コーシャ(読み)こーしゃ(その他表記)kosher

翻訳|kosher

日本大百科全書(ニッポニカ) 「コーシャ」の意味・わかりやすい解説

コーシャ
こーしゃ
kosher

旧約聖書戒律に基づいたユダヤ教の食の規定。コーシャはもともと「ふさわしい状態」や「適正」を意味するヘブライ語である。カシュルートkashrut、コシェルkosher(カシェルとも読む)ともいう。コーシャはユダヤ教の宗教指導者(ラビ)が、原材料や製造工程などを現地でじかに確認したうえで、ユダヤの教義に従った安全なコーシャ食品kosher foodsとして認証する制度である。広く生鮮食品や加工食品、サプリメント、調味料などを対象とし、認定を受けたコーシャ食品には認定書が発行され、パッケージに認証マークを表示して販売できる。イスラエルでは国内の食品流通市場において、およそ8割をコーシャ認証を得た食品が占めている。また、ユダヤ教徒以外の人たちにも安全性の高い食品として認識されており、コーシャ認証団体が世界中に存在する。アメリカでは、大手食品メーカーの製品や、大手小売店の自主ブランド品、飲食チェーン店の商品などを、コーシャの認証を得て販売する動きが広がっている。

 旧約聖書に基づく食の規定では、食べられる肉類鳥類以外)は、ひづめが分かれており、反芻(はんすう)する動物であるウシ、ヒツジヤギシカなど。反芻しないブタやウサギは食べられない。鳥類では捕食性をもつ鳥である猛禽(もうきん)類やカモメ、カラス、ダチョウを食することが禁じられている。また、魚貝類では鱗(うろこ)とひれのある魚が許されており、タコやイカ、ウナギ、貝類、エビやカニなどは食べることができない。この規定を基本として、日常食品は以下のように分類される。(1)肉類(M、Meatの頭文字で表す)、(2)乳製品(D、Dairyの頭文字)、(3)肉や乳の原料を含まず、植物原料などを主体にしたパラベ(P、Pareveの頭文字)。このうちMとDを混食することは許されず、どちらかを食べたら、一定の時間を経過しなければ、もう一方を食べることはできない。

 企業や小売店などがコーシャの認証を得るには、分類項目の詳細が地域によって異なるため、認証団体が設定した基準を確認する必要がある。ラビによる審査では、まず企業や食品成分などについての書類審査や面接によって、基本的な申請内容の確認が行われた後、現地の生産現場などの審査が行われる。原材料の入手から保管、生産工程、出荷までを通して、コーシャ認証以外の食品が扱われていないかどうか、混在してはいけない材料がないかどうか、といった点が検査され、合格すれば認定書が発行される。コーシャの認定期間は通常1年間で、毎年更新する必要がある。

 近年は日本国内でもコーシャ食品の表示を求める声が高まりつつあり、国内に認証機関の支部がある。また、世界のコーシャ食品市場では、日本食に対する関心が高まっており、認証を受けて輸出を目ざす食品・農業関係者が増えている。

[編集部 2016年7月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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