注連縄(読み)シメナワ

デジタル大辞泉 「注連縄」の意味・読み・例文・類語

しめ‐なわ〔‐なは〕【注連縄/標縄/七三縄】

神を祭る神聖な場所を他の場所と区別するために張る縄。また、新年の祝いなどのために家の入り口に張って悪気家内に入らないようにしたもの。左りのわらに適当な間隔を置いて紙四手かみしでなどを下げる。しめ。しりくめなわ。→四手しで
[類語]荒縄細引きテープ命綱帆綱ロープザイル

しりくめ‐なわ〔‐なは〕【注連縄/尻久米縄】

《端を編んだまま、切らないでおく縄の意》上代、神聖な場所を区切るしるしとして引き渡す縄。のち、神前に引き、また、新年の飾りとする。しめなわ。しりくべなわ。
「―をその御後方しりへに引き渡して」〈・上〉

しりくべ‐なわ〔‐なは〕【注連縄】

しりくめなわ」に同じ。
小家こへの門の―」〈土佐

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精選版 日本国語大辞典 「注連縄」の意味・読み・例文・類語

しめ‐なわ‥なは【注連縄・標縄・七五三縄】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 地域を区切るための目じるし、または出入禁止のしるしとして張りめぐらす縄。特に、神前や神事の場にめぐらして、神聖な場所と不浄な外界とを区別するのに用いる。また、新年に門口に張ってわざわいの神が内に入らないようにとの意を示すもの。わらを左縒りにし、わらの茎を三筋、五筋、七筋と順次に縒り放して垂らし、その間々に紙四手(かみしで)をはさんで下げる。しりくめなわ。四目引(しめひき)。しめ。《 季語・新年 》
    1. 注連縄<b>①</b>〈年中行事絵巻〉
      注連縄年中行事絵巻
    2. [初出の実例]「祝部(はふり)らが斎(いは)ふ社のもみち葉も標縄(しめなは)越えて散るといふものを」(出典:万葉集(8C後)一〇・二三〇九)
  3. 災いを避ける準備のたとえ。
    1. [初出の実例]「女房去りしは祟の注連(シメナハ)、連係(まきぞひ)せられぬ身の用心」(出典:読本・南総里見八犬伝(1814‐42)四)

しりくめ‐なわ‥なは【注連縄・尻久米縄・端出縄】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「くめ」は「籠(こめ)」で、わらのしりを切り捨てないでそのままこめ置いたなわの意 ) 上代、縄を引き渡して、内側にはいることを禁じ、清浄な地を区画する標としたもの。後、神前に引き、また、新年の時などの飾りとする。しめなわ。しりくべなわ。しりくめ。
    1. [初出の実例]「布刀玉の命、尻久米(クメ)〈此の二字は音を以ゐよ〉縄を其の御後方に控き度して白言ししく」(出典:古事記(712)上)

しりくべ‐なわ‥なは【注連縄】

  1. 〘 名詞 〙しりくめなわ(注連縄)〔十巻本和名抄(934頃)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「注連縄」の意味・わかりやすい解説

注連縄 (しめなわ)

神域など神聖な場所を限って不浄悪穢の侵入を防ぐ縄。標縄,七五三縄とも書く。記紀では〈尻久米縄(しりくめなわ)〉〈端出之縄(しりくへなわ)〉と書かれている。《万葉集》の歌にも,一定の区域占有・隔離する意味でシメという言葉がすでに用いられており,〈標〉のほかに〈印〉〈縄〉などの文字が当てられている。シメは占め(占有)の印であり,印(しめ)のあることによって占有の状態を示したものである。神域に張られたしめ縄は,いわば神の〈結界占地〉を標示するものとなっている。民俗のレベルにおいても新年に村境や門戸に張ったり,神社や神木,磐座などに張るなどしめ縄の登場することは多いが,いずれの場合も,なんらかの意味で内と外を区別するものである。ふつう内側は浄域,外側は不浄域あるいは俗域と考えられている。朝鮮のクムジュル(禁縄(きんじよう))をはじめ東南アジア一帯にもしめ縄に類する境界標示装置がみられる。
結界
執筆者:

朝鮮ではクムジュル(禁縄),ウェンセキ(左縄)などとよばれ,主として中部以南地方にみられる習俗で,稲作文化の文化要素として日本の例と共通する点が多い。通常の縄とは逆に左よりになわれ,紙や帛(はく),枝葉などがつるされる。家庭では子どもの出産後,3週目までのサムシンハルモニ産神(うぶがみ)婆)をまつる期間に家の大門や戸口に張りめぐらされ,男児の場合には唐辛子や木炭,女児の場合には紙,松葉,木炭などをつるして,喪礼中の不浄な者の侵入を防ぎ,火と食物の持込み,持出しを禁じる。牛馬や豚などの家畜の出産に際しても同様の儀式を行う地方もある。このほか,家庭や村での巫儀や告祀など重要な儀礼を行う際にも張りめぐらせ,同じく呪的効果をもつ黄土をまくこともある。村の祭りの祭場となる神木や祠の周辺,祭官の役目を行う人の家などでもしめ縄は張りめぐらされ,やはり黄土がまかれる。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「注連縄」の意味・わかりやすい解説

