ストーカー規制法(読み)ストーカーきせいほう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

ストーカー規制法
ストーカーきせいほう

平成12年法律81号。ストーカー行為に対する処罰などの規制と,被害者に対する援助を定めた法律。正式名称は「ストーカー行為等の規制等に関する法律」。ストーカーとは,一方的に関心をいだいた相手がいやがるにもかかわらず,執拗につきまとう人のこと。「忍び寄る」「こっそり追跡する」という意味の英語 stalkに由来する。1999年10月に埼玉県桶川市で発生したストーカー行為による殺人事件を契機に,多発するストーカー犯罪に対応するため,2000年11月に施行された。特定の人やその家族などに対して待ち伏せを行なう,連続して電話をかけたり執拗にメールを送信する,中傷する内容の文章や羞恥心を与える写真をインターネットなどに載せる,といった八つの行為を「つきまとい等」とし,この「つきまとい等」を同一の者に繰り返し行なうことを「ストーカー行為」と定めている。「つきまとい等」には警察本部長などが警告し,従わない場合には都道府県公安委員会が禁止命令を出す。禁止命令に違反して「ストーカー行為」をすると,1年以下の懲役または 100万円以下の罰金に処せられる。被害者が申し出をするか告訴しなければ,規制や援助の措置がとられない。

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知恵蔵の解説

ストーカー規制法

「ストーカー行為等の規制等に関する法律」の略称。ストーク(stalk)とは執念深く付きまとうことで、ストーカー(stalker)は付きまとう人を指す。ストーカー規制法はストーカー行為等を規制、処罰し被害者を援助するための法律で、2000年5月18日に成立し、同年11月24日から施行された。1999年、埼玉県桶川市で起きた、ストーカー行為の末に女子大生が刺殺された事件が制定のきっかけとなった。
ストーカー規制法は、特定の者に対する恋愛・好意感情や、それが満たされなかったことに対する怨恨(えんこん)の感情を満たすためのつきまとい等(つきまとい、待ち伏せ、監視、面会要求、無言電話)を規制。つきまとい等を繰り返すことをストーカー行為と定義し、罰則を科す。
被害者が警察に被害を訴えると、警察はストーカー行為をやめるよう加害者に警告することができ、警告を無視すると公安委員会が禁止命令を出すことができる。禁止命令に違反すると1年以下の懲役か100万円以下の罰金が科される。これとは別に被害者が加害者を告訴した場合、罰則は6カ月以下の懲役か50万円以下の罰金である。
警察庁によると、2008年度のストーカー事案の認知件数は1万4千657件で、警告をしたのが1千335件。禁止命令は26件。被害者の90.3%が女性で、加害者は元を含む交際相手が49.9%、元・内縁を含む配偶者が8.8%、知人・友人が9.9%。行為は面会・交際等の要求が52.6%、つきまとい、待ち伏せ等が51.6%、無言電話・連続電話等が30.1%となっている。
ストーカー行為が監禁や殺人など凶悪事件につながることもあり、各都道府県警では相談や規制に力を入れている。また、恋愛感情と関係の無いつきまとい等を規制する条例もいくつかの県で制定されているが、合法的な営業、布教、労働争議、取材などを過度に規制する恐れも指摘されている。

(北健一  ジャーナリスト / 2009年)

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

ストーカー規制法

1999年に埼玉県桶川市で女子大学生が殺された事件をきっかけに2000年、施行された。恋愛や好意の感情に絡んだ待ち伏せや面会要求、著しく乱暴な言動などを「つきまとい等」と規定し、繰り返したり、禁止命令に違反したりした場合に罰則がある。長崎県西海市で11年、ストーカー被害を訴えた女性の実家の母と祖母が男に刺殺された事件などを教訓に、13年に初の改正法が施行され、メールを繰り返し送る行為が新たに「つきまとい等」として禁止された。

(2014-08-05 朝日新聞 夕刊 1総合)

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デジタル大辞泉の解説

ストーカー‐きせいほう〔‐キセイハフ〕【ストーカー規制法】

《「ストーカー行為等の規制等に関する法律」の通称》ストーカー行為に対する規制・罰則と、被害者に対する援助措置を定めた法律。平成12年(2000)施行。
[補説]この法律でいうストーカー行為とは、同一の者に対し、つきまとい等(下記の(1)から(4)までに掲げる行為については、身体の安全、住居等の平穏もしくは名誉が害され、または行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る)を反復してすることと規定。
つきまとい等とは、特定の人物に対する恋愛感情や好意の感情が満たされなかったことによる怨恨(えんこん)の感情を充足させるために、本人、その配偶者、親族などに対し、以下のような行為をなすことと規定。
(1)つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居・勤務先・学校などの付近において見張りをしたり、そこへ押し掛けたりすること。
(2)行動を監視していると思わせるような事柄を告げること。
(3)面会・交際など、義務のない行為を要求すること。
(4)著しく粗野または乱暴な言動をすること。
(5)電話をかけて何も告げず、または拒まれたにもかかわらず、連続して電話をかけること。また、連続してファックスや電子メールを送信すること。
(6)汚物・動物の死体など、著しく不快で、嫌悪の情を催させるような物を送付すること。
(7)名誉を害する事柄を告げること。
(8)性的羞恥心を害する事柄を告げること。また、性的羞恥心を害する文書・図画などを送付すること。

