日本大百科全書(ニッポニカ) 「オビ川」の意味・わかりやすい解説
オビ川
おびがわ
Обь/Ob’
ロシア連邦中部の川。西シベリアを流れて北極海に注ぐ世界有数の大河。本流の長さは3650キロメートル、支流のイルティシ川の源からの長さは5410キロメートル、流域面積299万平方キロメートル。最上流部は中国とモンゴルとの国境に近いアルタイ山脈に源をもつ二つの川からなる。ビエルーハ峰(4506メートル)の氷河から流下するカトゥニ川と、テレツコエ湖から発するビヤ川で、これらがアルタイ地区のビースク付近で合流してオビ川となる。ここまでの400キロメートルで標高は4000メートルから500メートルへと激しく低下する。本流は山地を北流し、アルタイ地区の中心都市バルナウルを過ぎるころから西シベリア低地に出る。シベリア最大の都市ノボシビルスクを貫流し、トムスク付近で右岸からトミ川をあわせて北西に流れ、さらにチュメニ州ハンティ・マンシスクで左岸からイルティシ川をあわせる。ここから河口までの1160キロは、標高差わずか40メートルである。最下流部は乱流し、網状流となってカラ海のオビ湾奥に三角州をつくって流入する。オビ川とイルティシ川に挟まれたバシューガン湿原は、春の雪解け時には日本の面積ほどが水没する。全流域にわたって、ほぼ半年間は結氷する。
流域はロシア連邦の国民経済上重要な地域となっており、活発な水上輸送が行われている。シベリア鉄道沿いの一帯では小麦の生産が盛んで、また、支流のトミ川流域にあるクズバス炭田は国内有数の埋蔵量をもち、ノボシビルスクやノボクズネツクを中心としたクズネツク・コンビナートを形成している。1950年代以降、中流域のスルグートやイルティシ川流域のチュメニを中心とする油田の開発が進められている。一方、豊富な水量を利用して、59年にはノボシビルスク貯水池(オビ海ともいう)と水力発電所が建設された。さらに将来はオビ川の流域を変更して南流させ、中央アジアの灌漑(かんがい)を行う計画もある。
[宇根 寛]