シュリーレンとは、一様な透明媒質中にある不均一性や脈理を意味するドイツ語。このシュリーレンを光学的手段によって目に見えるようにする方法をシュリーレン法という。私たちが目で物を見るときは、その物で反射または透過した光の明暗または色の違いによって、その物の存在、性質、形などを知る。したがって、一様な媒質中にあるシュリーレンは、周囲との間に明暗や色の差がないので、一般には認めにくい。ひどい不均一性がある場合には、それを通して他の物を見ると、像がゆがんで見えるので、その存在を知ることができる。ここで問題とするのは、そのような方法では認められないようなわずかな不均一性を認めることである。
シュリーレン法で用いられる装置の原理図(点光源Sから出た光は、レンズLによってS′に収束する光にされ、シュリーレンShのある物体Oを通過する。S′の後方に置かれたレンズCによって、磨(すり)ガラスまたは目の網膜上に物体Oの像O′を結ばせる。不均一性が存在しないときは、光はすべてS′を通る。不均一性があると、その部分の屈折率は周囲の部分と異なるので、その部分を通った光は曲げられてS′とは少し異なった位置を通る。光を通さない衝立(ついたて)KをS′の位置に置き、S′を覆うと、物体Oが均一の場合にはCに入る光はなくなり、視野は真っ暗になる。不均一部分を通って曲げられ、Kで覆われなかった光はレンズCに入っていく。その結果、暗黒の背景の上にShの明るい像が現れる。反対にKはS′を覆わず、Shで曲げられた光の一部が遮られると、Oの明るい像の中にShが暗く現れる。以上がシュリーレン法の原理である。
)を示す。この方法を用いることにより、熱せられた物体の周囲の空気の温度・密度の違いを利用して、空気の流れを観察できる。完全に均一でなければならない光学ガラスの中の脈理をみつけることができる。また高速風洞の中に置かれた航空機の翼に発生する衝撃波を観察することができる。
[三宅和夫]
透明媒質中に屈折率の変化が存在するとき,その変化を明るさの相違に変えて観察する光学的測定法。シュリーレンは光学的不均一(脈理)の意味。図に示すように直線的なへりをもつ面光源をレンズLで結像し,その像をほとんど覆うようにやはり直線的なへりをもつ遮光板を像面に挿入する。一様な媒質の場合,目またはカメラレンズの像面は,面光源の像のうちで遮光板に覆われない部分からくる光によって一様に照明される。図で波形で示した部分に屈折率の不均一があると,ここで光は屈折して向きを変え,遮光板で遮られるように光が進む部分に対応する像面上の位置は暗く,遮光板で遮られないように光が進む部分に対応する像面上の位置はより明るく観察される。良質のシュリーレン像を得るためには,高輝度の光源と収差のよく補正されたレンズLが必要で,Lの径は大きいほど大きな被検部分の,また焦点距離は大きいほど高感度の測定ができる。被検部分が光軸方向に奥行きのある場合は,光路に沿っての屈折率変化を積分したものが明暗として現れる。また屈折率の空間的変化が細かい場合は,屈折ではなく回折による取扱いを必要とする。面光源を点光源で置き換えた配置や,レンズLを凹面鏡で置き換えた配置も用いられる。応用例に風胴内の気流分布の測定や内燃機関内のガスの燃焼,爆発の測定がある。また反射鏡やレンズの面精度,材質の不均質,収差を調べるフーコーテストや,非成形ガラスブロックの屈折率を既知屈折率の液体に浸漬(しんし)して測定する偏角法も一種のシュリーレン法である。さらに液体の濃度こう配を屈折率変化から直接求める配置(チセリウス装置)も考案されている。
執筆者:田中 俊一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
透明体中の局所的な屈折率の変化を調べる光学的方法.点光源Sからの光はレンズ L1 によりS′に焦点を結ぶ.Aの位置に透明試料を置き,レンズ L2 でスクリーンF上にAの像をつくる.S′の位置に遮光板Dを置き,Sからの光の一部を遮光すれば試料の像は暗くなる.もし,透明試料に屈折率の局所的変化があれば,その部分の光路の曲がりによりS′に集光しないので,遮光板を挿入したことによる影響に一様な屈折率部分と差異ができ,像に明暗のコントラストを生じる.この方法は光学ガラスの脈理(独:Schliere)の検査などに用いられる.また,空気中に生じる圧縮波や,Aの位置に置いた炎により生じる気体上昇の様子などを見ることができる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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