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百科事典マイペディアの解説

ストーカー規制法【ストーカーきせいほう】

正式にはストーカー行為等の規制等に関する法律。2000年11月施行(議員立法)。ストーカーを規制する法律。規制対象となるストーカー行為(つきまとい行為の反復)を,公権力介入の限定の観点から,〈特定の者に対する恋愛感情その他の行為の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足することにおく行為〉に限定している。ストーカー行為は親告罪で,罰則は6ヵ月以下の懲役,または50万円以下の罰金である。警察は警告書による警告ができ,この警告に従わない場合,都道府県公安委員会が禁止命令を出すことができる。命令に従わない場合には1年以下の懲役または100万円の以下の罰金。また被害者による告訴以外にも,被害者の申し出により警察が弁護士の紹介や防犯アラームの貸し出しなど国家公安委員会規則に基づく援助を定めている。女性だけでなく,男性も保護対象としている。2013年6月改正(同年10月施行)では(1)電子メールを送信する行為の規制(被害者から拒まれたにもかかわらず,連続して電子メールを送信する行為が,新たにストーカー規制法の規制対象とされた),(2)禁止命令等をすることができる公安委員会等の拡大(禁止命令等をすることができる公安委員会については,被害者の住所地に加えて,被害者の居所,加害者の住所等の所在地又はつきまとい等が行われた地を管轄する公安委員会に拡大された。また警告等をすることができる警察本部長等についても,同様に拡大された),(3)被害者の関与の強化(警察本部長等は,警告をしたときは,その内容及び日時を被害者に速やかに通知しなければならないこととされ,警告をしなかったときは,その旨及び理由を,被害者に書面により速やかに通知しなければならないこととされた。また,都道府県公安委員会は,職権によるのみならず,被害者の申出によっても禁止命令等をすることができることとされた。さらに,その申出を受けて禁止命令等をしたときは,警告と同様,その内容及び日時を被害者に速やかに通知しなければならず,また,禁止命令等をしなかったときは,その旨及び理由を被害者に書面により速やかに通知しなければならないこととされた),(4)その他,国及び地方公共団体が,被害者に対する婦人相談所その他適切な施設による支援に努めなければならないことや,民間組織活動の支援等を図るため,必要な体制整備や財政上の措置等を講ずるよう努めることが規定された。2012年中のストーカー事案の認知件数は1万9920件ときわめて高水準であることから,さらなる改正が必要とする意見もある。

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大辞林 第三版の解説

ストーカーきせいほう【ストーカー規制法】

正称、ストーカー行為等の規制等に関する法律。恋愛や好意、また、それらによる怨恨を晴らす目的でのつきまとい、迷惑電話、面会・交際の要求などのストーカー行為を取り締まる。2000年(平成12)制定。 → 付き纏まと

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ストーカー規制法
すとーかーきせいほう

拒まれているのに執拗(しつよう)につきまとうなどのストーカー行為を規制・処罰する法律。正式名称は「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(平成12年法律第81号)。2000年(平成12)11月に施行された。ストーカー法ともいう。ストーカー行為を、恋愛などの好意感情を満たすため、または、それが満たされなかったことへの恨みから、同じ人に「つきまとい等」を繰り返すことと規定。「つきまとい等」として、つきまとい、待ち伏せ、住居等への押しかけ、うろつき、監視行為、面会・交際の要求、乱暴な言動、無言・連続電話、連続ファクシミリ送信、汚物などの送付、名誉の毀損(きそん)、性的羞恥(しゅうち)心の侵害などの行為を列挙して規制対象としている。2013年の法改正ではメールの連続送信を規制対象に加え、2016年の法改正ではツイッターなどのSNS(会員制交流サイト)の連続送信やブログへの執拗な書き込みなど電気通信を使ったつきまとい行為(ネットストーカー)も広く規制対象とした。警察は、被害者の申し出を受け、違反行為が繰り返されるおそれがあると確認した場合、行為の禁止を警告できる。警告に従わない場合、都道府県公安委員会は禁止命令を出す。ただ緊急性がある場合、都道府県公安委員会は警告を経ずに禁止命令を出すことが可能。ストーカー行為は当初、親告罪であったが、2016年の法改正で被害者の告訴が要らない非親告罪に変更された。罰則は1年以下の懲役または100万円以下の罰金。禁止命令にもかかわらずストーカー行為を続けた場合には、2年以下の懲役または200万円以下の罰金となる。被害者には、携帯型緊急通報装置や防犯カメラ等を貸し出すほか、あらかじめ登録した電話番号から110番通報された場合、警察官へ必要情報を円滑に指令する「110番通報者登録制度」や、加害者の危害から安全な場所へ一時避難する際の「宿泊費負担制度」などの援助制度も盛り込まれている。ただストーカー規制法施行以降も、警察に被害を届けながらストーカー行為による死傷事件が後を絶たず、そのたびにメールやSNS送信を規制対象に加え、罰則を強化するなどの法改正が繰り返されている。このため「情報通信技術の進展に法整備が追いついていない」「警察の対応がいつも後手に回っている」などの批判が弁護士会や報道機関から出ている。[矢野 武]

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