(読み)コ

デジタル大辞泉 「胡」の意味・読み・例文・類語

こ【胡】[漢字項目]

人名用漢字] [音]コ(漢) ゴ(呉) ウ(唐) [訓]えびす
〈コ・ゴ〉
中国で、北方または西方の異民族。えびす。「胡人胡地胡馬五胡
外国産の。「胡椒こしょう胡麻ごま
(「」と通用)「胡蝶」は昆虫の名。チョウ
〈ウ〉いいかげんな。「胡散うさん胡乱うろん
[名のり]ひさ
難読胡坐あぐら胡瓜きゅうり胡頽子ぐみ胡桃くるみ胡蝶花しゃが胡簶やなぐい

こ【×胡】

古代中国で、北方・西方の異民族の称。代には匈奴きょうどをさした。→五胡

う【胡】[漢字項目]


ご【胡】[漢字項目]

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「胡」の意味・読み・例文・類語

こ【胡】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 古代中国で異民族の呼称。秦漢以前は匈奴以後は塞外民族およびその国を指す。北狄。→五胡
    1. [初出の実例]「漢命五将、驕胡臣服」(出典:続日本紀‐養老四年(720)六月戊戌)
    2. [その他の文献]〔周礼‐冬官・総目〕
  3. すじの通らないこと。でたらめ。胡説

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「胡」の読み・字形・画数・意味


人名用漢字 9画

[字音] コ・ウ・ゴ
[字訓] たれにく・えびす・なんぞ

[説文解字]

[字形] 形声
声符は古(こ)。〔説文〕四下に「牛の垂(かんすい)なり」とあり、牛のあごの下の垂れ肉をいう。戈(ほこ)の柄を装着する部分のふくらみをも胡という。北方族を胡というのは、頷(あご)の下に瘤(こぶ)を病む風土病があるからだとする説がある。胡にまた大の義がある。「胡(なん)ぞ」は疑問詞系の仮借義。胡考・胡福は(か)の仮借義である。

[訓義]
1. あごのたれ肉。
2. すべて垂れ下がり、ふくれたもの。ほこのえだ、装着部の刃。
3. 大きい。
4. と通じ、とおい、ながい、はるか、としより。
5. えびす。もと北方族、のち西方族をも含めていう。
6. 何・害・盍などと通じ、疑問詞。なんぞ。
7. 胡説は、でたらめ。

[古辞書の訓]
〔新字鏡〕胡 太加不(たがふ)〔和名抄〕胡 之太久比(したくび)〔名義抄〕胡 シタクビ・アザケル・イノチ・ナンゾ・イヅクゾ/胡然 イカンゾ/胡爲ナスレゾ 〔字鏡集〕胡 アザケル・イノチ・イカデカ・ナンゾ・シタクビ・イヅクンゾ・ネタム・クツコリ・ミダリ

[声系]
〔説文〕に胡声として瑚・湖・餬など四字を収める。湖は胡肉のような形で水の停滞するところをいう。

[語系]
胡・湖・餬haは同声。みな余分のものが一所に停滞する意をもつ。また何hai、曷・(害)hat、盍hapと声近く、これらはみな疑問詞として仮借して用いる。

[熟語]
胡散・胡乱・胡為・胡越・胡苑・胡笳・胡・胡狢・胡角・胡羯・胡侃・胡雁・胡顔・胡騎・胡姫・胡鬼・胡・胡・胡教・胡琴・胡元・胡言・胡呼・胡胡・胡語・胡・胡行・胡寇・胡坐・胡猜・胡子・胡市・胡児・胡鬚・胡寿・胡臭・胡・胡椒・胡牀・胡縄・胡人・胡塵・胡説・胡旋・胡然・胡・胡・胡僧・胡賊・胡孫・胡談・胡地・胡蝶・胡梯・胡狄・胡塗・胡奴胡桃・胡同・胡・胡突・胡寧・胡馬・胡白・胡貉・胡貊・胡巫・胡舞・胡風・胡服・胡福・胡粉・胡兵・胡餠胡麻・胡虜・胡盧・胡・胡老・胡・胡
[下接語]
函胡・含胡・強胡・賈胡・五胡・商胡・垂胡・酔胡・東胡・肥胡・盧胡

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「胡」の意味・わかりやすい解説


中国人が北方、西方の異民族をよんだ語。戦国時代には内モンゴルに居住した異民族をさした。秦(しん)・漢(かん)時代には、主として匈奴(きょうど)を示すようになったが、パミール以西のイラン系の民族、とくにソグド人も胡とよばれ、魏晋(ぎしん)南北朝時代以後はもっぱらソグド人の意味に用いられた。また、胡桃(くるみ)、胡麻(ごま)などのことばは、これらがトルキスタンから中国へもたらされたことを示している。

[護 雅夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

山川 世界史小辞典 改訂新版 「胡」の解説

胡(こ)

中国人が初め北方の,のちに西方の異民族を呼んだ語。戦国時代には長城地帯の異民族を,漢代には匈奴(きょうど)をさしたが,南北朝時代以後は主に西トルキスタンのイラン系民族,特にソグド人を意味するに至った。ただし,漢(漢人)と対比させて胡(胡人)をいう場合には,広く非漢人をさす。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「胡」の解説


漢民族が広く北方や西方の異民族をさした呼称
秦・漢ではもっぱら匈奴 (きようど) をさした。後漢 (ごかん) 以後,西方のチベット系種族や中央アジア・インド人までをさすようになった。唐ではさらに,中央アジアのソグディアナ諸国を胡国,そのイラン系住民を胡人と呼んだ。彼らは商業活動にすぐれたため,商胡ともいわれ,東西交通の陸路で活躍した。

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「胡」の意味・わかりやすい解説



Hu

中国人が,初め北方の,のちに西方の異民族を呼んだ語。中国の戦国時代には長城地帯の異民族を,漢代には主として匈奴をさしたが,南北朝時代以後はおもに西トルキスタンのイラン系民族,特にソグド人を意味した。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【胡人】より

…中国,秦・漢ではもっぱら匈奴をさし,シルクロードの往来が盛んになると西域の諸民族を西胡または単に胡と呼び,唐では広く塞外民族をあらわす一方で,特に多くイラン人をさした。深目高鼻・青眼多鬚(たしゆ)の胡賈(こか)・胡商は西方の文物や慣習をもたらして中国文化の世界化に多大の役割をはたし,それは日本にも及んだ。…

※「胡」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android