コロニー(読み)ころにー(英語表記)colony

翻訳|colony

デジタル大辞泉 「コロニー」の意味・読み・例文・類語

コロニー(colony)

植民地。また、植民地における植民者の集落。
一定地域に住む外国人居留民。また、その居留地
同業者・同好者仲間の生活共同体。
長期療養者・心身障害者などを集めて、治療や保護をしたりして、社会復帰のための訓練をする施設。
同種または異種の動植物が、ある地域に多数集まって生活している状態。また、その集団。培養基上に発生した細菌などの集落。

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精選版 日本国語大辞典 「コロニー」の意味・読み・例文・類語

コロニー

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] colony )
  2. 同一種または数種からなる生物の集団。動物ではアリ、ハチなどの巣を中心とする集団や、鳥類、哺乳類などの繁殖期や渡りなどにみられる集団が代表的。狭義には群体、または固体培地上に生じた細菌の集落をいう。群生。集落。
    1. [初出の実例]「バチルスの化身(けしん)が寄て集ってコロニイを作りつつ」(出典:社会百面相(1902)〈内田魯庵〉附録)
  3. 植民地の植民者の集落。
    1. [初出の実例]「メイフラワー号のコロニーから続いた系図で」(出典:草の花(1951)〈幸田文〉ABC)
  4. 長期療養を必要とする患者、心身に障害のある者などが、共同生活をしながら治療や社会復帰のための訓練をする福祉施設。第一次世界大戦後、イギリス結核回復者の共同生活施設として始まる。〔結核をなくすために(1950)〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「コロニー」の意味・わかりやすい解説

コロニー(社会福祉施設)
ころにー
colony

原義は植民地、移植地だが、転じて、保護、治療、訓練などのため地域社会から隔絶された人たちの施設の総称。日本では、1960年代に障害者福祉政策の課題としてコロニー建設が取り上げられるようになる。このころ、すでにアメリカでは大規模施設が厳しく批判され、イギリスではコミュニティケア思想が強調されるようになっていたが、日本はそれとは逆の動きをとった。

 日本では、親の死亡後の重度知的障害者のための施設を求める動きにこたえ、1971年(昭和46)群馬県高崎市に国立コロニー「のぞみの園」が、入所定員550人で開設された。入所対象者は、年齢15歳以上の知的障害のある者で、当時の規定で、(1)精神薄弱の程度が著しいため独立自活が困難な者で、必要な保護および指導のもとに社会生活をさせることが必要と認められる者、(2)身体障害を併合しているため一般社会においては適応が著しく困難と認められる者、のいずれかに該当する者とされた。

 この国立コロニーの建設と前後して、都道府県が開設するいわゆる地方コロニーが構想されるようになり、1960年代後半から1970年代にかけて都道府県が建設に着手し、なかでも愛知県と大阪府は、国よりいち早く当面の大きな目標と標榜(ひょうぼう)して取組みを開始していた。最終的に全国18のコロニーが全国各地に建設された(『厚生白書』昭和56年版)。しかしコロニーは、ノーマライゼーションの思想(高齢者や障害者を隔離するのではなく、ともに暮らす社会こそがノーマルだとする考え方)への変遷により、脱施設主義に反する隔離政策に連なるのではないかという批判がある。2003年(平成15)、国立コロニー「のぞみの園」を運営していた特殊法人心身障害者福祉協会は解散し、同年に独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園(国立のぞみの園)として発足、施設入所者の地域生活への移行を進めている。

 なお、結核回復者施設の流れをくみ現在はおもに身体障害者の就労による社会参加を目的とした事業を行っている社会福祉法人のコロニーは全国10か所にある。これらのコロニーは、一般社団法人ゼンコロ(前身は1961年設立の全国コロニー協会)に加盟しており、50を超える施設では、印刷、情報処理、メールサービスなどの作業を行う「働く場」の提供に加え、共同生活援助事業(グループホーム、福祉ホームなどで「生活の場」を提供)、介護サービス事業などが行われている。

