6月初旬の宵、南の地平線上に上半身だけ姿を見せる星座。日本でも沖縄付近ではほぼ全身を見ることができる。上半身が人間、下半身が馬という粗暴なふるまいをするケンタウロスの姿で、固有名ではなく半人半馬族全体のことをさした星座名である。上半身の部分にはオメガ・ケンタウリ星団(ω星団(オメガせいだん))という肉眼でも見える明るい球状星団があり、明るさはおよそ4等星ほどである。昔は1個の星とみなされていたため、恒星につけられるギリシア文字ωがつけられていたが、実体は距離1万7000光年のところにある星の大集団だった。オメガ・ケンタウリ星団は東京では真南に昇りつめても地平線上わずか7度程度にしかならないので、みつけにくい。ケンタウロスの足元部分には、太陽にいちばん近い恒星として有名な0.1等のα(アルファ)星がある。距離は4.4光年で、グアム島やハワイでは春に見やすくなる。
[藤井 旭]
『藤井旭著『春の星座』(1989・金の星社)』▽『作花一志著『星空ウォッチングのすすめ』(1996・オーム社)』▽『デイビッド・マリン著、長谷川哲夫訳『デイビッド・マリンの驚異の大宇宙』(2000・ニュートンプレス)』▽『野尻抱影著『星座のはなし』(ちくま文庫)』
略号はCen。南天の星座。ケンタウルス(ケンタウロス)は上半身が人間,下半身が馬の姿というギリシア神話に活躍する一族である。この星座の南縁,天の川の中にα,βの両輝星が並び輝く。その西隣に南十字星がある。α星は光度0.7等,G2型の星と光度0.8等,K1型の星からなる実視連星で軌道周期80.089年,半長軸17.″665である。1838年ヘンダーソンT.Henderson(1798-1844)はケープ天文台でこの星を観測し,年周視差の測定に成功した。視差は0.″750で,距離は4.3光年である。この星から2°11′離れたプロキシマケンタウリは光度11等,M5型の赤色矮星(わいせい)でフレア星として知られている。この星の視差は0.″762,距離は4.28光年で太陽系にいちばん近い星になるが,固有運動値はα星と共通で,これと同一の体系をつくると考えられる。β星は光度0.6等,B1型の巨星で距離は360光年である。ωは球状星団でNGC5139であり,1.6万光年の距離にある。小望遠鏡で眺めて美しい天体である。概略位置は赤経13h20m,赤緯-47°。午後8時の南中は6月上旬であるが,日本ではこの星座の北の部分が見えるだけで,α,β星は見えない。
執筆者:石田 五郎
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