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グリセロール glycerol

翻訳|glycerol

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

グリセロール
ぐりせろーる
glycerol

油脂の構成成分として生物界に多量に存在し、工業的にも重要な三価アルコール。分子構造式は

で、1,2,3-プロパントリオールともいう。日本薬局方名はグリセリン。[大川いづみ]

性状

分子量92.09、比重d(20℃)1.2636、屈折率n(20℃)1.4746、無色、無臭、粘稠(ねんちゅう)な液体で砂糖の60%の甘味がある。吸湿性が強く、放置すれば空気中の水分を重量の半量も吸収する。融点17.8℃。ただし融点以下でも固化しないことが多く(過冷却状態)、通常、氷冷により固化する。大気圧中での沸点290℃で分解する。水、エチルアルコールには任意の比で溶けるが、石油エーテル、クロロホルム、ベンゼンには不溶。[大川いづみ]

歴史

1779年スウェーデンの化学者シェーレがオリーブ油のアルカリ加水分解の際、偶然分離したもので、1813年フランスのシュブルールが、ギリシア語の「甘いglykys」にちなんでグリセリンと命名した。1957年アルコールの化学名の語尾は「オール」、グリセリンの正式化学名はグリセロールと国際機関で定められたが、産業界や一般社会ではグリセリンの呼称が多く使われている。
 1830年ごろから、せっけん産業の副産物として動植物油脂分解物から精製されてきた。1866年ノーベルがグリセリンを硝酸化して爆薬としたダイナマイトを発明し、以後はダイナマイトの材料として軍需物資でもあった。日本では1883年(明治16)初めて輸入し、1916年(大正5)国産開始。1940年代より合成洗剤が普及し、せっけん生産量がグリセロールの需要増に伴わなくなって、石油を原料とするプロピレンからの化学合成法が発達した。1975年(昭和50)には日本の生産量の過半が石油資源由来となった。2000年代初頭の日本での油脂由来のグリセロール精製量は年間約5万トン、インドネシアなどからの輸入が約5000トンである(経済産業省調べ)。[大川いづみ]

存在

動植物の油脂、グリセリドはグリセロールと脂肪酸がエステル結合したものであり、この状態で天然に大量に産し、エネルギー源として代謝されている。また量的には少ないがリン脂質など生命現象に不可欠な多様な化合物にも含まれる。[大川いづみ]

用途

吸湿性、粘性、溶解性、無毒性などにより、医薬品や化粧品の基剤、加工食品の安定剤、タバコの防乾剤、印刷インキの添加剤、冷凍食品や細胞の保護剤、不凍液など、幅広い用途がある。食品添加物としてのグリセリドの材料であるほか、短い炭素鎖にヒドロキシ基3個があるため、化学工業の素材としても有用である。硝酸化したニトログリセリンは爆薬としても狭心症の特効薬としても多用されている。多塩基性有機酸(フタル酸など)と縮合させた高分子化合物アルキド樹脂はおもに塗料になる。エポキシ樹脂およびポリウレタン合成の出発材料でもある。[大川いづみ]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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