改訂新版 世界大百科事典 「グンカンドリ」の意味・わかりやすい解説
グンカンドリ (軍艦鳥)
frigatebird
ペリカン目グンカンドリ科Fregatidaeの鳥の総称。熱帯海域に分布し,島で繁殖する。ごく大型の海鳥で全長80~105cm,翼を広げると1.7~2.4mになる。ほかの海鳥を追撃して餌を吐き出させ,横取りする習性をもつ。全体に黒褐色で,胸は白い。くちばしは細く長く,先端は鋭い鉤(かぎ)状になる。翼は先がとがり細く長い。尾も非常に長く,深い切れ込みがある。雄よりも雌のほうが大型である。飛翔(ひしよう)は巧みで,吐き出させた餌が海上や地上に落ちる前に空中でうけることもできれば,海に浮いている餌や地上の餌を空中からさっとくわえあげることも,またトビウオを空中でとらえることもできる。採餌のとき以外は,島や海上の上昇気流に乗って上空高く浮いている。したがって,海鳥であっても海におりることはない。熱帯海域の島で,ほかの海鳥の集団営巣地のそばで繁殖する。赤いのどを膨らませて求愛の誇示を行う。巣は低木ややぶの上につくられ,1腹1個の卵を産む。植物がない場合には地上にも営巣する。雌雄交替で44~55日間抱卵し,雛孵化(ふか)後6~7ヵ月間で巣立つが,特異な採餌法のため,若鳥はさらに数ヵ月間,親鳥に依存する。したがって毎年繁殖せず,隔年あるいは3年に1回子を育てる。ペリカン目の中ではおそらく原始的な一群で,世界に1属5種を産する。
アメリカグンカンドリFregata magnificensは最大種で,翼を広げると2.4mに達する。オオグンカンドリF.minorとコグンカンドリF.arielは,夏の季節風や台風に運ばれて,ときどき日本近海に渡来する。その多くは若鳥である。
執筆者:長谷川 博
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報