(読み)ヒモ

デジタル大辞泉 「紐」の意味・読み・例文・類語

ひも【×紐】

物をしばったり束ねたりするのに用いる細長いもの。ふつう、より太く、より細いものにいう。布・麻・化学繊維・紙・革などで作る。ひぼ。「羽織のを結ぶ」「小包のを解く」
物事を背後から支配すること。引き替えの条件。「のついた援助」
女性を働かせて金をみつがせる情夫。「あの女にはがついている」
ホタテガイアカガイなどの外套膜がいとうまくの部分。生食のほか、乾物として料理や酒肴に利用される。貝ひも。
つな[用法]
[下接語]あご後ろ紐打ち紐負ぶい紐掛け紐・飾り紐・革紐くくり紐くけ靴紐組み紐腰紐ゴム紐真田さなだしで紐付け紐綴じ紐ひら結び紐むな
[類語](1荒縄細引きテープしめ縄命綱帆綱ロープザイル/(3愛人恋人情人いろ彼氏彼女いい人思い人思い者情夫間夫間男色男男妾若い燕情婦手掛け二号側室側女そばめ愛妾囲い者思い者内妻色女手つき一夜妻ボーイフレンドガールフレンドラバーフィアンセダーリンハニーパートナーアモーレ

ちゅう【紐】[漢字項目]

人名用漢字] [音]チュウ(チウ)(慣) ジュウ(ヂウ)(漢) [訓]ひも
〈チュウ〉ひも。「紐帯ちゅうたい・じゅうたい
〈ひも〉「革紐靴紐組紐腰紐
[名のり]くみ
[難読]紐育ニューヨーク

ちゅう〔チウ〕【紐】

梵鐘の部分の名。の間池の間草の間を区画する二本の線。

ひぼ【×紐】

ひも」の音変化。
年来としごろみ給ひける持経の―を解き」〈太平記・一〇〉

じゅう【紐】[漢字項目]

ちゅう

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精選版 日本国語大辞典 「紐」の意味・読み・例文・類語

ひも【紐】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 物を結んだり束ねたりする、縄状のもの。ふつう、糸より太く、帯・綱より細いものをいう。布製・革製・紙製・麻製など、種々ある。ひぼ。
    1. [初出の実例]「ささら形 錦の臂毛(ヒモ)を 解き放けて あまたは寝ずに ただ一夜のみ」(出典:日本書紀(720)允恭八年二月・歌謡)
  3. 水商売の女や娼婦などに金銭をみつがせている情夫。
    1. [初出の実例]「やけでお若は浮気をする。紐がつく、蔦が搦む」(出典:日本橋(1914)〈泉鏡花〉一一)
  4. かげで操り、支配するもの。また、その条件となるもの。→紐付き
  5. ( 形状がに似るところから ) アカガイやホタテガイの外套膜をいう。

ひぼ【紐】

  1. 〘 名詞 〙 「ひも(紐)」の変化した語。
    1. [初出の実例]「紐(ヒホ)を将て絇(わひほ)に内(い)れて」(出典:南海寄帰内法伝平安後期点(1050頃)二)

ちゅうチウ【紐】

  1. 〘 名詞 〙 物をたばねたり結んだりする布、革、糸など。ひも。〔儀礼‐既夕礼〕

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改訂新版 世界大百科事典 「紐」の意味・わかりやすい解説

紐 (ひも)

細長く柔軟で,糸より太く,綱や帯より細いものをいい,物を縛ったり,貫いたり,垂らしたりするのに用いる。つる,樹皮,皮革,毛,布,糸,紙などを材料としてつくり,製作方法の相違によって組紐,織紐,編紐,裁(たち)紐,絎(くけ)紐,束(たば)ね紐などに分けられる。このほかにこよりも広義の紐の中に含められる。これらは縒(よ)る,組む,織る,編むという基本的な技法のいずれかでつくられる。

(1)組紐 1本~数十本の糸を1単位とし,それを3単位以上,ときには100単位以上を使って斜め方向に交差させてつくったもので,できあがった形状から〈平打ち〉と〈丸打ち〉の別がある。(2)織紐 糸を1本以上数十本をまとめて,経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を直角方向に織り合わせた平たい紐である。(3)編紐 1本または数本の糸を一定の編み方で糸を湾曲させてつくった平たい,あるいは丸い形状の紐であり,これは結び目を四方へ展開したもので,多くはすきまの空いた紐ができあがる。(4)裁紐 布,紙,動物の皮,葉などをそのまま細く裁断したもので,紐の原形といえよう。動物の皮を用いるときには,材質を軟らかくするために古くから〈なめす〉技術が開発されていた。(5)絎紐 平たく縫い合わせたものと,中に芯(しん)を入れて丸く縫い合わせたものとがある。(6)束ね紐 糸を1本並べにして糊などの接着剤で固めたものである。(7)こより 紙に縒りをかけて糸のようにしたものであり,紐の代りに用いられたことは正倉院御物の遺品から知ることができる。(8)縄 一般に稲わらを綯(な)ってつくるが,材料によって麻縄,シュロ縄,ヒノキ縄などがあげられる。

