA・A・ハイルとO・ハイル兄弟は、負格子真空管で問題になった電子走行時間の変動を積極的に利用する「速度変調」のアイデアを出した。このアイデアはスタンフォード大学のR・H・バリアンとS・F・バリアン兄弟、およびゼネラル・エレクトリック社のメトカーフにより39年に具体化され、以後クライストロンとして広く用いられている。
電子銃から放射された電子流は、入力信号と共振する空胴共振器(バンチャー)の間隙(かんげき)を通過するとき速度変調される。この電子流は、ある距離を離れた出力用の空胴共振器(キャッチャー)の間隙に達するときに、先の遅い電子に後の速い電子が追い付くという集群作用によって密度変調されている。クライストロンはこの現象を利用して発振や増幅を行う。バンチャーとキャッチャーが別個のものを直進型クライストロンとよび、主として増幅用に用い、また、電子流を反射させて空胴共振器を入出力用に共用したものを反射型クライストロンとよび、発振用に用いる。超大型加速器や核融合プラズマ用にパルス動作で100メガワット連続波で1メガワットのクライストロンもあり、重量はほぼ1トンにも達している。
[岩田倫典]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
マイクロ波で使われる電子管であり,高出力の増幅管,マイクロ波の発振管として用いられる.動作周波数範囲は GHz 帯に及ぶ.動作原理は,電子ビームが空洞ギャップを通過するとき,このギャップに信号電圧が加わっていれば,その電界の作用によって電子の速度が変化し(速度変調),この場合,電子ビームの電子の密度は,信号電圧に応じて濃淡(密度変調)を生じ,この濃淡を出力として取り出せば増幅作用となる.図はその原理を示したものである.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...
12/17 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新