ジョセフソン効果を利用した超伝導量子効果素子。トンネル型と弱結合型素子がある。前者は二つの超伝導体を数nmというごく薄い酸化膜を介して結合したもので,後者は二つの超伝導体の間隔をもう少し離し,その間を薄いあるいは細い超伝導体で結んだものである。弱結合部にはこのほか常伝導体や半導体材料も用いられる。
素子を通過する電流が,素子にかけた電圧の時間積分の正弦関数に比例することから,直流電圧をかけると電流が交流振動する。これを利用して周波数標準より電圧標準が作成されている。また逆に交流を直流に変換する効率も高く,マイクロ波からミリ波に至る電磁波の高感度検出器としても使われる。
超伝導体のループを作ると永久電流が流れ,ループには一定の磁束量子(約2×10⁻15Wb)と呼ばれる量の整数倍の磁束が永久保存される。このループの一部にジョセフソン素子を入れたものはSQUID(スクイド)と呼ばれる。このSQUIDにおいては,ジョセフソン素子は比較的弱い臨界電流値をもつので,外界より磁束を与え,素子に流れる電流を臨界電流以上にすることで簡単にループの磁束を変えることができる。このことを利用し,外界の磁束を磁束量子を単位として計数する磁束計が作られる。また感度のよい磁界センサー,電流センサーとしても使われる。
近年ジョセフソン素子が弱い臨界電流値をもつことを利用した高速計算機用の論理回路や記憶回路が研究されている。これはジョセフソン素子にいくつかの電流線を結合したもので,全電流が素子の臨界電流値を超えて,素子が状態遷移を起こすかどうかにより,論理動作を行わせるものである。素子の状態遷移時間が1ps(10⁻12s)の程度であり,将来の利用が期待されている。
執筆者:岡部 洋一
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超伝導状態における電流のトンネル効果(ジョセフソン効果)を利用した低温で動作するスイッチング素子。温度の点に問題はあるものの、半導体素子よりはるかに優れた性能をもち、近い将来に集積化されることが予想され、夢のLSI(大規模集積回路)が出現するものとして大いに期待されている。全体を極低温に保ち、2枚の導体部分は超伝導状態とし、その間に100万分の数ミリメートルの薄い絶縁体を挟んだサンドイッチ接合構造とする。絶縁体は非常に薄いので、トンネル効果による電流は流れるが、接合部には電圧が発生しない。しかしある電流値を超えると、接合部は本来の絶縁体に戻り、一定のギャップ電圧(導体がニオブの場合は約3ミリボルト)が発生する。このスイッチング速度はきわめて速く、所要電力も少ない。微細加工して接合容量を小さくすると、数ピコ秒(10-12秒)の時間でスイッチすることができ、しかも消費電力は数マイクロワット(10-6ワット)である。これらの値の積(ピコ秒×マイクロワット)は半導体素子に比べて4桁(けた)も小さい。なお、ジョセフソン効果は、イギリスのケンブリッジ大学の学生であった22歳のジョセフソンが1962年に予言したもので、翌年アメリカのベル研究所によって実証された。
[川邊 潮]
二つの超伝導体を弱く接合してジョセフソン効果を示すようにした素子のこと.素子に流れるジョセフソン電流が,抵抗が0と有限の抵抗の二つの状態があることをスイッチとして用いている.ジョセフソン素子では一度入力信号が入ると,これが切れてもとの状態に戻ることがないので,パルス電流を流してもとの状態に戻すことが必要である.また,ジョセフソン素子では否定論理が行えず,入力信号が1のときに出力が1となる.このため,半導体で用いられているようなNANDやNORの論理を簡単につくることができない点が問題である.ジョセフソン素子を用いたLSIは,シリコンのLSIと比べて遅延が短いことから,超高速スイッチングデバイスとして,一時,多くの研究機関で1990年ころまで研究されたが,冷却などの問題があり,実用化には至っていない.現在では,これにかわり,微弱磁場が検出できるSQUID(superconducting quantum interference devices)とよばれる超伝導量子干渉素子が実用化されつつある.
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