グランド・ゼコール(読み)グランドゼコール

百科事典マイペディア「グランド・ゼコール」の解説

グランド・ゼコール

フランスで総合大学とは別個に各分野のエリートを養成するために作られた高等教育機関の総称エコール・ノルマル・シュペリウール理工科学校国立行政学院など,総数300校以上にのぼる。バカロレア(大学入学資格)取得後に,独自におこなわれる選抜試験に合格しなければならない。通常は大学に登録した後に受験する者が多い。

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大学事典「グランド・ゼコール」の解説

グランド・ゼコール[仏]

[グランド・ゼコールと大学]

中世以来の大学は歴史的に,神・文・法・理・医という枠組みが守られてきた。フランスのグランド・ゼコールの起源は,もともとは,この枠組みを越えた技術教育,専門教育を行い,高度な技術者の養成に応えるために設立されてきたところに由来する。「grandes écoles」の字義通りの意味は「大・学校」であるが,これは大学外の「学校」として創設されたものであることを示してもいる。フランス以外の他の多くの国々にも技術者養成のための高等教育機関は存在してきたが,通常は大学よりも格下に位置づけられることが多い。これに対してフランスのグランド・ゼコールの独自性は,少数精鋭のエリート教育を行い,大学よりも高い威信を有する点に見いだされる。

 フランスでは,中等教育の修了と同時に高等教育の入学資格でもあるバカロレア試験に合格すれば原則として大学に入学できるが,グランド・ゼコールへの入学は,バカロレア取得後,リセ(日本の高校に相当)に付設されているグランド・ゼコール準備級(フランス)への厳しい入学試験に合格し,さらにそこでの通常2年の勉学を経て,さらに厳しいグランド・ゼコールへの入学試験に合格することが必要である。このグランド・ゼコール準備級には2014~15年で8万人強が登録している(高等教育全体の学生数は247万人)。また,たとえば理工科学校(フランス)(エコール・ポリテクニーク)が国防省,鉱山学校が経済産業省,土木学校が環境・エネルギー・海洋省というように,グランド・ゼコールによっては大学とは異なる省の管轄下に置かれている点も特徴的である。

[グランド・ゼコールの歴史]

今日に至る著名なグランド・ゼコールのいくつかは,1743年創設の土木学校,83年の鉱山学校のように大革命前に創設されている。これらの学校の特徴として,養成する専門分野を校名に冠していることも指摘できる。こうした学校は,教育の内容は時代に応じて変化してきていても,学校名は常に保持し続けており,それも威信の源の一つとなっている。革命期の1794年には,理工科学校および高等師範学校(エコール・ノルマル・シュペリウール)が創設された。19世紀後半の第三共和政初期の1872年には,今日のパリ政治学院(シアンス・ポー)が当初は私立の学校として創設されている。また,1819年にはパリ商業高等学校,21年には古文書学校,81年にはパリ高等商業学校(HEC)が創設され,さらに第2次世界大戦後の1945年には国立行政学院(ENA)が設立された。これらの学校の創設を大きな流れで見るならば,革命以前から革命期という早い時期には技術系の学校が多く創設され,19世紀末頃からは政治や経済に関わる学校が設立されてきたと捉えることができよう。こうした流れは,社会の要請の大きな変化に対応したものと捉えることもできるのである。

[グランド・ゼコールとエリート養成]

グランド・ゼコールによるエリート養成(フランス)は,どのようなものとして捉えることができるだろうか。一例として,大統領や首相の出身を見てみよう。複数の学校を卒業している者も少なからずいるが,それらを延べ人数として数えると,1958年の第五共和政成立以降の7人の大統領のうち,ENAの出身者は3人,シアンス・ポーの出身者は4人,理工科学校,高等師範学校の出身者は各1人である。また20人の首相経験者のうち,ENAの出身者は8人,シアンス・ポーの出身者は12人,高等師範学校の出身者は3人を数え,ほかにも商業系のグランド・ゼコールを卒業している者も複数いる。学問界においても,たとえばパストゥール,ベルグソン,デュルケーム,サルトル,アルチュセール,フーコー,デリダ,ブルデューなど,高等師範学校出身の著名な学者は数多い。このように,グランド・ゼコールはフランス社会において指導的な役割を果たす人々を実際に輩出してきたと言うことができよう。

 学校によっては全寮制のものもあり,少人数の教育で,卒業後にも続く関係が育まれる場となることも多く,それがエリートとしての支えともなり得る。ただし,とくに政治の分野においては,こうしたグランド・ゼコール出身者のエリート主義が,庶民から離れた政治を行っているという批判が示されることもある。一方,シアンス・ポーでは社会的に困難な状況に置かれている地域の出身者の入学枠を設けて,階層的なエリートの再生産のみとはならないようにとの試みも進められている。

[グランド・ゼコールの将来]

今日グランド・ゼコールの多くは外国人を積極的に受け入れて,単なるフランスのためのエリート養成という枠を越えた国際的な展開を行ってきている。またフランスでは近年,PRES(研究・高等教育拠点)やその後継のCOMUE(大学・高等教育機関共同体)という形で,複数の高等教育機関,研究機関が集まってより大きなまとまりがつくられてきているが,グランド・ゼコールもこうしたまとまりに加わって,大学や他の教育研究機関との関係を深めようとしている。時代の動きに対応しつつ,これからもグランド・ゼコールはその独自の存在を示し続けていくのではないだろうか。
著者: 白鳥義彦

参考文献: Louis Liard, L'enseignement supérieur en France(1789-1893), tome Ⅱ, Armand Colin, 1894.

参考文献: George Weisz, The Emergence of Modern Universities in France, 1863-1914, Princeton University Press, 1983.

出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報

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