パストゥール

化学辞典 第2版 「パストゥール」の解説

パストゥール
パストゥール
Pasteur, Louis

フランスの化学者,微生物学者.1843年パリの高等師範学校(École normale supérieure)の理科に入学,卒業後,学位取得のために化学助手として学校に残り,A. Laurent(ローラン)と共同研究(1846~1847年)の影響もあって,結晶偏光面と旋光性の相関関係の研究を行った.とくにE. Mitscherlich(ミッチェルリヒ)とJ.-B. Biotが,酒石酸塩溶液は偏光面を右に回転させ,パラ酒石酸(ラセミ酸)塩水溶液は回転させないことを見つけていたので,これに関心をもった.ラセミ酸アンモニウムナトリウムを二つの光学活性対掌体に分けることに成功し,それまで知られていなかった偏光面を左に回転させる酒石酸の存在を証明して,立体化学の出発点となった.アルザスストラスブールの理学校に職を得(1848年),ラセミ酸塩の化学的ならびに生物的光学分割にも成功した.1854年北仏リールの理学校の化学教授兼学校長になり,光学活性と生物との関係への関心と地場産業への関心から,発酵とくに乳酸発酵を研究した.1857年にパリの母校に戻り,教務主任ならびに研究担当責任者になり,のちに同校生理化学実験室長を務めた(1867~1888年).F.-A. Pouchet(1800~1872年)の自然発生説(1859年)に反対して,空中の微生物の侵入を防ぐ“ハクチョウの首型フラスコ”を考案して自然発生説を完全に否定(1864年)した.1862年パリ科学アカデミー会員.1865年ブドウ酒腐敗原因菌を研究し,約60 ℃ の低温殺菌法(pasteurization)を提案した.同年カイコの病気研究を依頼され,その病気を寄生によるものと体内細菌によるものの2種類に区別し,予防法を提案した.1867~1874年ソルボンヌ大学の化学教授も務めたが,1868年最初の脳出血左半身麻ひして,言語障害が残った.自身では実験はできなくなったが,かれの指導のもとでの研究は続けられた.1873年医学アカデミー準会員.1877年炭そ病の研究をはじめ,続いて壊そ・敗血症・産じょく熱を研究.1879年すでに自ら発見したニワトリコレラ菌弱毒変異株による免疫を発見した.1881年弱毒性変異炭そ菌株によるヒツジの免疫実験成功を発表し,続いて公開実験に成功した.1880年狂犬病の研究を開始し,5年の研究実験後,アカデミーで成果を報告し,予防注射人体への適用に成功させた.1887年2回目の脳出血の発作.1888年にはパスツール研究所が開設し,1892年大統領臨席のもとで70歳の祝賀を受けた.1894年3回目の脳出血のためにほとんど全身が麻ひし,翌年死去した.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「パストゥール」の解説

パストゥール
Louis Pasteur

1822〜95
フランスの化学者・免疫学を開拓した細菌学者
乳酸菌を発見して微生物の自然発生説を否定し,腐敗作用を解明した。低温滅菌法を発明。化膿菌の発見,狂犬病の予防接種法など,近代医学に大きな業績を残した。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「パストゥール」の解説

パストゥール
Louis Pasteur

1822~95

フランスの化学者,微生物学者にして細菌学の創始者。立体化学の素地をつくるとともに,乳酸菌,酵母菌,脾脱疽(ひだっそ)および鶏コレラの病原菌を発見,また人体狂犬病予防接種にも成功した。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「パストゥール」の意味・わかりやすい解説

パストゥール
ぱすとぅーる

パスツール

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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