中南米、メキシコ、ペルーなどに産するノパルサボテンnopal cactus(ウチワサボテン)に寄生する、エンジムシ(臙脂虫)の雌を熱処理してつくった赤色の顔料で、絵の具のカーマイン・レーキcarmine lakeの原料として用いられる。主成分はカーマイン酸(カルミン酸)で、アルミナ、鉄、クロムなどを媒染することによって、鮮紅色から紫がかった色相を得ることができるので染色にも用いられ、ヨーロッパでは羊毛を染めるのに多く用いられた。
近世日本に輸入されて、陣羽織などにつくられた猩々緋(しょうじょうひ)の羅紗(らしゃ)は、これを用いたものが多かった。化学染料が発達してからは、あまり用いられることがなくなったが、近時、同系統のラック染料とともに、食品の無害着色加工などにふたたび見直されて、その需要が伸びてきた。
[山辺知行]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…樹枝に寄生した雌のラックカイガラムシの分泌物が染料に利用されたのである。ラックカイガラムシは古代インドでもラックダイという染料として用いられたが,このほかサボテンに寄生するコチニールカイガラムシすなわちエンジムシ(臙脂虫)から得られたコチニールは,古代インカなど中南米で使用された。古代フェニキアのケルメス,ヨーロッパでカーミンと呼ばれるものはタマカイガラムシの一種から得られた染料だと思われる。…
…半翅目コチニールカイガラムシ科の昆虫。虫体からコチニール(洋紅染料)が得られるのでこの名がある。…
…植物性のものには,ブドウ,カカオ,ベニノキ,クチナシ,ベリー類,コーリャン,トマトなどの果実に由来するもの,ハイビスカス,ベニバナなど花に由来するもの,アカネ,ウコン,ニンジンなど根に由来するもの,シソなど葉に由来するものがある。動物性のものには,ラック,コチニールがある。微生物に由来するものには,モナスクス,クロレラ,リボフラビンがある。…
※「コチニール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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