DDT(読み)ディーディーティー

デジタル大辞泉 「DDT」の意味・読み・例文・類語

ディー‐ディー‐ティー【DDT】[dichlorodiphenyltrichloroethane]

dichlorodiphenyltrichloroethane殺虫剤の一。有機塩素剤で、神経毒として強い殺虫効果を示すが、残留性が高く、環境汚染生物濃縮をもたらす。現在は多くの国で使用禁止マラリア流行地では、ハマダラカ駆除のため制限付きで使用される。

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精選版 日本国語大辞典 「DDT」の意味・読み・例文・類語

ディー‐ディー‐ティー【DDT】

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] dichlorodiphenyltrichloroethane の略 )[ 異表記 ] デーデーテー 殺虫剤の一つ。化学式 C14H9Cl5 白色ないしクリーム色の粉末。一九三八年、スイスのP=ミュラーが殺虫力があることを発見。昆虫類がこれに触れると、神経機能が攪乱(かくらん)され、けいれん麻痺を起こして死ぬ。粉剤、乳剤、水和剤などがある。残留毒性があり、日本では昭和四六年(一九七一)使用禁止。
    1. [初出の実例]「去年飛行機の上から撒かれたDDTが蚊やり火にむせる」(出典:時のうごき1947(1948)〈中野重治編〉ねずみと人間)

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百科事典マイペディア 「DDT」の意味・わかりやすい解説

DDT【ディーディーティー】

ジクロロジフェニルトリクロロエタンdichlorodiphenyl trichloroethaneの略で,有機塩素系殺虫剤の一種。クロルベンゼンベンゼン)とクロラールを反応させてつくる。1939年,スイスのP.H.ミュラーが殺虫性を発見。適用対象となる害虫は非常に多く,衛生害虫,農業害虫の防除に大きく役立ったが,残留毒性が強いため,日本では1971年使用禁止。(図)
→関連項目海洋汚染化学物質審査規制法カーソン環境ホルモン公害輸出殺虫剤生物濃縮沈黙の春抱水クロラール有機塩素化合物

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改訂新版 世界大百科事典 「DDT」の意味・わかりやすい解説

DDT (ディーディーティー)



有機塩素系殺虫剤の一つ。dichlorodiphenyltrichloroethaneの略。DDTにはいくつかの異性体があるが,その中で殺虫力のあるのはpp-DDTである。1939年に,スイスのP.H.ミュラーらによってその殺虫性が発見され開発された。ミュラーはその業績で1948年度のノーベル生理学医学賞を受けた。

 DDTは融点108℃の白色結晶で,メイチュウヨトウムシ,ウンカ,スリップス,アオムシなどの農業害虫ばかりでなく,ハエ,カ,シラミ,ノミなどの衛生害虫に有効なので,第2次世界大戦中から,戦後にかけて大量に用いられた。哺乳類に対する急性毒性は,50%致死量LD50=250mg/kg(ラット,経口)と低毒性であるが,動物体内の組織,とくに脂肪組織に吸収蓄積されて慢性毒性を示す。このように残留性が高いことが問題となり,1971年から日本ではその使用が禁止となり,登録が抹消された。DDTは典型的な神経毒で,神経繊維に作用し,反復興奮をひきおこすことが明らかにされている。殺虫力は一般にパラチオン,BHCより劣り,遅効性である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「DDT」の意味・わかりやすい解説

DDT
でぃーでぃーてぃー

ジクロロジフェニルトリクロロエタンdichlorodiphenyltrichloroethaneの略称。正式化学名は2,2-bis (p-chlorophenyl)-1,1,1-trichloroethane。USP記載名はクロロフェノタン。有機合成殺虫剤の先駆をなすもので、1874年にツァイドラーOthmar Zeidler(1859―1911)により合成され、1939年にスイスのP・H・ミュラーによって殺虫力が発見された。第二次世界大戦中ドイツやアメリカで軍用に使用され、戦後は各国でカやハエやシラミなどの衛生害虫、あるいは農作物害虫防除に広く用いられた。ベンゼンに結合するクロルの位置により4種の異性体があるが、殺虫力の強いのはp,p'(粗製品中約80%)で、白色針状結晶。モノクロルベンゼンとクロラールを硫酸で脱水縮合して合成する。水には溶けない。化学的に、また微生物的に分解しにくい安定な化合物である。DDTは神経繊維に作用する神経毒で、冷血動物に強い毒性を現し、哺乳(ほにゅう)類などの温血動物に対しては概して弱い。食物連鎖によって生物濃縮され、最終的に人体の脂肪組織に蓄積されるため残留毒性が問題となって、1969年(昭和44)より日本では自粛的に生産を中止し、1971年から使用が禁止となった。

[村田道雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「DDT」の意味・わかりやすい解説

DDT
ディーディーティー
dichlorodiphenyl-trichloroethane

C14H9Cl5昆虫類に対する神経毒として殺虫作用をもつ塩化ジフェニルエタン系化合物。最も殺虫作用の強いのは pp′-体であるが,殺虫剤としての工業製品は pp′-体約 65~80%を含む異性体混合物である。クロロベンゼンとクロラールを硫酸の存在で反応させてつくる。白色粉末で,融点は 90℃前後。 1874年に合成されていたが,1939年スイスの P.ミュラーらによりその殺虫効果が発見され,広く防疫,農業用殺虫剤として用いられるようになった。昆虫に対しては接触,経口的に作用するが,あぶら虫,だに,温血動物に対する毒性は小さい。しかし残存農薬は害虫以外の生物にも影響を及ぼすおそれがあるので,日本では使用を禁止された。

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化学辞典 第2版 「DDT」の解説

DDT
ディーディーティー

p,p′-dichlorodiphenyltrichloroethaneの略称.[同義異語]ジクロロジフェニルトリクロロエタン

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デジタル大辞泉プラス 「DDT」の解説

DDT

プロレスの技のひとつ。相手の頭部を脇に抱えたまま倒れこみ床に叩きつける投げ技。

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世界大百科事典(旧版)内のDDTの言及

【海洋汚染】より

…また鉱・工業からの廃液中の銅が沿岸のカキを汚染し,緑色の有毒カキが生産されたことも有名な事件である。(3)DDT,PCBの汚染 農業の生産性を高めるために,どこの国でも,多量の化学肥料や農薬を用いている。そのために生産性は確かに上がったが,一方では散布された農薬や余分の肥料は,大気中を浮遊し,地表に落下したものは河川を通じ,最終的には海洋に流れ込み,海洋の農薬汚染をもたらした。…

【殺虫剤】より


[種類]
 現在までに用いられてきた殺虫剤を化学構造から分類すると表のとおりである。これら殺虫剤のうちDDT,γ‐BHCドリン剤などの有機塩素系殺虫剤は,安価でしかもたいへん有効な殺虫剤として,第2次大戦後二十数年間にわたって多用されたが,その残留性による慢性毒性の危険から,現在では大部分が製造停止,あるいは登録からはずされている。一方,有機リン酸エステル系殺虫剤として最初に開発されたTEPP,パラチオンなどは,急性毒性が強く,その有効性にかかわらず危険な殺虫剤と考えられていたが,その後の開発研究によって,低毒性の同族体,例えばマラソン,MEP,ダイアジノンなど多数が見いだされ,現在ではカーバメート系殺虫剤とともに,主要な殺虫剤として広く使用されている。…

※「DDT」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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