翻訳|addiction
精神医学の用語。アディクションともいう。世界保健機関(WHO)は、特定の物質(薬物)を好む傾向について病的な意味を込めて「薬物嗜癖」という用語を使って定義している。一般的に「嗜癖」の用語は「嗜癖薬(嗜癖性薬物)」「アルコール嗜癖」あるいは「物質嗜癖」のように用いられる。嗜癖薬は夢中になっておぼれる意味から耽溺(たんでき)薬の別称もある。嗜癖の特徴として考えられるものには、アルコールや薬物など物質摂取への依存性および習慣性、以前と同じ効果を得るための物質摂取量の漸増傾向(耐性)、その結果としての個人生活および社会生活面での障害などがある。「嗜癖」「依存」「習慣性」「乱用」などの用語の定義についてはこれまでさまざまに論議されてきたが、とくに嗜癖の概念定義はあいまいなままで確立しているとはいえない。また日本では、これらに対して「中毒」という概念がよく用いられてきた歴史がある。こうした流れのなかで概念定義の検討が重ねられ、物質摂取の「嗜癖」と「習慣性」を統合する概念として「依存」概念が導き出され、身体依存と精神依存に分けて考えられるようになった。身体依存とは物質そのものに対する依存で、体内の物質が少なくなると振戦(ふるえ)、発汗、譫妄(せんもう)などの離脱症状とよばれる自律神経症状を伴う。これに対して精神依存は、物質の作用による多幸感などを求めて薬物を渇望する類のものである。
2013年に改訂されたアメリカ精神医学会のDSM-5(精神障害の診断と統計の手引き第5版)では、「依存」と「乱用」をまとめて「使用障害」の表現が採用されている。またWHOの国際疾病分類第10版(ICD-10:International Statistical Classification of Deseases and Related Health Problems)では、「乱用」のかわりに「有害な使用」という表現が使われている。「嗜癖」の概念は、DSM-Ⅲでギャンブル依存行動が「病的賭博」として初めて取り上げられ、物質への「依存」とは異なるという意味で、これまで「衝動制御の障害」として扱われてきた概念にかわって「嗜癖」がふたたび使われ始めた。この流れからDSM-5で「嗜癖」の概念復活が予測されたが、定義があいまいなどの理由で不採用となった。DSM-5では「病的賭博」は「ギャンブル障害」に変更され、この診断用語が属するカテゴリー「衝動制御の障害」は物質使用障害も含めた「物質関連障害および嗜癖性障害群」と変更され、「嗜癖」の用語はここでのみ使用されることになった。したがって物質関連の「アルコール使用障害」や「カフェイン使用障害」などもこのカテゴリーに含まれる。
[編集部]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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