進行波管(読み)しんこうはかん(英語表記)travelling-wave tube

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

進行波管
しんこうはかん
travelling-wave tube

電子ビームと伝播電磁波との相互干渉を利用してマイクロ波増幅を行わせる電子管。陰極から出た電子は陽極によって加速され,細長い真空ガラス管中の金属螺旋内を走る。一方,陰極側からこの螺旋に印加されたマイクロ波は螺旋の金属線に沿って進むので,マイクロ波電磁界の管軸方向の速度は遅くなっている。この電磁界と電子ビームの速度がだいたい同じになるように設計すると,電子を加速する電界は電子を常に加速し,逆方向の電界は電子を常に減速しながら進むので,一定密度で陰極を出た電子は次々に疎と密な部分に分けられる。言い換えると,加速電界の前方あるいは減速電界の後方に電子が密集する (電子は負の電荷をもっているので,マイクロ波電界の方向と電子の加速度の方向とは逆である) 。電子ビームの速度がマイクロ波電界の速度より少し速くなるように調節すると,電子はその前方にある減速電界に逆らって進むことになる。したがって,電子はその運動エネルギーを失い,電磁波にエネルギーを与え,増幅されたマイクロ波が出力端子から取出されることになる。なお,集束コイルによって管軸方向に磁界が加えられているのは,電子ビームの散逸を防ぐためである。また,利得を大きくすると,内部帰還のため安定な増幅が行えなくなるので,螺旋の外側に減衰部 (抵抗体) が設けられている。 (→後進波管 )

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百科事典マイペディアの解説

進行波管【しんこうはかん】

TW管とも。進行波増幅を行うマイクロ波真空管の一つ。電子銃によるビーム状電子流を囲んでらせん状の導線が配置されこれに入力信号が送られる。信号はこの線路上を進行波となって進む間に電子流に作用してそれに疎密を生じさせ,この疎密が逆に線路上の信号波に働きかけ,さらに電子流に作用し,これを繰り返すことにより増幅作用を起こす。共振器がないので広い周波数範囲にわたってマイクロ波の増幅ができる。→クライストロン
→関連項目電子管

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世界大百科事典 第2版の解説

しんこうはかん【進行波管 traveling wave tube】

1940年代の初め,イギリスのコンフナーR.Kompfnerによって発明された極超短波(UHF以上)の広周波数帯域増幅管。TW管ともいう。通常の増幅器では,共振回路を用い,集中的に電子流と相互作用を行うので周波数帯域幅が狭い。進行波管では,進行する電波と電子流とをある長さにわたって相互作用を行わせる。電波の速度が広い周波数範囲にわたりほぼ一定であれば,広帯域性が得られる。低い単位長あたりの増幅度は,長さによって稼ぐ。

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大辞林 第三版の解説

しんこうはかん【進行波管】

マイクロ波の増幅用真空管の一種。螺旋らせん形などの遅延回路に沿って進行するマイクロ波とその中心を通る電子ビームとの相互作用により、マイクロ波を増幅するもの。高利得・広帯域の増幅器として利用できる。

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