ベンゼン置換体の一つ。古くはクロロベンゾールといわれていた。独特のにおいのする無色の液体。鉄片、塩化鉄を触媒として塩素によりベンゼンの水素原子1個を塩素原子で置換することにより合成する。置換塩素化がさらに進むとジクロロベンゼンも生成するが、冷やすと結晶化するので除くことができる。銅を触媒として高温・高圧でアンモニアと反応させるとアニリンを生成し、水酸化ナトリウムと反応させるとフェノールとなる。多くの有機薬品、主要な染料中間体の原料として用いられるほか、溶剤としても利用されている。
[谷利陸平]
普通はベンゼンの水素原子を1個だけ塩素原子で置きかえた形の,分子式C6H5Clで表される化合物をいう。広義には,ベンゼンの水素原子を1~6個の塩素原子で置きかえた形の化合物の総称として用いられ,この場合には塩素原子の数によりモノクロロベンゼンC6H5Cl,ジクロロベンゼンC6H4Cl2などと呼ぶ。すべて触媒を用いベンゼンと塩素とを反応させて合成される。いずれも水に不溶,有機溶媒に可溶。
モノクロロベンゼンは,融点-45℃,沸点132℃の無色の液体で,アニリンやフェノールの合成原料となる。また,他の多塩素置換ベンゼンと同様,熱的安定性を利用し熱交換器の熱媒体として使用でき,さらに殺虫剤(DDTなど)の原料となる。ジクロロベンゼンにはo-,m-,p-の3種の異性体があり,このうちp-ジクロロベンゼンには衣類の防虫効果がある。
執筆者:村井 真二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
C6H5Cl(112.56).ベンゼンに鉄触媒を用い,塩素を作用させれば得られる.無色の液体.融点-45.2 ℃,沸点132 ℃.1.066.1.524.エタノール,エーテルに可溶,水に不溶.アニリン,クロロニトロベンゼンなど染料中間体の原料となる.また,溶媒としての用途も多い.LD50 2910 mg/kg(ラット,経口).[CAS 108-90-7]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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