シソ科(APG分類:シソ科)サルビア属(アキギリ属)の総称で、低木性の多年草。中南米、ヨーロッパの地中海沿岸原産で世界に約900種分布する。一般によく栽培されるのはブラジル原産のヒゴロモソウS. splendens Sellowで、夏の花壇によく植えられる。園芸上は春播(ま)き一年草として扱われ、草丈は30~40センチメートルの矮性(わいせい)種から50~70センチメートルの中高性種まである。葉は対生し、広披針(こうひしん)形。夏、分枝した頂部に唇形花を穂状につける。花色は赤色系が多いが、品種改良が進み、緋(ひ)赤、桃、紫、白、朱赤、複色まである。近年の品種には矮性のドレスパレードのシリーズがあり、花色が豊富で、混植花壇に植えられる。ほかにボンファイア、セントジョンズファイアなど緋赤色系の品種もある。
ケショウサルビアS. farinacea Benth.はニュー・メキシコ原産で、春播き一年草とされる。明るい青紫色の小花が穂状につき、花穂は細いが穂数が多い。近年、矮性のビクトリア種がつくられた。ソライロサルビアS. patens Cav.は、花は淡青色で、花数は多くはないが、珍しい種類である。
サルビア属にはこのほか、観賞用以外に薬用や香辛料とするセージがある。
[金子勝巳 2021年9月17日]
繁殖は実生(みしょう)によるが、発芽はあまりよくない。4~5月、播床(まきどこ)に3ミリメートルほどの深さに種を播き、軽く覆土し、発芽するまでは表面が乾かないようにする。発芽後、本葉6~7枚のころ、日当りと排水のよい所に、20~30センチメートル間隔で移植する。元肥を十分に施し、水も十分に与える。夏の花期が終わったら全体を軽く刈り込み、1平方メートル当り50~80グラムの化成肥料を追肥として施すと、秋から霜が降りるまで咲き続ける。花壇のほか、プランター植えでテラスやバルコニーなどでもよく栽培される。幼苗期に立枯病にかかったり、ヨトウムシの害を受けやすいので注意を要する。
[金子勝巳 2021年9月17日]
サルビア属は世界に広く分布するが、園芸種のサルビアはブラジル南部の原産で1822年に発表され、同年にはイギリスに伝わっていた。原地では低木状の多年草であるが、一年草に改良されて温帯での栽培が可能になった。日本へは明治20年代以降に渡来したらしく、明治19年(1886)の小石川植物園の植物目録には、サルビアとしてサルヒヤ(香辛野菜のセージ)、ベニノサルヒヤ(北米産のベニバナサルビア)の2種の名があるだけで、現在のサルビアの名はない。昭和に入って普及し、花壇に欠かせない花となった。
[湯浅浩史 2021年9月17日]
『西川綾子著『サルビア NHK趣味の園芸 よくわかる栽培12か月』(2001・日本放送出版協会)』
シソ科アキギリ属Salviaの植物は南・北半球の温帯地方に700種もあり,一・二年草も多年草も含まれているが,一般に最もよく知られているのは,緋紅色の花が美しいこの種である。和名をヒゴロモソウという。原産地はブラジルで,高さ1mをこえる低木状の多年草であるが,改良された園芸種をふくめて,日本では冬の寒さで枯れるから春まき一年草として栽培される。温室では数年枯れずに生育する。茎は方形で直立し,よく分枝して,在来種は短日で花芽分化して10月以降に開花する。花穂の10数節の各節に2~6花をつけるが,花は花冠と同じ緋紅色の萼につつまれた唇形花で,萼の長さの3倍,めしべの柱頭は上唇弁の先に露出する。種子は宿存萼の中に4個できるが,熟せばこぼれ落ちる。改良種には高性,矮性(わいせい),早咲種など多くの系統があり,花色も緋紅・紫・白・淡紅色など品種が多い。
播種(はしゆ)はふつう4月中旬,発芽には20~25℃を要する。早生種は2~3月にフレームや温室でまき,5~6月に開花させる。いずれも本葉が3~4節出たころに小鉢にあげ,逐次鉢替えするか,花壇に植えつける。開花期が長いので,品種を選んで育苗したものを初夏と初秋に植えれば,降霜期まで咲きつづける。用土はとくに選ぶことはなく,赤玉土2,腐葉土1を混ぜ,これに化成肥料などを使用する。
アキギリ属で観賞用に栽培されることの多い種には,次のようなものがある。ベニバナサルビア(サルビア・コクキネア)S.coccinea L.(英名Texas sage)は,南・北アメリカ,メキシコの原産で,高さ30~60cm,葉も茎もやや小型で,花穂の1節に深紅色の3~4花をつけるが,午後には花が脱落する。サルビア・ファリナセアS.farinacea Benth.は,北アメリカ・テキサス原産の多年草で,葉は長披針形。草丈60cm,花穂は長く紫青色の唇形花をつけるが,上唇弁は小さく,下唇弁だけが大きい。ムラサキサルビア(サルビア・ホルミヌム)S.horminumL.は,南ヨーロッパ原産の一年草で,花穂の先に紫や桃色に着色した小葉をつけて美しい。日本にはアキギリやアキノタムラソウなど9種ほどが分布しており,花が美しいので山草として栽植されるものがある。
なおセージは薬用に栽培されるアキギリ属の多年草で,サルビアと同様にラテン語salvus(〈安全な,健康な〉の意)を語源とする。西洋では古くから長命や記憶力強化の霊草と信じられ,家庭の健康薬に用いられた。
執筆者:浅山 英一
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