コケモモ(読み)こけもも

改訂新版 世界大百科事典 「コケモモ」の意味・わかりやすい解説

コケモモ (苔桃)
cowberry
mountain cranberry
Vaccinium vitis-idaea L.

小果樹として近年とくに北欧で注目されはじめたツツジ科の常緑小低木。北半球の寒帯に広く分布し,日本でも北海道から九州までの高山帯に生える。高さ5~20cmくらいで地下茎ではう。花期は初夏で,小鐘形の淡紅色を帯びた白花のあとに,紅色の径4~7mmくらいの房状球形果実をつける。ドイツをはじめスウェーデンフィンランドスイスなどで栽培・改良を開始しており,すでに〈コラレ〉その他の品種を発表している。挿木種子でふやし,ピートモスの砕粉を加えた酸性土で栽培する。植付後にも砂や破砕ピートをまくと生育がよい。適度の施肥で高さ40cmくらいになり,大粒果実が鈴なりになる結果がドイツで得られている。利用は加工して,ジュース,ジャム,洋菓子類の材料のほか果実酒にし,液漬瓶詰で市販される。また最近は乳製品と組み合わせ,アイスクリーム,ヨーグルトに混ぜたりする。近縁種のツルコケモモV.oxycoccus L.やクランベリーは,草状で地上茎がつる状にはう。クランベリーは北アメリカに原生し,果実は指頭大で豊産のため,アメリカで大産業に発展し,ヨーロッパにも増えつつある。
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葉はウワウルシ葉の代用品である。配糖体アルブチン,トリテルペノイド,フラボノイドタンニンなどを含み,尿道疾患の防腐,収れん,利尿薬として用いる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コケモモ」の意味・わかりやすい解説

コケモモ
こけもも / 苔桃
[学] Vaccinium vitis-idaea L.

ツツジ科(APG分類:ツツジ科)の常緑小低木。高さ10~20センチメートルで、茎の下部は地をはう。葉は革質でつやがあり、長楕円(ちょうだえん)形、長さ1~2センチメートル、裏面は淡緑色で小さい黒点がある。6~7月、枝先の短い総状花序に筒状壺(つぼ)形の淡紅白色花をつける。花冠は長さ6ミリメートルで先は四つに中裂し、雄しべは8本。果実は球形、径約7ミリメートルで、9~10月に赤く熟す。酸味はあるが甘く、食用にする。北海道から九州の亜高山帯から高山帯の岩石地やハイマツの下に生え、北半球の寒帯に広く分布する。名は、果実をモモに見立て、全体が小さいのでつけられた。果実で果実酒、シロップ、ジャムなどをつくる。葉は配糖体のアルブチン、メチルアルブチンやタンニンなどを含み、薬用としてウワウルシ葉(ウワウルシはツツジ科の常緑小低木、クマコケモモともいう)の代用にする。

[小林義雄 2021年4月16日]


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百科事典マイペディア 「コケモモ」の意味・わかりやすい解説

コケモモ

北海道〜九州の高山帯にはえ,北半球の寒帯にも広く分布するツツジ科の常緑小低木。高さ10〜20cm,茎の基部は地中をはう。葉は倒卵形で上面にはつやがあり,縁は少し下面に巻く。夏,白〜淡紅色の鐘形の花を開き,液果は球形で径5〜7mm,赤熟する。葉は利尿剤とし,果実は生食,塩漬,果実酒にもする。

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世界大百科事典(旧版)内のコケモモの言及

【ベリー】より

…園芸学ではさらに広い意味でミカン類やナシ,リンゴを含めていう場合もあるが,一般には果物のうち欧米で小果類small fruitsと呼ばれる一群をさすことが多い。ブドウ,イチゴ,キイチゴ類,スグリ類,コケモモ類その他がこれに当たるが,日本では果樹としてこのうちブドウ,イチゴを除いたものを低木性果樹,または小果樹類といっている。ベリーと呼ばれる果実のなかには,キイチゴ類やイチゴのように植物学的には液果でないものも含まれる。…

※「コケモモ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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