インドネシアのバリ島に見られる身体演技を伴った男性合唱。チャッ,チュ,チなどの意味のない音を素材にしているところから,この名が付けられた。ケを略してチャッcakと呼ぶ場合もある。100~200人が五つ六つのグループに分かれてそれぞれ違ったリズムを唱え,全体としては複雑で迫力のある響きとなる。1人がシュルル・プン・プン・プン(ガムランのゴングの擬声語)と4拍子を刻んで速度や強弱を統制するが,指揮者はいない。本来は,サンヤンsanghyangと呼ばれる疫病平癒を願う呪術的な踊りの伴奏であり,男たちは入神状態の踊り手を車座に囲んで体を左右にゆすって,半ば忘我で絶叫する。20世紀の初めごろから,ケチャをドラマ化することが行われ,現在では,インドの叙事詩《ラーマーヤナ》を題材とする舞踊劇に仕立てたものが有名であり,多くのグループが活動している。地面に座った男たちの円の中に踊り手たちが登場し,物語の推移を太い声の太夫が語る。上演は夜,寺院の中庭で行われ,照明はたいまつの光だけで,きわめて劇的である。
執筆者:田村 史子
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インドネシアのバリ島で行われる芸能。本来、疫病平癒や魔除(よ)けを目的とする憑依(ひょうい)舞踊サンヤンsanghyangにおける男声合唱を意味していたが、1930年代にオランダ人がこの男声合唱をインドの叙事詩『ラーマーヤナ』を題材とする舞踊とあわせ、今日一般に知られているケチャの形にした。猿の軍団に見立てられた200人前後の男性が円形に座り、その中央で舞踊が行われる。男性コーラスは手や体を動かしながら、なかば忘我状態になってガムランのさまざまな楽器を擬音的に模倣する。その身ぶりやことばの多くは悪霊を追い払うための呪文(じゅもん)からきているといわれる。チャ、チュ、チなどの音を多用し、グループ別に異なるリズムを入れ子式に、いわゆるホケット(旋律に休符を挟んで短い断片にする技法)のように歌う。観光客向けのケチャも含めて、バリ島南部のいくつかの村で上演されている。わが国では、芸能山城(やましろ)組の演奏がよく知られている。
[卜田隆嗣]
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