[岩永理恵 2016年7月19日]

『矢野隆夫・富永雅和著『心身障害者のためのコロニー論――その成立と問題点』(1975・日本精神薄弱者愛護協会)』『田島良昭編著『ふつうの場所でふつうの暮らしを――コロニー雲仙の挑戦1 くらす篇』(1999・ぶどう社)』『遠藤浩「国立コロニー開設に至る道のり」(『国立のぞみの園10周年記念紀要』所収・2014・国立重度知的障害者総合施設のぞみの園)』


コロニー(生物集団)
ころにー
colony

同種または複数種の生物が集団をなしてある地域に定住しているとき、その集団を広くコロニーとよぶ。普通、コロニーとよばれているものには、ひとまとまりの植物の群落海鳥サギなどにみられる集団繁殖地、齧歯(げっし)類のプレーリードッグなどにみられる集団巣(そう)、テンマクケムシなどにみられる集団網(もう)、ハチやアリなどの社会性昆虫の巣、クダクラゲの群体などさまざまのものが含まれるが、とくに、ある地域の集団を一括して扱うときはコロニーという語を用いることが多い。コロニーの持続性や、成員間の社会的関係の強さにはさまざまな段階があり、血縁関係のない多数のつがいが繁殖期にのみ集合して形成され、そのなかでは各つがいが比較的独立して生活するもの(海鳥など)、母親(女王)とその娘(ハタラキバチ、アリ)が高度に統合された社会的関係のもとで一生の間生活するもの(社会性昆虫)、さらには、単一の細胞から分裂して生じた各個体(個虫)が接着して群体を形成し、まるで一つの個体のようになったもの(クダクラゲ、コケムシなど)もある。

 なお、新しい土地に最初に移りすんだ動物または植物の集団のことを入植者の意味でコロニーとよぶこともある。さらに、主として固形の平板培地上に生じた細菌、培養細胞などの集落のことをコロニーとよぶ。

[喜多 実]


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改訂新版 世界大百科事典 「コロニー」の意味・わかりやすい解説

コロニー
colony

語意は植民地ないし同類集団の居住地であるが,第1次大戦後のイギリスの結核対策では転じて,一般地域で生活困難をきたす結核回復者へのアフターケアと労働とを組み合わせた共同生活施設の通称となった。日本には,結核回復者施設の流れをくむ身体障害者施設でコロニーと称する社会福祉法人がある。一方,親亡きあとの重度精神遅滞者に家庭に代わる施設の必要性を訴えた親たちの運動にこたえて,国が設置し,特殊法人の心身障害者福祉協会が運営する精神遅滞者の大型施設が,1971年群馬県高崎市に国立コロニーとして設立された。ここでいわれるコロニーとは,精神遅滞児・者が適切な指導と保護のもとで,社会生活を営むことができるよう整備された生活共同体的福祉施設である。以来,地方コロニーと呼ばれる同種の精神遅滞者総合施設が全国各地に設立されてきている。大型コロニーには,1970年代以降の脱施設主義の風潮に反する隔離処遇であるという批判もある(居宅保護・施設保護)。
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化学辞典 第2版 「コロニー」の解説

コロニー
コロニー
colony

1個の微生物が分裂を繰り返すことにより数を増やし,目に見えるような小塊になった細胞集落.もとは1個であったので遺伝的にはすべて均一である.[別用語参照]クローニング

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のコロニーの言及

【植民地】より

…植民地という概念は,ラテン語coloniaに起源をもち,それが近代ヨーロッパ語のcolony(英語),colonie(フランス語),Kolonie(ドイツ語)として広く用いられ,さらに近代日本において,その日本語訳として定着したものである。この概念は古典古代,近代ヨーロッパ,近代日本と三重の歴史的位相をもち,それに応じて,意味する内容も拡大してきた。近代以前には,植民地という言葉はおもに,ある集団か,その一部が従来の土地を離れて新たな地域に移住し,そこで形成する社会を意味した。…

※「コロニー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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