注連縄
しめなわ

標縄、占縄、七五三縄などとも書き、占有、制止を示すときに張り巡らせる縄。自己の所有や専用を標示し、他人や悪霊の侵入を防ぐためのもの。普通、藁(わら)を左撚(よ)りに撚り、間に紙の四手(しで)を挟んで下げる。本来は信仰でも法律でもなく、広い意味の俗信的な生活の知恵に基づく行為の表出であって、縄張り、通せんぼを具体化したものであった。初夏のころ、防災除疫のために村境に道切り縄を張ったり、穢(けが)れた場所に張って人を近づけまいとする例などがある。しかし注連縄は、早くから信仰に結び付けて理解されてきた。日本の神は去来性をもち、祭りのたびに来臨するものであったから、神霊を迎えるために清浄な場所を区画し、そこに来臨してもらうために張り巡らせるものとし、のちには神が神社、神祠(しんし)に常在すると考えるようになって、神霊が来臨していることを標示するためのものになった。神社の拝殿や鳥居などに常時かけてあるのはそのためである。一般の家庭では、住宅の新築に先だつ地鎮祭のとき、四方に竹を立てて注連縄を張ることがある。屋内では神棚に張るほか、正月には部屋に年縄を巡らせたり、門口その他に輪じめ、ごぼうじめ、海老(えび)じめなど、意匠を凝らした注連飾りをつける。

[井之口章次]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「注連縄」の意味・わかりやすい解説

注連縄
しめなわ

神聖な空間を区画するための縄。本来シメは占,標,印の意で,一種の占有標とも魔よけとも考えられている。新年には門や神棚に張る。縄は左ねじりで順に3筋,5筋,7筋のわらを垂らし,その間に紙垂 (かみしで) を下げる。

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世界大百科事典(旧版)内の注連縄の言及

【検封】より

…検査して封印すること,あるいは物品を検査して差し押えること。撿封,検符とも書く。《類従三代格》の870年(貞観12)の太政官符に,大宰府庫保管の甲冑等の武具の損失にさいし,府庫が撿封されているために容易に調査することができない不便さが取り上げられている。また1187年(文治3)に〈官庫納米の習いは,納所使書生をもって撿納せしめ,また撿封せしむること諸国一同の流例なり〉(《吾妻鏡》)とされ,官公庫収納物品が検査のうえ封印されている。…

【祭具】より

…祭祀(さいし)に用いられる器具の総称。祭具は宗教儀礼と有機的に結合している。すなわち祭場の荘厳(しようごん)に用いられたり,神的存在と人間主体とが交わる通路づけの役割を果たしたり,また祭具自体が宗教的象徴物となるなど,さまざまな機能をになって,地上に聖なる儀礼的空間を現出させる。概して祭具は,民俗宗教においては,慣習的にその伝承様式を伝え,成立宗教においては教団の成立過程で定型化され,教義的意味づけを付与されて儀礼的行為のなかに位置づけられている。…

【出産】より

…出産するとすぐ,家の大門や産室,台所の入口などに禁索を張る。これは左よりのしめ縄で,これに男児の場合はトウガラシ,炭,わらを挟み,女児の場合は炭,紙,松葉,わらを挟む。禁索は7日,21日(三七日)または49日の間かけておくが,この間外部の人の出入りは禁じられ,また産屋から物を持ち出すことも禁じられる。…

【点札】より

…土地の帰属を示すために札を立てること。これは古くからあり,《古事記》《日本書紀》に見える素戔嗚(すさのお)尊の悪行の話でもクイとかシメナワとかが土地の帰属を示すものであった。このようなことは鎌倉時代に入ると,武家領においても,寺社領においても一般に行われるようになった。しかし,その内容においてはある変化を見た。すなわち問題の生じた土地に札を立てて,それが解決されるまでは何人も立ち入ることを許さず,また年貢未進の田地に点札して年貢が皆済されるまでその土地を差し押さえるとかいう場合に〈点札(点定(てんじよう))〉といわれるようになった。…

【幕】より

…物を隔てるため,あるいは装飾のためなどに用いられる,横または縦に広く長く縫い合わせた布をいう。ことに演劇上演の場において,舞台のどこか(多くは舞台の前面)につるされた布を指していい,英語ではcurtainとよばれる。また演劇用語では,戯曲の一定の構成単位(英語ではact)も,同じ〈幕〉という言葉でよばれており,このような用語が定着したのは,多くの場合にこの構成単位ごとに,実際の幕が引かれるという事実によっている。…

※「注連縄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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