一般に綱のことだが,日本では,とくに登山で氷壁や岩壁の登攀の際に,安全を確保するため体を結び合って行動するのに用いる綱を呼ぶことが多い。英語でロープrope。ザイルの使用はアルプス登山の黄金時代といわれた19世紀中ごろから盛んとなり,日本には大正末期,ヨーロッパの登山技術の導入期にとり入れられた。第2次世界大戦前はマニラアサやタイマの撚(よ)りザイルが用いられたが,1950年ころよりナイロン,ビニロンなどの合成繊維のものが強度や扱いやすさの点でもまさることから多く用いられるようになり,構造も撚りザイルより編みザイルが多くなった。直径は8~11mmで,これ以下のものは補助用である。長さは行動上の利便から,30~40mのものが多く,2~3人がパーティを組んで行動する。ザイルの利用によって岩登りや氷壁登攀は非常に進歩したが,ザイル・ワークも高度に専門化され,また岩角などで摩擦すると切断の可能性もあるので,安易な利用は危険である。
執筆者:徳久 球雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
一般に綱を意味し、英語のロープにあたるが、とくに登山で岩壁や氷壁を登攀(とうはん)するときに安全のために体を結び合い、確保や懸垂など登攀の補助のために用いる綱をいう。材料には以前はマニラ麻や大麻が用いられ、1950年ころからナイロン、ビニロンのものが多くなったが、これらの合成繊維の強度への過信から事故が続き一時社会問題にまでなった。構造的にも「撚(よ)りザイル」から「編みザイル」に変遷してきた。直径は8~11ミリメートルで、これ以下は補助用である。長さは30~40メートルのものが多く、これを結び合って2~3人がパーティーを組んで行動する。ザイルは岩角などで摩擦すると切断したりするから、ザイルを用いるときには多くの結び方や各種の技術、用法に十分熟達したうえでなければ危険である。
[徳久球雄]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…冬の登攀には堅牢で保温性のある登山靴が用いられるが,無雪期には,軽量で摩擦性の高い柔軟な底をもつクレッターシューズ(岩登り靴)を使う例が多く,また,簡便なトレーニングシューズを用いる者もある。 パーティを組んだ2人または3人のクライマーは,墜落の危険を避けるためにザイルSeil(登攀用ロープ)を両端部で互いに自分のボディハーネスに連結(アンザイレン)し,交替で登攀するパートナーを確保(ビレーbelayまたはジッヘルSicher)しあいながら前進する隔時登攀(スタカートクライミングstaccato‐climbing)を行うのが普通である。確保者は,自分の確保が失敗した場合,パートナーの墜落に引き込まれて墜落しないようにあらかじめ自己確保(アンカーanchor)をしたうえで,基本的には,自分の肩や腰にザイルを回して制動操作する確保(ボディビレーbody belay)を行うことが多い。…
※「ザイル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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