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シャーマニズム シャーマニズム Shamanism

翻訳|Shamanism

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

シャーマニズム
シャーマニズム
Shamanism

元来はシベリア諸族およびウラル語系諸族アルタイ語系諸族に特徴的な原始宗教の一形態。シャーマン呼ばれる巫者が神憑りを行い,死者と交信して神意を示したり,悪霊を祓ったり,予言したりするのが基本型。

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知恵蔵2015の解説

シャーマニズム

神や霊魂と直接に接触・交流し、託宣、予言、病気治しなどを行う宗教的職能者をシャーマン(shaman)、シャーマンを中心とした信仰をシャーマニズムという。シャーマンが神や霊魂と接触・交流する形態は、「憑依(ひょうい)」(possession)と「脱魂(だつこん)」(ecstasy)の2種類ある。前者は、神や霊魂がシャーマンの身体に入り込み、シャーマンの口を借りてメッセージを伝えるもの。後者は、シャーマンの霊魂が肉体から脱け出て、霊界や天界で神や霊魂と接触・交流するというもの。憑依か脱魂かは、社会や文化によって解釈が異なる。いずれも、神や霊魂との接触・交流中、シャーマンはトランス(trance=忘我状態)に陥る。かつてシャーマニズムは、北東アジアや極北地域に特徴的なものと考えられていたが、現在では、世界に普遍的にみられる現象とされる。シャーマニズムの観念は、新宗教やチャネリングを始め、様々な宗教現象の背後にみられる。

(岩井洋 関西国際大学教授 / 2007年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵2015」
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デジタル大辞泉の解説

シャーマニズム(shamanism)

シャーマンを中心とする宗教現象。大きく脱魂型と憑依(ひょうい)型の二つがあるとされる。北アジア・北欧・シベリア・モンゴル・中国・朝鮮・日本など世界各地に広く分布している。巫術(ふじゅつ)。シャマニズム

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大辞林 第三版の解説

シャーマニズム【shamanism】

トランス(trance)と呼ばれる特殊な心的状態において、神仏や霊的存在と直接的に接触・交渉をなし、卜占・予言・治病・祭儀などを行うシャーマンを中心とする宗教現象。世界的に広く見られる。巫俗ふぞく

出典|三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

シャーマニズム
しゃーまにずむ
shamanism

意のままに神や精霊と直接的に接触・交流し、その間に神意を伝え、予言をし、病気治療を含むいろいろな儀礼を行う呪術(じゅじゅつ)・宗教的職能者シャーマンを中心とする宗教形態をさす。以前は北アジア・極北地域に特有の宗教形態とみられていたが、今日では全世界的に存在する普遍的宗教形態とみなされるようになっている。[佐々木宏幹]

語源

「シャーマン」という語は、ツングース語やゴルド語、満州語でその地の典型的な呪術・宗教的職能者をさす用語「サマン」aman, samanに由来するとされる。この語は19世紀以降、北アジア・極北地域の呪術・宗教的職能者一般に適用され、その後さらに世界各地の類似職能者を意味する用語として広く使用されるに至った。
 漢語ではシャーマンのことを巫覡(ふげき)の語で表すが、巫は女性、覡は男性を意味する。わが国ではシャーマン的職能者を巫者、巫師、巫術師などとよび、シャーマニズムを巫術、巫道、巫教などと称している。[佐々木宏幹]

起源と特質

シャーマニズムの起源を確定することは現在でもなお困難である。それは人類とともに古い宗教形態であり、少なくとも人類が霊魂、神霊、死霊、祖霊、霊鬼、妖怪(ようかい)など霊的存在への信念(アニミズム)をもつに至ったときから、なんらかの形で存在したと考えられている。したがってシャーマニズムは、エリアーデMircea Eliade(1907―86)が述べているように、もっとも太古的・原初的な要素・性格を含んでいるとされる。
 シャーマンは、神や精霊と直接接触・交流できる力能をもつ点で、他の諸職能者と大きく異なる。シャーマンは自らが神や精霊に変身することができ、自由に諸精霊を駆使し、他界に翔(と)んで神々と直接交流することができるとされる人物である。このような行為は一般の祭司や呪術師には不可能である。
 この意味においてシャーマニズムは、霊的諸存在に関する信念や観念をもっとも積極的に顕在化させ、活性化させる宗教文化であるといえるのである。[佐々木宏幹]

