ゲーム障害(読み)ゲームショウガイ

デジタル大辞泉 「ゲーム障害」の意味・読み・例文・類語

ゲーム‐しょうがい〔‐シヤウガイ〕【ゲーム障害】

オンラインゲームテレビゲームをしたい気持ちを抑えられず、日常生活に支障が出てもやめられない症状ゲーム依存症

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゲーム障害」の意味・わかりやすい解説

ゲーム障害
げーむしょうがい

ギャンブル障害(病的賭博(とばく))などと同じ、行動の依存症(嗜癖(しへき))の一つ。おもにオンラインを使用したビデオゲームに没入し、自らをコントロールできなくなる状態。そのために現実生活での役割、社会生活がこなせなくなり生活に支障をきたす。

 レクリエーション、友人とのコミュニケーションなどを目的としてゲームを始めるが、しだいに現実世界とのバランスが逆転し、ゲームおよびゲーム関連行動が生活の主軸となる。そのため現実生活が破綻(はたん)し、社会的・職業的な機能が果たせなくなる。

 アメリカ精神医学会が定める診断基準DSM-5(Diagnostic and statistical manual of mental disorders, fifth edition。2013年発表)に「今後の研究のための病態」としてインターネットゲーム障害が定義されたのが、診断基準としては初めてのケースである。その後、世界保健機構(WHO)の国際疾病分類ICD-11(International Classification of Diseases, 11th Revision)が2022年に発効され、そこにもゲーム障害Gaming Disorderが疾患概念として取り入れられた。正式な和名はまだ決定しておらず、ゲーム症、ゲーム行動症など複数の候補があがっている。

 DSM-5、ICD-11はいずれも国際的に広く認知されている診断基準であり、信頼度は高い。しかしゲーム障害はまだ歴史の浅い疾患であり、診断概念についてはさまざまな論争がある。

[佐久間寛之 2023年7月19日]

定義と症状

一般に嗜癖・依存共通の項目として渇望(その行動に対する強い欲求)、コントロール障害(始めるとやめられない、減らそうと思っても失敗する、やるまいと思っても始めてしまう)、優先順位の変化(その行動が他の生活事項より優先される)、問題が起きても続ける、などの症状がおき、そのために社会生活が破綻する、ないしは機能低下をおこす。

 現在のゲーム障害が疑われる者の中心年齢は10代であるため、社会生活が破綻すると進級進学就職あるいは就労の維持が困難になる。そのために社会から逃避し、ゲームを中心とした生活となりやすい。単にゲームへののめり込みだけではなく、背景には発達障害要素、対人関係の問題、家庭の問題、自尊感情や自己効力感の低下など、複数の心理的・社会的要因があるため、ゲームをやめる・やめないといった二元論、あるいは単に診断を下すだけの対応では問題は解決しない。生活全般への支援、本人の孤立感や現実社会への忌避感を改善するような支援が望まれる。

[佐久間寛之 2023年7月19日]

疫学

中高生を対象に日本で行われた推計調査では、ゲーム障害が疑われる者は2012年(平成24)に52万人、2017年に93万人と推計された。ただし、この調査はスクリーニング調査であるため疑陽性率が高く、多めに見積もられているのではないか、使用されたスクリーニングがインターネットへの依存度を調べるツールであり、かならずしもゲームへの依存度とは一致しないのではないか、などの批判もある。

[佐久間寛之 2023年7月19日]

症状と治療

ゲームへの過度ののめり込みが主たる症状ではあるが、問題となるのは社会からの逃避であり、進級や進学など達成課題に到達できない点や、対人関係が構築できずに社会的孤立につながる点である。そのため治療や支援は本人への生活支援が重要となり、社会的孤立や孤独感をいかに解消するかが鍵(かぎ)である。単にゲームを問題視し、ゲームをやめることのみに焦点をあてた支援や治療はドロップアウト(治療からの脱落)を招く。現在のところ有効な薬物療法はなく、認知行動療法や動機づけ面接法などの有用性が確認されている。そういった手法を使いつつ、いかに本人を支え、さらなる社会的孤立を防ぐかが重要である。

[佐久間寛之 2023年7月19日]

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知恵蔵 「ゲーム障害」の解説

ゲーム障害

パソコンやスマートフォンなどを利用したゲームへの過度な依存によって、日常生活に支障をきたす症状。2018年1月、世界保健機関(WHO)は、ゲーム障害を、病気の世界的な統一基準である国際疾病分類(ICD)に認定する見通しを発表し、同年6月に公表予定の、ICDの最新となる「ICD-11」で、すでに認定されているギャンブル中毒と同様の、中毒性行動による障害「Gaming disorder(ゲーム症・障害)」として新たに盛り込む方針だ。
ICDのゲーム障害は、インターネットを経由するオンラインゲームだけでなく、オフラインゲームでも起こり得る。持続的あるいは反復的にゲームを行うことが問題視されており、ICD-11の最終草案では、ゲームを行いたいという衝動が抑えられない。日常生活の何よりもゲームを優先する。仕事や学業、健康等に支障をきたしても、ゲームが止められない。ゲームを継続することで、個人、家族、社会、学習、仕事などに重大な問題が生じるなどといった例が、ゲーム障害の具体的な症状となっている。
また、このような症状が12ケ月以上続けば診断が必要とされるが、年齢や状況に応じて、短期間でも依存症とみなす場合がある。
ちなみに、韓国では02年10月、24時間営業のインターネットカフェで、24歳の男性が86時間オンラインゲームを続け、死亡する事件が起こった。死因は、長時間同じ姿勢でいたための、「エコノミークラス症候群」によるものだった。その後も、ゲーム障害の症状が原因の死亡事故が相次いだため、韓国では、11年11月より、オンラインゲームを提供するゲームメーカーは、16歳未満のユーザーに対して、午前0時から午前6時までの間、サービスを提供してはならないという内容の「シャットダウン制」と呼ばれる法律が施行されている。
日本ではこのような法律はないものの、内閣府が16年度に実施した青少年のインターネット利用環境実態調査によると、青少年のインターネット利用者で、ゲームをする者は、全体の7割以上に及ぶ。また、青少年の多くは、深夜までオンラインゲームを行うため、昼夜が逆転して、遅刻や欠席が続き、留年や退学を余儀なくされる学生も増えている。

(横田一輝 ICTディレクター/2018年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

知恵蔵mini 「ゲーム障害」の解説

ゲーム障害

オンラインゲームなどへの過度な依存により日常生活に支障をきたす疾病。インターネットやスマートフォンの普及でオンラインゲームなどに過度に依存する問題が世界各地で指摘されていることを受け、世界保健機関(WHO)は2018年に公表予定の、病気の世界的な統一基準である国際疾病分類第11版(ICD-11)に新たな疾病として盛り込む方針を示している。WHOによると、「ゲームをしたい欲求を抑えられない」「ゲームをすることを他の日常生活の活動よりも優先してしまう」「家族関係、仕事、学習などに重大な問題が生じていてもゲームをやめることができない」といった症状が12カ月以上続いた場合、ゲーム障害と診断される。ただし、特に進行の早いとされる幼少期においては、全ての症状にあてはまり重症であれば、より短い期間でも依存症とみなすとしている。

(2018-1-9)

出典 朝日新聞出版知恵蔵miniについて 情報

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