ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「グロタンディーク」の意味・わかりやすい解説
グロタンディーク
Grothendieck, Alexandre
[没]2014.11.13. フランス,サンジロン
ドイツ生まれのフランスの数学者。モンペリエ大学とエコール・ノルマル・シュペリュールで学び,1953年にナンシー大学で博士号を取得。ブラジルのサンパウロ大学,アメリカ合衆国のカンザス大学およびハーバード大学を経て 1959~70年フランス高等科学研究所 IHÉSで研究。その後,1988年までモンペリエ大学に在籍した。1966年,ロシアのモスクワで開催された国際数学者会議において,代数幾何学に関する業績によりフィールズ賞を受賞した。代数幾何学は多項式がゼロになる集合で与えられる代数多様体を研究する分野で,19世紀から 20世紀にかけてイタリア学派などによって大きく発展したが,20世紀半ばにグロタンディークが中心となって抽象的な枠組みの視点がもたらされた。アンドレ・ベイユ,ジャン=ピエール・セール,オスカー・ザリスキーらの業績に基づき,代数幾何学を圏理論(→圏)によってスキームの理論として定式化した。これによって,従来は体を基礎にして構築された代数幾何学は可換環上で展開され,幾何学的手法が整数論の問題に応用されるようになり,研究領域が大きく広がった。ピエール・ドリーニュによるベイユ予想の解決,ゲルト・ファルティングスによるモーデル予想の解決,アンドリュー・ワイルズによるフェルマの最終定理の証明などの成果は,グロタンディークによる抽象的な代数幾何学の系譜としてとらえることができる。
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