ラン科シュンラン属Cymbidiumに属する常緑のラン。園芸的にはシンビジウムの名で呼ばれるのは,シュンランやカンランなど東洋ランとされるシュンラン属植物を除くもので,洋ランの重要な一群である。インド北部から中国,東南アジア,さらにオーストラリアに広く分布し,約60種あまりが知られている。地生種も,樹木に着生するものもあるが,多くはやや乾いた場所を好む。
普通は偽球茎が発達し,それに6~10枚くらいの左右に扇状にひろがる細長い硬い葉をつけ,葉の先端はやや垂れる。新しく生じた偽球茎の基部から現れる花茎に,5~20輪の花を総状につけるものが多いが,1花しかつけない種もある。花茎は地生種では直立し,着生種では垂れ下がるものが多い。萼片と花弁は平開することが多く,唇弁は3裂することが多い。栽培されるものでは花は大型で,色も赤褐,赤紫,黄緑色などさまざまである。花の寿命は長く,受粉させないと40~60日間観賞できるものもある。洋ランのシンビジウムは原産地が熱帯域で大輪花が多く,栽培される原種は10種を超える。しかし,原種は園芸的にはさほど重要でなく,多くの栽培品種(現在では3000品種を超える)のほとんどは交配育成品種である。
シンビジウムは種間交配で多くの品種が育成されているが,他属との交配はなく,近縁種としてはマダガスカル原産のシンビディエラ属Cymbidiellaが1種あるだけである。シンビジウムの園芸品種の分類は,大型系品種群と,小型系品種群の二つのタイプに分けられる。大型シンビジウムは切花用や鉢物用に栽培され,花径は10cm以上あるが,葉も100cm以上となる。これに対し小型シンビジウムは,花径5~6cmで葉も大型より短くまとまっているため,もっぱら鉢物用となっている。
熱帯原産であるが,シンビジウム類の越冬は最低6~7℃あればよいので,扱いやすい。生育期は春から秋にかけてで,この間は戸外に出して,西日を除いた日光によくあて,水と肥料とを与えて株を充実させる。花芽は秋の初めのころにはできるので,夏の培養にはとくに気をつける。繁殖は株分けで春に行うが,2~3年に1回でよい。
執筆者:江尻 光一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ラン科(APG分類:ラン科)シンビジウム(シュンラン)属の総称。約70種を含み、熱帯アジアを中心に、北は日本、中国、ヒマラヤ山麓(さんろく)、インドからオーストラリアまで広く分布する。園芸的には、温帯産のカンランやシュンランなどを東洋ランとして区別する場合がある。今日では両者の交雑種も多く栽培されている。
常緑性の多年草で、卵形の偽球茎に線形の葉を10枚ほどつけ、茎部から花茎を伸ばし、1~30個の花をつける。交雑品種は多く、大形から小形まであり、色彩は紅紫、桃、緑、黄、白色など豊富である。小形から中形までの品種は耐寒性が強く、5~6℃で越冬する。大形品種は10℃は必要である。
繁殖は株分けにより、一般に春に行い、2~3球ずつに分け、ミズゴケやオスマンダの場合は素焼鉢に、砂利やバークの場合は堅鉢に植える。鉢は新しい偽球茎が1~2年伸びられるほどの大きさのものを用い、鉢の高さの3分の1程度まで鉢片など粗い材料を入れ、根を広げ、よく排水するように植える。植え付け後10日くらいは日陰で、暖かい場所に置き、葉水を与える。夜温が10℃を保つようになったら戸外の通風のよい場所に出し、夏季は50%の日よけをする。秋には屋内へ入れる。肥料は油かすと骨粉を等量混ぜ、茶さじ1~2杯を月1回、秋まで置肥する。灌水(かんすい)は春から秋は十分にするが、冬季は乾いたら灌水する程度とする。花期は普通春から秋であるが、つぼみ付きの株を夜間は10~17℃くらいの乾きすぎない場所で管理すれば、冬から早春に花を開かせることができる。
[唐澤耕司 2019年5月21日]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域ブランド・名産品」事典 日本の地域ブランド・名産品について 情報
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加