コロニー(社会福祉施設)(読み)ころにー(英語表記)colony

翻訳|colony

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

コロニー(社会福祉施設)
ころにー
colony

原義植民地、移植地だが、転じて、保護、治療、訓練などのため地域社会から隔絶された人たちの施設総称。日本では、1960年代に障害者福祉政策の課題としてコロニー建設が取り上げられるようになる。このころ、すでにアメリカでは大規模施設が厳しく批判され、イギリスではコミュニティケア思想が強調されるようになっていたが、日本はそれとは逆の動きをとった。

 日本では、親の死亡後の重度知的障害者のための施設を求める動きにこたえ、1971年(昭和46)群馬県高崎市に国立コロニー「のぞみの園」が、入所定員550人で開設された。入所対象者は、年齢15歳以上の知的障害のある者で、当時の規定で、(1)精神薄弱の程度が著しいため独立自活が困難な者で、必要な保護および指導のもとに社会生活をさせることが必要と認められる者、(2)身体障害を併合しているため一般社会においては適応が著しく困難と認められる者、のいずれかに該当する者とされた。

 この国立コロニーの建設と前後して、都道府県が開設するいわゆる地方コロニーが構想されるようになり、1960年代後半から1970年代にかけて都道府県が建設に着手し、なかでも愛知県と大阪府は、国よりいち早く当面の大きな目標と標榜(ひょうぼう)して取組みを開始していた。最終的に全国18のコロニーが全国各地に建設された(『厚生白書』昭和56年版)。しかしコロニーは、ノーマライゼーションの思想(高齢者や障害者を隔離するのではなく、ともに暮らす社会こそがノーマルだとする考え方)への変遷により、脱施設主義に反する隔離政策に連なるのではないかという批判がある。2003年(平成15)、国立コロニー「のぞみの園」を運営していた特殊法人心身障害者福祉協会は解散し、同年に独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園(国立のぞみの園)として発足、施設入所者の地域生活への移行を進めている。

 なお、結核回復者施設の流れをくみ現在はおもに身体障害者の就労による社会参加を目的とした事業を行っている社会福祉法人のコロニーは全国10か所にある。これらのコロニーは、一般社団法人ゼンコロ(前身は1961年設立の全国コロニー協会)に加盟しており、50を超える施設では、印刷、情報処理、メールサービスなどの作業を行う「働く場」の提供に加え、共同生活援助事業(グループホーム、福祉ホームなどで「生活の場」を提供)、介護サービス事業などが行われている。

[岩永理恵 2016年7月19日]

『矢野隆夫・富永雅和著『心身障害者のためのコロニー論――その成立と問題点』(1975・日本精神薄弱者愛護協会)』『田島良昭編著『ふつうの場所でふつうの暮らしを――コロニー雲仙の挑戦1 くらす篇』(1999・ぶどう社)』『遠藤浩「国立コロニー開設に至る道のり」(『国立のぞみの園10周年記念紀要』所収・2014・国立重度知的障害者総合施設のぞみの園)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例