改訂新版 世界大百科事典 「サイザルアサ」の意味・わかりやすい解説
サイザルアサ
sisal
Agave sisalana Perr.
葉から繊維を採るために栽培されるリュウゼツラン科の多年草。シザルアサともいう。この名はメキシコのユカタン半島にある港シザルSisalに由来する。原産地はメキシコから中央アメリカ。現在では,世界各地の熱帯や亜熱帯の,比較的乾燥した地域で栽培されている。葉は肉厚の剣状で青緑色,長さ1~2m,中央部が太くなり幅10~15cm。葉縁にとげのない品種が多い。短い茎に多数の葉が密生し,根もとできつく束ねたような姿となる。1年に30枚ほどの葉が伸び,1個体がその一生の間に生産する葉は200~300枚である。下位の葉の付け根から根茎が伸び子株を生じる。7~十数年の寿命がくると,花茎が6mほどに伸び,上部で枝分れして,それぞれに5~6cmの淡緑色で筒状の花が多数つく。花が落ちると,花のついていたすぐ下から珠芽が生じ,3ヵ月で10cmほどに生長し,落下する。繁殖は子株か珠芽による。成熟した葉を基部から順次摘採し,採繊機にかけて機械的に維管束繊維を取り出し乾燥する。繊維は黄白色で長さ1mほど,柔軟で光沢があり,農業用の紐や漁業用のロープ,敷物,袋,ブラシなどに使う。
近縁のヘネケンA.fourcroydes Lem.(英名henequen)は,サイザルアサに似るが,葉は白みを帯び,葉縁には数mmのとげがある。白葉サイザルアサとも呼ばれ,葉から繊維を採る。繊維はサイザルアサよりも劣るが,同様に紐やロープに使われる。
執筆者:星川 清親
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報