改訂新版 世界大百科事典 「ゲンジボタル」の意味・わかりやすい解説
ゲンジボタル
Luciola cruciata
甲虫目ホタル科に属し,体長12~18mm。本州,四国,九州の各地に生息し,古くから日本人にもっとも親しまれてきた昆虫の一つであるが,開発によって都市周辺ではほとんど見られなくなった。成虫は6~7月に多く,ヘイケボタルより出現がやや早い。雌は流水の水辺のコケなどに直径約0.5mmの黄色卵を平均500個,もしくはそれ以上も産みつける。約1ヵ月後に孵化(ふか)した幼虫は流水中でカワニナ(巻貝)を食べ,水中で越冬,春までに6回脱皮して終齢となる。十分に成長した幼虫(体長20~30mm)は,雨の日の夜,陸上へはい上がり,土中へ潜って蛹化(ようか),約30日後に羽化する。成虫は水のほかは摂食せず,10~20日生存するが,その間に交尾,産卵を行う。本種が生息できる環境としては清流であること,カワニナが生息すること,蛹化できる場所が水辺にあることがあげられる。なお,水温は5~21℃の範囲で,pHが6.5~7.8の範囲,水草が繁茂することも生息できる条件となる。
執筆者:林 長閑
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報