改訂新版 世界大百科事典 「ケテン」の意味・わかりやすい解説
ケテン
ketene
2価の基C=C=Oをもつ化合物の総称。狭義には水素2原子が結合したCH2=C=Oをいう。水素1原子および1個の炭化水素基R(アルキル基またはアリール基)が結合したものをアルドケテンaldoketene,2個の炭化水素基R,R′が結合したものをケトケテンketoketeneという。
IUPAC命名法ではCH2=C=Oをケテンとし,他はその誘導体とみなして,たとえば(CH3)2C=C=Oはジメチルケテン,C6H5-CH=C=Oはフェニルケテンのように置換基の名を冠して命名する。
ケテンCH2=C=Oは刺激臭のある有毒の気体で,融点-134.1℃,沸点-41℃。アセトンCH3COCH3または酢酸CH3COOHを熱分解して得る。
CH3COCH3─→CH2=C=O+CH4
CH3COOH─→CH2=C=O+H2O
非常に反応性に富み,水,アルコール,アミンと容易に反応し,酢酸,酢酸エステル,酢酸アミドを生成する。酢酸と反応させると無水酢酸(CH3CO)2Oが得られる(ワッカー法)。また,きわめて容易に二量化しβ-ラクトン型のジケテンとなる。
ジケテンは催涙性の刺激臭をもつ有毒の液体で,融点-6.5℃,沸点127.4℃。これにたとえばアニリンやフェニルヒドラジンを反応させると得られるアセト酢酸アニリドやピラゾロン誘導体には,染料,医薬品の合成中間体などとしての幅広い用途がある。
一般にケテン類は,α-ブロモカルボン酸の臭化物に亜鉛Znを作用させるか,カルボン酸塩化物に第三アミンNR″3を作用させると生成する。
ケテン類をカルボニル化合物と反応させるとβ-ラクトンが生成する。
執筆者:奈良坂 紘一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報