ギリシア伝説で,最も狡猾(こうかつ)な人間。コリントス市の創建者。死後,地獄に落とされ,大石を山頂に押し上げるよう命じられたが,石はいま一息というところで必ずまた転がり落ちるため,彼は永遠に空しい労苦を繰り返しているという。この有名な話はすでにホメロスの叙事詩《オデュッセイア》に語られているが,シシュフォスが受けた刑罰の原因に関して後代の神話作者たちは,河神アソポスAsōposの娘の誘拐犯人をゼウスと明かしたことにより,ゼウスの怒りを買って冥府へ送られたシシュフォスが,冥府の王ハデスをまんまとだまし,再び地上に戻って長生きをしたためと説明した。また前4世紀以後の著述家の中には,シシュフォスこそオデュッセウスの真の父親と唱える者があった。今日,彼の名はしばしば,際限のない無益な骨折りの象徴として用いられ,フランスの作家カミュは,人間存在の不条理を指摘した哲学的エッセーに《シジフォスの神話》(1942)の表題を付している。
執筆者:水谷 智洋
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…そして最後の段階が,罪を犯した人間に罰と浄化を課する地獄である。たとえばコリントスの邪悪な王であったシシュフォスが堕(お)ちた世界がそれで,彼は石を山頂まで転がしていく作業を永久に続けなければならなかった。ギリシアではこのような地獄を一般にハデスとよび,神名ともなっているが,のちにキリスト教において発達をみた地獄は,ゲヘナである。…
…ホメロスではヒュプノス(〈眠り〉)の兄弟,ヘシオドスではニュクス(〈夜〉)の子とされるが,いずれも抽象的な存在にとどまる。人格神としての彼は,英雄ヘラクレスがタナトスと格闘してアルケスティスを救うエウリピデスの悲劇《アルケスティス》や,シシュフォスにより河神アソポスの娘の誘拐犯人と暴露されて怒ったゼウスが,シシュフォスのもとへタナトスを遣わしたところ,狡猾なシシュフォスはタナトスをだまして縛り上げたため,軍神アレスがそのいましめを解くまで,しばらく死者が出なかったという前5世紀の作家フリュニコスの伝える話などに見いだされる。【水谷 智洋】。…
※「シシュフォス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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