ジェニー(読み)じぇにー(英語表記)François Gény

精選版 日本国語大辞典 「ジェニー」の意味・読み・例文・類語

ジェニー

  1. [ 一 ] ( William Le Baron Jenney ウィリアム=ル=バロン━ ) アメリカ建築家。鉄骨高層建築方法を大成。「摩天楼の父」といわれる。(一八三二‐一九〇七
  2. [ 二 ] ( François Gény フランソワ━ ) フランス法哲学の代表的学者。条文注釈主義を批判し、自然法の思想に基づく科学的自由探求による法解決を唱えた。主著「実定私法における解釈方法と法源」。(一八六一‐一九五九

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改訂新版 世界大百科事典 「ジェニー」の意味・わかりやすい解説

ジェニー
François Gény
生没年:1861-1959

フランスの法学者。ロレーヌの河川森林査察官の子に生まれ,ナンシー大学卒業。アルジェ大学の教壇に立ち,1889年ディジョン大学に転じ,1901年以降母校に戻り31年退職に至るまでその民法講座にとどまった。民法典の条文と形式論理とに固執する注釈学派の解釈方法論を体系的に批判し今日的方法の基礎を構築した主著《実定私法における解釈方法と諸法源--批判的試論》(1899)は,ドイツ法学の成果をも咀嚼(そしやく)したフランス法学の記念碑的古典であり,諸外国における評価も高い。彼は,立法者の予想しなかった新たな社会的状況に関して,注釈学派のごとき立法者意思の推定だけでなく,規定の文言のみを新たな状況と適合的に解釈するサレイユの進化的解釈をも否定し,中間的解決として,他の諸法源,とくに慣習法への依拠を承認するとともに,これらの法源の存在しない場合には,客観的規範の探求を判事に許す。この探求が,有名な〈自由な学問的探求libre recherche scientifique〉であり,判例や法的伝統の考慮はもちろんとして,演繹論理,直観,類推などの重要性を力説しており,スイス民法典(1907)1条にも影響を与えた。彼は,この解釈方法論を郵便による私信の制度に適用して論じた後(1911),いわば続編としての《実定私法における学問と技術》(全4巻,1914-24)において深め,〈学問〉すなわち実定法上,歴史上,道徳上の所与(そこでは合理的所与としての自然法も特筆される)の研究と,〈技術〉すなわち法規範の具体的適用に必要な構築ないし法的推論の諸技術との両面を総合的に考察した。総じて,彼は,古典的な法・法学とそれに対する社会科学的批判とを統合し,20世紀の私法解釈論および法哲学の中心的部分を基礎づけた優れた法思想家であり,かつ篤実な教育者であった。98歳の誕生日前日に没するまで,キノコ栽培業者の所得税の問題から一種の法認識論的省察までにわたる著作の手を休めなかった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジェニー」の意味・わかりやすい解説

ジェニー
じぇにー
François Gény
(1861―1959)

フランスの法学者。ディジョン大学(1891~1901)およびナンシー大学(1901~1925)で民法を担当する。彼は『実定私法における解釈方法と法源』(1899)において、従来の法学界の主流が法典の完結性を前提とし、すべての法的問題を法典からの演繹(えんえき)によって解決しようとする立場をとるのを批判し、新しい解釈方法を提唱した。彼は法典および慣習法には限定された役割しか認めず、法典および慣習法によって解決が与えられない場合には、裁判官は「自由な科学的探究」libre recherche scientifiqueによって新しい解決をみいだすべきであると説く。のちに大著『実定私法における科学と技術』4巻(1915~1924)において、この科学的自由探究に哲学的基礎を与えた。法典の進化的解釈を唱えたサレイユと並んで、ジェニーは、社会の変化がようやく顕著になった20世紀初頭における法解釈学に、新しい方法を与えることに寄与したといえる。

[高橋康之]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジェニー」の意味・わかりやすい解説

ジェニー
Gény, François

[生]1861.12.17. バカラ
[没]1959.12.26. ナンシー
フランスの法学者。ナンシー大学で民法を講じた。『実定私法における解釈方法と法源』 Méthode d'interprétation et sources en droit privé positif (1899) において,裁判官は「自由な科学的探求」 libre recherche scientifiqueに基づき論理的推論によって法律の欠けているところを補充する権能を有する,と主張し,裁判官の立法的機能を認め,法の機械的な適用に終始する 19世紀フランスの註釈学派を批判した。自由法論のフランス的形態である科学学派École scientifiqueの代表者。さらに『実定私法における科学と技術』 Science et technique en droit privé positif (4巻,1914~24) を著わし,その主張を理論的に基礎づけた。

ジェニー
Jenney, William Le Baron

[生]1832.9.25. マサチューセッツ,フェアヘーブン
[没]1907.6.15. ロサンゼルス
アメリカのシカゴ派の礎を築いた代表的な近代建築家。パリのエコール・デ・ボザールに学ぶ。ホーム・インシュランス・ビル (1884~85,1891増築,1931解体,シカゴ) は,10階建てではあるが,鉄骨フレーム構造による画期的な新構法を採用したもので,摩天楼建築と呼ばれた。そのほか,ライター・ビルディング II (1891) などの設計を通じて,フレーム構造の発展に寄与した。

ジェニー
Geńee, Dame Adeline

[生]1878.1.6. オールフス
[没]1970.4.23. イーシャー
デンマーク生れのイギリスのバレリーナ。本名 Anita Jensen。伯父のアレクサンドル・ジェニーに学び,10歳でデビューし,ベルリン,ミュンヘン,コペンハーゲンのオペラ座を経て,ロンドンのエンパイア劇場のプリマ・バレリーナになった。当り役は『コッペリア』のスワニルダ。引退後は,カマルゴ協会や王立舞踊アカデミーの創設に尽力,イギリス舞踊史に残した功績は大きい。

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百科事典マイペディア 「ジェニー」の意味・わかりやすい解説

ジェニー

フランスの法学者。ディジョン,ナンシーの各大学で法哲学,民法を講じた。サレイユとともに自由法論の提唱者。自由法運動に科学的基礎をおくことに努めた。主著《実定私法における解釈方法と法源》《実定私法における科学と技術》。

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デジタル大辞泉プラス 「ジェニー」の解説

ジェニー

タカラトミー(旧・タカラ)の着せ替え人形。1986年発売。アメリカ、ロサンジェルス出身のおしゃれな17歳の女の子という設定。

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