 紐は,その特徴によっていろいろに使い分けられる。組紐は古来,紐の本命と考えられたものであり,直衣(のうし)の緒(お),鎧冑の縅(おどし)糸,太刀の緒や柄(つか)糸,帯締め,羽織紐などに使われる。織紐のうちで代表的なものは真田(さなだ)紐(真田織)で,平たい形状なので箱物の紐,掛軸の吊(つり)紐に適しており,真田幸村の考案になるものと伝えられている。編紐は寝間着(ねまき)紐に適しており,裁紐はコートの前身奥につけて,隠し紐としたり,革の裁糸を甲冑の緘糸に用いる。絎紐は儀式用に多く用いられ,結婚式や七五三の祝いには白色の丸絎紐を,また不祝儀のときには黒色の丸絎紐を帯締めとして用いる。

〈ひも〉は〈ひきむすぶ(引結)〉の意とも〈ひめを(秘緒)〉の略ともいわれ,後者の説(《日本古語大辞典》)によれば〈ひめ〉は霊能の意の〈ひ〉の活用形,〈を〉は緒である。古代には〈ひも〉を〈緒〉あるいは〈ひものを〉とも呼び,〈緒〉は〈尾〉からきたともいわれる。古代人は神秘の力をもつ緒を佩(お)びて身の護(まも)りにしたらしく,〈玉の緒〉〈年の緒〉〈息の緒〉などの言葉が残されているが,いずれも生命につながる重要な言葉である。紐を信仰と結びつけて用いる例はいくつもあり,神道では拝殿前の垂(たれ)紐を引いて神鈴を鳴らすことにより,また山車(だし)の綱を引っ張ることによって,神の声をきき,神の加護をうけることができるとしており,これは神と人を結ぶ役目を果たすものである。諏訪大社御柱曳綱(おんばしらひきづな)をはじめ東大寺開眼縷(かいげんる)(筆に結びつけた紐を各僧侶が握る行事)や延暦寺,東本願寺の毛綱(けづな)なども同じ思想にもとづく紐である。仏教の世界では人間をこの世(俗界)から仏の世界(浄界)に救い上げるためには浄界から降ろされた綱につかまれといい,《栄華物語》によれば,藤原道長は臨終の折に,阿弥陀如来の手を通した五色の糸を握っている。《万葉集》には〈ひも〉の用例が50近くみられるが,ほとんどが〈結ぶ〉〈解く〉との関連において用いられ,男女のつながりを表象したものである。

 縄文土器面に認められる文様には縒り合わせた紐,三つ組みの紐,四つ組みの紐を用いた跡が認められる。三つ組紐は後の平組紐の母型であり,四つ組紐は後の丸組紐の母型である。近年,福井県鳥浜貝塚から木の皮かつるを材料とする縄文前期の紐が出土したが,これは現存する日本最古の紐として注目される。古墳時代の埴輪(はにわ)には衣類を結んだ紐,首飾や脚結(あゆい)の紐,垂飾の紐,髪を結った紐などが認められ,当時の紐の使われ方をうかがうことができる。

