アメリカ映画。1972年作品。フランシス・フォード・コッポラ監督。マフィア・ファミリーの興亡を苛烈(かれつ)に、かつ家族愛の視点からロマンティックにも描き、空前のヒットを記録した新時代のギャング映画。マフィアのドン「ゴッドファーザー」(マーロン・ブランド)の末っ子マイケル(アル・パチーノAl Pacino、1940― )は、ひとり堅気を志していたが、銃弾に倒れた父親や兄を見て立ち上がり、激しい抗争の末、2代目「ゴッドファーザー」として強大な権力の座につく。マリオ・プーゾMario Puzo(1920―1999)の同名ベストセラー小説をプーゾとコッポラが脚色。クロスカッティング(二つ以上の場面を交互につなぐ編集技法)を効果的に多用した力強い話術、懐古的な暗くくすんだ色調で統一したゴードン・ウィリスGordon Willis(1931―2014)の撮影、哀愁を帯びたニーノ・ロータの音楽が作品を盛り上げた。アカデミー作品賞、主演男優賞(マーロン・ブランドは受賞を拒否)、脚色賞を受賞。2年後に公開された『ゴッドファーザーPARTⅡ』はさらにスケールを拡大、二つの異なる時代にまたがるファミリーの萌芽(ほうが)と崩壊とを並行して描き、アカデミー賞作品賞、監督賞をはじめ前作を上回る6部門での受賞となった。1990年には物語を締めくくる『ゴッドファーザー PARTⅢ』がつくられた。
[宮本高晴]
子供の洗礼・堅信礼に際して,実親でない成人信者が代親(代父母)として儀礼に立ち会うしきたりがカトリックにある。ゴッドファーザーとは男の代親をさす。一般に男の代親は男子の受礼者に,女の代親は女子につく。上記の儀礼を全うすることで子供は精神的に生まれかわり,成長すると信じられている。代親の慣行は教会の公認する関係である。代親には子どもの精神上の保護・教導が義務づけられ,子どもは尊敬・恭順を代親に示す精神的親子関係(パドリナスゴ)が成立する。南欧やラテン・アメリカのカトリックの農村地帯では,社会的に上位にいる実力者を代親に選ぶ傾向がかなり顕著に認められ,そこでは,〈親分・子分〉の性格が強まる。すなわち,精神的庇護という本来の意味は薄れ,政治・経済上の援助と協力を内容とした世俗的関係へと変貌していく。多くの子どもの代親となることは男にとって名誉とされ,社会的地位の上昇に足がかりの一つとなる。
→擬制的親族関係 →コンパドラスゴ
執筆者:佐藤 信行
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
… 映画史的には,ギャング映画の流れは犯罪組織(シンジケート)ものと集団強盗(ビッグ・ケイパー)ものに分かれていく。前者はラッセル・ラウズ監督《紐育秘密結社》(1955)からフランシス・コッポラ監督《ゴッドファーザー》(1971)に至る〈マフィア映画〉に,後者はジョン・ヒューストン監督《アスファルト・ジャングル》(1950)やジュールス・ダッシン監督《男の争い》(1955)からマイク・ホッジス監督《狙撃者》(1971)やピーター・イェーツ監督《ホット・ロック》(1971)などに至る〈泥棒映画〉に,その流れを見ることができる。
[日本のギャング映画]
日本映画史にギャング映画が現れるのは,山本喜久男《日本映画における外国映画の影響》によれば,1932‐33年ころからで,《暗黒街の英雄》《カポネ再現》《非常線の女》《警戒線の女》《摩天楼の顔役》《ギャング討伐》といった作品が次々につくられたが,いずれも題名からして明らかなように,スタンバーグ監督《暗黒街》《非常線》,ハワード・ホークス監督《暗黒街の顔役》などの影響と模倣によって生まれたものであり,以来,日本のギャング映画は〈無国籍アクション〉映画としての宿命を背負い続けていくことになる。…
… おりから大手映画会社の撮影所が次々に外部の金融資本によって買収され,〈ハリウッドの崩壊〉が叫ばれていた矢先でもあったので,〈ニュー・シネマ〉こそアメリカ映画の救世主であり未来を背負う力であるとすらいわれたが,《俺たちに明日はない》の二番せんじのギャング映画や《イージー・ライダー》を模倣したオートバイ映画などがはんらんした結果,そのほとんどすべてが興行的に失敗した。1972年にはフランシス・フォード・コッポラ監督,マーロン・ブランド主演のマフィア映画《ゴッドファーザー》が,そして73年には豪華客船の沈没を描いたロナルド・ニーム監督,ジーン・ハックマン主演のパニック映画《ポセイドン・アドベンチャー》が大ヒットして,伝統的なハリウッド方式(大スター,ベストセラー小説の映画化,金をかけた大作)の健在ぶりを証明。〈ニュー・シネマ〉は結局かけ声だけで一時の現象に終わった。…
…63年,20万人が参加した人種差別反対ワシントン大行進を積極的に支持。その後,作品にも恵まれず〈過去の人〉となりかけたとき,記録的にヒットした《ゴッドファーザー》(1972)で再度アカデミー主演男優賞に選ばれたが,アカデミー協会のインディアンに対する不当な取扱いに抗議して受賞を拒否。その後,《ラストタンゴ・イン・パリ》(1972)や《地獄の黙示録》(1979)などの話題作に出演する一方で,少数民族や公害問題に傾ける情熱が伝えられ,伝説的なスターになりつつある。…
…次いで63年,マクレランを長とする上院調査小委員会でバラキJoseph Valacchiという人物が,犯罪組織の世界ではマフィアでなく〈コーザ・ノストラCosa Nostra〉という名が使われていると証言し,初めての内幕暴露として騒がれた。さらにプーゾMario Puzoの小説《ゴッドファーザー》(1969)とその映画作品(1972)が大当りして,70年代にマフィアものがジャーナリズムをにぎわせるきっかけをつくった。マフィアをめぐるアメリカでの議論はこうした経緯をもつが,アメリカにおいて論じられる場合のマフィアが何を意味するのかを検討することが望まれている。…
…現在では幼児洗礼には代父母も立ち会って右手を置くが,信者の親が証言し,その信仰告白を行うことによって洗礼が授けられる(カトリック儀式書《幼児洗礼式》1975,《成人のキリスト教入信式》1976)。現行の教会法典によれば,16歳以上のカトリック信者は,代父godfatherか代母godmotherを1名,または双方立てることができる。なお,カトリック教会以外の教会にも類似の習慣が見られる。…
※「ゴッドファーザー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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