コカ(英語表記)coca
cocaine plant
Erythroxylum coca Lam.

精選版 日本国語大辞典 「コカ」の意味・読み・例文・類語

コカ

〘名〙 (coca 元来はケチュア語) コカノキ科の低木ペルーおよびボリビア原産で、南米東南アジアなどで栽植される。茎は紫褐色で高さ二~三メートルになる。葉は革質で長さ三~九センチメートルになる楕円形初夏葉腋(ようえき)に径五ミリメートルぐらいの淡黄色の五弁花を叢生果実は長楕円状で三稜があり紅色に熟す。葉からコカインをとる。コカの木。〔英和商業新辞彙(1904)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「コカ」の意味・わかりやすい解説

コカ
coca
cocaine plant
Erythroxylum coca Lam.

麻酔薬や麻薬として有名なコカインを含有する常緑の小低木。コカノキ科に属し,原産地は南アメリカのペルーやボリビアのアンデス地方と推定されている。高さ1~3mで,よく分枝する。葉は互生し,短い葉柄があり,長楕円形から倒卵形,長さ4~9cm。花は前年枝の葉腋(ようえき)から生じる1~数本の短い花梗につき,小型の黄緑白色で,萼片は5枚,花弁も5枚ある。核果は赤熟し,卵状長楕円形で,中に1個の種子がある。

 コカ属Erythroxylumは全世界の熱帯に約100種が分布するが,南アメリカにもっとも多い。コカも南アメリカ原産であるが,確実な野生地ははっきりしない。南アメリカでの栽培はペルー東部とボリビアに多く,アンデス山脈の標高1500~4000mの地域で,温暖多湿な谷が適地となっている。栽培系統にはいろいろあって,それらに別種としてジャワコカE.novogranatense(Morris)Hieron.,ペルーコカE.truxillense Rusby,ボリビアコカE.bolivianum Burckなどの名が与えられているが,多様な環境条件下に分化した同一種内の変種として区別されることが多い。

 コカの葉を石灰にまぶしてかむ習慣は,アンデス山系インディアンでは2000年以上も前からあったらしい。かむと飢えや疲労を忘れ,活力がよみがえるような気持ちになるという。しかし,長期に連用すると,モルヒネと同様に習慣性を生じ,中毒症状を示すようになる。日本ではコカ葉も麻薬取締法を適用される。葉には有名なアルカロイドであるコカインをはじめ,シンナモイルコカイン,トロパコカインなどを含み,これらの麻酔作用はモルヒネと同様に強烈である。コカインによる局所麻酔作用は1880年代に発見され,外科手術に重用されるようになった。そのため,中南米をはじめインドやマレーシア地域に導入され広く栽培されるようになり,とくにジャワ島の産出量は多い。さらに低木でよく茂る樹形になるので,生垣などにも利用されることがある。コカ・コーラ飲料は,その名前のようにコカを含むといわれているが,その成分は企業秘密のためはっきりしない。

 繁殖は種子による。播種(はしゆ),移植のあと約1年あまりで収穫をはじめ,その後10年以上も収穫を続けることができる。
執筆者:

中央アンデスのインカ帝国ではコカは宗教的儀礼に不可欠なものとなっており,その生産と消費も国家のコントロール下にあったことが知られている。現在も,コカの葉をかむ習俗はアマゾン流域の一部および中央アンデスの高地部の原住民社会では一般的で,儀礼の際はもちろん日常的にも利用されている。たとえばペルーやボリビアのケチュア族やアイマラ族は乾燥したコカの葉をかむと,飢えや渇きがいやされ,疲労も回復されると信じており,畑仕事や旅行の際には欠かせないものとなっている。その際,石灰のかたまりをかじって,かんだコカを活性化させるという習慣も一般的である。南アメリカにおけるコカの栽培はアマゾン低地でもみられるが,大量に栽培しているのはアンデス東斜面の中腹地帯である。
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栄養・生化学辞典 「コカ」の解説

コカ

 [Erythroxylum coca].コカノキ科の植物で,葉から麻酔薬コカイン(アルカロイド)をとる.葉を抽出して飲料にも用いる.

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世界大百科事典(旧版)内のコカの言及

【コカイン】より

コカをはじめ南アメリカ産のコカノキ科コカ属植物各種の葉から抽出されるアルカロイドで,メチルベンゾイルエクゴニンという化合物。化学的合成も可能である。…

※「コカ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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