 飛鳥,奈良時代になると,正倉院御物や法隆寺献納御物に見られる組紐,絎紐,縒(より)紐などから,中国,朝鮮など大陸文化の影響をうかがうことができる。色彩は色濃く,また配色にしても唐風文化の影響が強くあらわれている。律令政治においては冠位の制を確立するために紐が大きな役割を果たした。礼冠の紐,位袋(いたい)(親王・諸王および初位以上の諸臣の朝服に着けた袋のことで,袋の色,紐の色およびその結び方によって位階が表された)が階級識別のために用いられた。この時代には渡来品だけでは足りず,やがて国内でも中央組織の中に渡来人を長にして紐づくりの組織(中務(なかつかさ)省縫殿(ぬいどの)寮)が設けられた。平安時代に入ると唐の製紐技術をよく消化して,クリーム色や古代紫など淡色で優雅な国産の紐がつくられるようになった。これらは当時の服飾や調度几帳きちよう),二階棚,厨子(ずし)など)や舞楽用に飾紐として用いられた。ついで鎌倉,室町時代になると禅と茶道の影響をうけて,紐の色もうぐいす色や茶色などのしぶくて濃い色が好まれ,茶道具,手文庫や襖(ふすま)の引手などに風流の紐として用いられた。室町時代以降は武家故実が確立され,とくに甲冑(かつちゆう),刀剣などの武具や馬具に実用紐が用いられた。江戸時代になると,紐は庶民の生活の中に溶けこんで煙草入れ,巾着,印籠などに使われ,その材料,文様,色調にも日本的なくふうが施された。明治時代になると,廃刀令に伴って刀剣の紐が不要となり,その代りとして,帯締め,羽織紐や袋物の口緒(くちお)に用いられるようになった。
結び
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普及版 字通 「紐」の読み・字形・画数・意味


人名用漢字 10画

[字音] チュウ(チウ)
[字訓] ひも・むすぶ・つまみ

[説文解字]

[字形] 形声
声符は丑(ちゆう)。丑は指先に強く力を入れて、ものを執る形。〔説文〕十三上に「系(ひも)なり。一に曰く、結びて解くべきものなり」とあり、組紐(くみひも)、あるいは結んだものをいう。印のつまみは指先で扱うものであるから、そのつまみを紐・鈕という。また反切音の子音の部分を紐、母音の部分を韻という。たとえば干(古寒の切。kan)の子音kは見紐、anは韻で、元韻に属する。古音の語頭子音を古紐という。

[訓義]
1. ひも、くみひも、つけひも。
2. むすぶ、つかねる、よる、ねじる。
3. 印のひも、印のつまみ、つまむ。

[古辞書の訓]
〔和名抄〕紐子 楊氏語抄に云ふ、紐子、比毛(ひも) 〔名義抄〕紐 ヒモ・ムスブ 〔字鏡集〕紐 ムスブ・ヒボ・クヒナハ・ナフ・ナハノイト・ツナヌ・ナハナフ・カムハタ・ツナグ

[熟語]
紐過・紐結・紐住・紐情・紐星・紐・紐帯・紐捏・紐約
[下接語]
解紐・亀紐・結紐・古紐・鎖紐・綯紐・蟠紐・傍紐

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「紐」の意味・わかりやすい解説


ひも
string; cord

物を結んだり,束ねたりするために,絹や毛,麻や木綿,化学繊維,紙,革などを組んだり,編んだり,縫い合せたりした細長いもの。日本では縄文時代の土器とともに,約1万年も前の紐のたぐいの出土がある。原形のはっきりしたものは,古墳から鏡,鎧,刀剣とともに発掘されている。特に日本では鎌倉,室町,江戸時代には工芸組紐として武器,武具,芸能用具,宗教用具,衣服などに用いられた。組織別にみると,組紐 (打ち紐) ,織り紐,編み紐,裁ち紐,くけ紐,束ね紐,合成紐などがある。

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百科事典マイペディア 「紐」の意味・わかりやすい解説

紐【ひも】

糸・布ぎれなどを組み,編むなどして太さをもたせ細長くしたもの。物を結んだり束ねたりするのに使用。組紐,織紐,編紐のほか裁ち紐,数本を糊料で固めた束ね着紐などがある。絹,木綿,毛糸,紙,ビニルなどを材料とし,古くから装飾用にも使用された。真田(さなだ)紐は幅0.5〜5cmの平打紐で真田氏が刀の柄(つか)糸に用いたのに始まるという。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【結び】より

…また日本刀の柄ややかんの柄のように〈体〉をくり返して巻き込めば装飾となる。〈手〉というのは結んだひもの端のことで,相撲の横綱とか各種の水引の飾結びなどは〈手〉の部分が装飾化されたものである。女帯の結び上げも〈手〉の装飾化と考えられる。…

【ロープ】より

…細い繊維を集めて左撚り(より)をかけて単糸(ヤーン)にし,これを数本ないし数十本集めて右撚りをかけて子縄(ストランド)にし,ストランドを三つ,四つ,または八つ撚り合わせるかまたは組むことによって作った長い繊維索。綱,縄,ひも(紐)はだいたいの大きさで繊維索を分別したもので,狭義にロープは綱をさす。一般に綱は単糸が複数本の子縄からできているもの,縄は1本の単糸の子縄から成るものをいう。…

※「紐」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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