シュロ(英語表記)windmill palm
Trachycarpus fortunei (Hook.) H.Wendl.

改訂新版 世界大百科事典 「シュロ」の意味・わかりやすい解説

シュロ (棕櫚)
windmill palm
Trachycarpus fortunei (Hook.) H.Wendl.

通常栽培されるヤシ科の中高木で,高さ10mに達する。耐寒性が強く,北は東北地方まで栽培が可能である。幹は,葉鞘(ようしよう)部が腐って残った黒褐色の繊維,つまりシュロ毛で密に包まれている。葉は円形で掌状深裂し,直径90cmぐらい,裂片は多数で先端は折れて垂れ下がる。初夏のころ,葉の間に,数枚の苞に包まれた長さ約30cmの肉穂花序を出し,淡黄色の小さい花を多数つける。花は雌雄異株果実はエンドウ豆大で,扁球形青黒色に熟する。中国の原産で,南九州では野生化したところがある。シュロ毛は耐水性があり,ロープ,縄,みの,油のろ過用に用い,若葉を漂白したもので草履表,帽子,敷物,籠などを作る。

 日本でも観葉植物として庭園に栽培される中国原産のトウジュロT.wagnerianus Hort.Winterex Rosterはシュロに比し,葉柄はやや短く,葉はやや小さく,裂片の先端は下垂しない点で区別されるが,雑種と考えられる中間的なものも多い。地中海沿岸産のチャボトウジュロChamaerops humilis L.は,幹は束生し,高さ通常0.3~1.2m,直径12~15cm。葉は扇状半円形で1/3ないし2/3の深さまでさけ,裂片は細い剣状で先端は2裂している。葉柄は細く,ふちに黒褐色のまっすぐなとげを有する。果実は球形または卵円形。多くの品種がある。ヨーロッパ唯一のヤシで,英名European fan-palmという。普通,鉢植えとして室内装飾用とするが,日本の暖地では露地栽培されている。シュロ毛はロープに用い,葉は編物に利用し,新芽は野菜となる。聖書にでてくるpalmをふつうシュロと訳すが,これはナツメヤシ(英名date palm)である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シュロ」の意味・わかりやすい解説

シュロ
しゅろ / 棕櫚
[学] Trachycarpus

ヤシ科(APG分類:ヤシ科)シュロ属の総称学名Trachyはラテン語の凹凸carpusは果実の意味。幹は単一で直立し、まれに分げつするものもある。高さは6~17メートル、径12~20センチメートル。幹肌には繊維化した褐色の葉鞘(ようしょう)網が長期間固着し、脱落後は波状の凸脈が残る。葉はほば円形の掌状葉で径45~80センチメートル。小葉裂片は内向きのV字状で、光沢のある緑色または半光沢の暗緑色である。葉柄は長さ0.6~1.2メートル、幅1.2センチメートル、両縁に微小なのこぎり状の歯があり、基部20センチメートルにわたり強靭(きょうじん)な繊維網がある。雌雄異株。肉穂花序は黄色で長さ55~60センチメートル、雌株には雌花と両性花が雑居し、雌花には長さ2~3ミリメートルの無精雄しべが6本ある。雄株には雄花があり、長さ2~3ミリメートルの雄しべが6本あり、花の中央に小さな不稔(ふねん)雌しべがある。果実は青黒色、楕円(だえん)形で長さ1~1.2センチメートル、厚さ6~9ミリメートル、中果皮は薄く、胚乳(はいにゅう)は片側に黒褐色の錯道質(侵食状黒条痕(こん))があり、胚はその背面にある。耐寒性はヤシ科中最強で、零下12℃でも越冬する。日本、中国、インド、ネパールに5種分布する。そのうち日本原産のワジュロT. fortunei Wendl.(T. excelsa Wendl.)は小葉裂片端が垂れ下がるが、ほかは直線状の掌状葉である。ほかにトウジュロT. wagnerianus Becc.(T. fortunei Wendl.)や、T. martiana Wendl.、T. takil Becc.などがある。

[佐竹利彦 2019年4月16日]

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百科事典マイペディア 「シュロ」の意味・わかりやすい解説

シュロ(棕櫚)【シュロ】

中国原産で,各地で広く栽培されるヤシ科の常緑高木。耐寒性が強く,東北地方まで屋外で栽培でき,暖地では野生化もしている。幹は円柱形で直立し,暗褐色の繊維でおおわれ,頂に葉をつける。葉は四方に広がって出,柄は太くて長く,古い葉はたれ下がる。葉身は扇形に深裂し,裂片の先は折れる。雌雄異株。5〜6月,葉間から大きな肉穂花序を出し,淡黄色花を密に開く。果実はゆがんだ球形で,青黒色に熟す。幹の繊維は耐水性があり,シュロ縄や箒(ほうき),敷物などに,樹は庭木とされる。近縁のトウジュロも中国原産で,シュロより葉が堅く短い。また先が折れないのでシュロより観賞価値が高い。
→関連項目ビロウヤシ(椰子)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シュロ」の意味・わかりやすい解説

シュロ(棕櫚)
シュロ
Trachycarpus excelsus; hemp palm

ヤシ科の常緑高木。ワジュロ (和棕櫚) ともいう。九州南部原産。現在野生のものはなく,暖地に広く栽植されている。ヤシ科のなかでは最も耐寒性が強いので東北地方まで栽培可能である。枝はなく幹の先端に多数の大型の葉を出す。雌雄異株で初夏に穂状花序をなして黄白色の花をつける。若い葉をさらして帽子や敷物などをつくり,幹の鞘部に残る強靭な繊維 (いわゆるシュロ皮) を縄や刷毛 (はけ) などの材料に用いる。本種によく似ていてしばしば栽培されるものにトウジュロ (唐棕櫚) T. wagnerianusがある。中国大陸南部の原産で,全体にワジュロより小型,葉の裏に主脈の一部が葉面から離れて突き出しているので区別できる。

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普及版 字通 「シュロ」の読み・字形・画数・意味

【酒】しゆろ

字通「酒」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内のシュロの言及

【ヤシ(椰子)】より

…いわゆるヤシ形の生活形になる。約220属2500種を有し,それらの大部分は熱帯や亜熱帯に分布し,シュロのようなごく少数の種が暖温帯に生育する。また,この多数の属や種の多くは限定された狭い地域にのみ分布するという,固有性の強い植物群でもある(図)。…

※「シュロ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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