おもな学説

ツングース(エベンキ人)の調査で知られるシロコゴロフSergel M. Shirokogoroff(1889―1939)は、(1)シャーマンとは、諸精霊と直接的な関係に入る方法を知っている男性または女性であり、(2)シャーマニズムとは、本質的に諸精霊への信仰すなわちアニミズムである、とした。またアメリカ・インディアンの研究で著名なR・H・ローウィは、シャーマンの力能は諸精霊との直接接触から得られるとする点で、シロコゴロフを踏襲するものである。このようにシャーマニズムをもって、神・精霊との直接接触・交流の技術・方法とする見方は、今日に継承されている。
 シャーマニズムの原型はエクスタシーの技術にあり、エクスタシーとはシャーマンの霊魂が肉体を離脱して天上界や地下界に赴くことであるとしたのが、戦後のシャーマニズム研究に大きな影響を及ぼしたエリアーデである。彼は、人間の霊魂が超自然界に飛翔(ひしょう)(上昇)あるいは降下する脱魂(エクスタシー)とともに、神や精霊が超自然界からやってきて人間に憑依(ひょうい)(ポゼッション)することも、シャーマニズムの重要な側面と考えるが、しかし前者がより本質的であり、後者は二次的現象であるとする。この問題に関して最近の研究者はルイスJoan M. Lewis(1930― )のように、脱魂も憑依もシャーマンが神・精霊と直接交流する際に陥るトランスtrance(意識の例外状態)の内容解釈における二つの型として理解しようとする。実際、地域によって脱魂が支配的な地域と憑依が優勢な所とがあり、両者の関係をめぐり種々の仮説が出されている。
 次にシャーマンに類似の性格や役割をもつ諸職能者、すなわち霊媒、予言者、神秘家、呪医、卜占(ぼくせん)師、見者などとシャーマンとの関係をどう考えるかという問題がある。霊媒その他の職能者も神・精霊との直接交流が可能であり、シャーマンとの異同が問題となるからである。この点をめぐり現代の研究者には大別して二つの傾向がみられる。一つはシャーマン、シャーマニズムを狭義に解釈し、脱魂やトランス、精霊統御などの有無を規準に範囲を限定しようとするものであり、他は広義に扱って、類似職能者の若干あるいはすべてをシャーマン、シャーマニズムに包含させようとするものである。後者を代表するネルソンGeoffrey K. Nelsonなどはシャーマン的職能shamanshipのなかに神秘家(ミスティック)、予言者(プロフィット)、霊媒(ミーディアム)、治癒者(ヒーラー)、邪術師(ソーサラー)を含めている。こうした傾向は、各地の呪術・宗教的職能者に関する調査が進むにつれて強まってきているというのが現状である。[佐々木宏幹]

儀礼の特色

シャーマンの儀礼は、シャーマニズム的な霊魂観、精霊観、他界観に対応した展開を示す。病気の原因が霊魂の喪失にあり、身体を抜け出た霊魂が地下界の精霊にとらえられていることにあるとされる地域では、シャーマンは儀礼のなかで地下界まで自ら降下し、霊魂を取り戻すことがおもな役割となる。他方、病気や不幸の原因は、悪霊の憑依または影響にあると信じられている社会では、シャーマンは自らに守護神(霊)を憑依させ、神として悪霊を祓除(ばつじょ)することが、そのおもな仕事となる。またシャーマンは天上界の神に供犠動物を届けたり、死者の霊魂を死者の国に運んだりする(脱魂型)反面、神霊や死霊をこの世にもたらす(憑依型)こともする。シャーマンが神・精霊と直接接触するためには、日常的な意識・心理状態を変えなければならない。トランス状態またはエクスタシー状態をつくりだすために、多くのシャーマンは銅鑼(どら)や太鼓、たばこその他の薬物を使用する。通常、意識が変化したとき、脱魂や憑依が可能になる。儀礼は、北アジア、極北では氏族員が多く集まる集会(セアンス)の形をとり、劇的な要素が濃いが、その他の地域ではシャーマンと依頼者とが質問応答の形をもつことが多い。[佐々木宏幹]

日本のシャーマニズム

日本の巫女(ふじょ)・巫者の伝統は、古代の『魏志倭人伝(ぎしわじんでん)』の卑弥呼(ひみこ)以来脈々と歴史を貫いて現代に至っている。『日本霊異記(りょういき)』の役小角(えんのおづぬ)は「鬼神を駈(おい)使ひ、得ること自在」な人物であったし、『新猿楽記』に現れる巫女は、卜占、神遊、寄絃、口寄(くちよせ)を事としていた。修験道(しゅげんどう)の山伏・行者が憑霊状態になって託宣、予言、治病などを行うことは現代でも各地にみられる。現代においても、東北地方のイタコ、ゴミソ、カミサン、ワカ、各地の行者、祈祷師(きとうし)、法人など、南西諸島のユタ、カンカカリヤー、ニゲービー、モノシリなどは、この国に根強い死霊・祖霊崇拝や生神信仰と結び付き、基層宗教の代表者としての役割を果たしている。幕末・維新のころと第二次世界大戦後に創出された新興宗教の多くは、シャーマン的教祖を中核としていたことはよく知られている。日本シャーマニズムは時代・社会の大変動期に噴出し、宗教文化を再活性化させるともいえよう。[佐々木宏幹]

シャーマニズムと現代

現代の世界各地において、シャーマニズムおよびその類似形態が大きな関心の対象になっている。既成諸宗教の教学や神学が組織体系化されるにしたがって、霊的存在は合理的・抽象的思弁の対象となり、生き生きとした性格を失った。既成宗教の職能者はもはや実体としての霊魂や神霊・精霊を扱えなくなっている。現代におけるシャーマニズムの台頭は、既成宗教と基層(民俗)宗教との間隙(かんげき)を縫う役割を担っているとみられる。それがけっして僻遠(へきえん)の地の現象ではなく、東京や大阪といった大都市において盛行している事実であることに注目したい。[佐々木宏幹]
『エリアーデ著、堀一郎訳『シャーマニズム』(1974・冬樹社) ▽古野清人著『シャーマニズムの研究』(1973・三一書房) ▽桜井徳太郎著『日本のシャマニズム』上下(1974、77・吉川弘文館) ▽山下欣一著『奄美のシャーマニズム』(1977・弘文堂) ▽佐々木宏幹著『シャーマニズム――エクスタシーと憑霊の文化』(1980・中央公論社)』

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