ジグモ(読み)じぐも(英語表記)purse-web spider

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジグモ」の意味・わかりやすい解説

ジグモ
じぐも / 地蜘蛛
purse-web spider
[学] Atypus karschi

節足動物門クモ形綱真正クモ目ジグモ科に属するクモ。地中生活をするクモで薄暗いところの板塀、灯籠(とうろう)、樹木下部に細長い袋をつくってすむ。袋の地上部は網の役目、地中部は住居にあたる。小さい虫などが地上部の袋に止まると、クモは底からあがってきて袋越しにかみついて袋の中に引き入れる。とらえた虫をいったん底に運び、ふたたびあがってきて破れた袋を修理する。体は濃褐色で、大きいあごと鋭い牙(きば)がある。体長雌1.8センチメートル、雄1.3センチメートル。雄の体を二つに折り曲げると自分の腹に牙を突き立てるのでハラキリグモとかサムライグモともよばれる。そのほか、ズボズボ、フクログモツチグモなど各地で方言が多い。

 ガラス瓶かプラスチックなど透明な箱に土を入れ、壁面に沿って棒でくぼみをつくり、その中へクモを入れておくと、袋をつくるようすを観察できる。野外でもなんらかのくぼみを利用して掘り始めるらしく、くぼみをつくらないで飼育すると、けっして袋をつくることはない。長期間絶食に耐えるので飼育しやすい。日本全国に広く分布し、子供たちに親しまれている。ジグモの近縁種形態もよく似たワスレナグモは地面に穴を掘ってすむが、袋が地上部にはなく、入口から放射状の信号糸が出ている。

[八木沼健夫]


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改訂新版 世界大百科事典 「ジグモ」の意味・わかりやすい解説

ジグモ (地蜘蛛)
Atypus karschi

ジグモ科のクモ。地中と地上に細長い袋状の住居巣をつくり,地上に出ている部分を樹木や石壁につける。この部分がたいせつな餌をとらえる場所で,ハエやガなどが知らずにここにとまると,袋の中から長い大きなきばでぱくりとくわえ袋の中に引きずり込んで食べてしまう。この袋状の住居巣の長さは15~18cmがふつうだが,20cmを超える長いものもある。英語ではこの科のクモを袋巣のかっこうから,purse-web spiderと呼んでいる。体長は雌15mm,雄8mm。雌の体は茶褐色でつやつやしている。雄は黒色でつやがある。秋の繁殖期になると雄は袋から出て,雌を尋ね歩く。子どもたちが袋を地中から抜きとり,ジグモを出してけんかさせて遊ぶ地方もある。ジグモ科Atypidaeのクモは日本ではこのジグモ1種だけで,全土にいる。ヨーロッパにいるA.affinisは地上に出ている袋巣を地面に横たえてつくる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジグモ」の意味・わかりやすい解説

ジグモ
Atypus karschi

クモ綱クモ目ジグモ科。雌の体長 2cm,長い牙を加えると 2.5cmぐらいになる。雄はやや小さい。体は黒褐色で,腹部は紫色を帯びる。樹木の根もと,塀や石垣などの薄暗いところに,下半が地中に伸びる長い管状の住居をつくる。この管状の袋の地上に出ている部分に獲物が触れると袋の中から牙をたてて咬みつき,袋の中に引きずり込んで食べる。餌に恵まれる機会は少く,長期間の絶食に耐える。雄は繁殖期には徘徊し,雌の住居に入り込む。産卵は8~9月に行われ,孵化した子グモは翌春まで親グモと同居する。日本全国にごく普通にみられ,台湾まで分布している。地方名も多く,生息場所からツチグモ,捕えて折り曲げると自分の腹を切るところからハラキリグモなどともいわれる。なおジグモ科 Atypidaeは大きな牙が特徴的で,本種のほかにワスレナグモ Calommata signataがみられる。この種は 15~20cmの深さに管状の住居をつくるが,袋は地上に出ず,地面に穴があいた状態となる。 (→クモ類 )

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百科事典マイペディア 「ジグモ」の意味・わかりやすい解説

ジグモ

ツチグモ,ハラキリグモ,フクログモなどとも。蛛形(ちゅけい)綱ジグモ科の1種。体長雄12mm,雌18mmくらい。焦茶色。樹木の根ぎわや塀(へい)の土ぎわに細長い袋状の巣を作る。袋の外側を通りかかった昆虫やミミズなどを,袋ごしに大きな牙を使って捕らえ,中に引き込んで食べる。日本全土に分布。8〜9月ごろ産卵,子グモは翌春まで親の巣に同居する。

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