翻訳|Stonehenge
イギリス,イングランド南部,ソールズベリー平野にあるヨーロッパ随一の巨石記念物。新石器時代後期から青銅器時代にかけて(前2500~前2000ごろ),大きく3回に分けて造営された。Ⅰ期には,外側に堀をもつ幅6m,高さ1mほどの土塁を径100mの円形にめぐらし,その内側の同心円状の位置(径86m)に56の土坑を掘っている。この土坑からは火葬人骨が出土した。北東の開口部の外には高さ5mの自然石(ヒール・ストーン)が立てられ,さらに,土塁と土坑列に重なって,低い土盛りの上に石を立てた施設(ステーション)が4基設けられた。Ⅱ期には,中心からほぼ13mと11mの位置に同心円状に二重に,それぞれ38個の立石を配した。ブルーストーン・サークルである。開口部はⅠ期と一致し,そこから幅13mの道路状遺構(アベニュー)がほぼ550m北のエーボン河畔まで通じている。現存する壮大な巨石記念物はⅢ期に構築された。ブルーストーン・サークルより一回り大きく,径30mの円周上に30個の巨石を立て並べ,この立石の上に楣(まぐさ)状に巨石をのせ輪状に連結した(サーセン・サークル)。立石は1個25t,楣石は7tに及ぶ。この石列内に,30cmの間隔をおいて立てた2個の巨石の上に楣石をのせた総高7mの通称トライリソンを5組,馬蹄形に配置している。この時期には,ブルーストーンもサーセン・サークルとトライリソンの内側に配置し直された。ストーンヘンジについては,魔術師マーリンがアイルランドから移したという伝説やドルイド教徒の祭祀場とみる説があった。実際はそれよりはるかに古いものだが,それが特殊な祭祀遺跡であることは疑いない。すでに18世紀にヒール・ストーンの方向が夏至の日の出の方向に一致することが指摘され,最近では巨石や土坑などの配置や高さなどから,さまざまの天文観測の可能性を推測し,それを中心とした祭祀執行の場とする説も提出されている。
執筆者:田中 琢
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イギリス南部ソールズベリー平野のほぼ中央にある巨石記念物。世界各地にあるストーン・サークルのうちもっとも著名な遺跡で、20世紀に入ってからの数次にわたる調査の結果、年代や構築状況が解明されてきた。1986年に巨石記念物であるエーブベリー、関連する遺跡群とともに世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。ストーンヘンジは、中心から、トリリトン、サーセン円、Z穴、Y穴、オーブレー穴、周溝が同心円状に配列され、北東部にはヒル・ストーンが建ち、そこに至る通路がつくられている。これらの構成は一時期につくられたのではなく、Ⅰ~Ⅲ期に段階的に建造、使用されたことが判明し、その実年代は紀元前2800~前1100年ごろと推定されている。
Ⅰ期には主として外周部がつくられた。Ⅱ期にはブルー・ストーンとよばれる石が搬入され、サーセン円とトリリトンの中間に二重の環状に建てられた。Ⅲ期はさらにa~c期に細分されているが、ストーンヘンジ最大の構築物であるトリリトンとサーセン円がつくられた。サーセン石のうち最大のものは50トンを超える。またこの時期にはブルー・ストーンの建て替えを行っている。
G・S・ホーキンズはこれらの石の配列をさまざまな角度から考察し、「ストーン・サークル=天文台」説を提唱したが、ストーンヘンジの中心と、ヒル・ストーンを結ぶ線が夏至の日の出の方向を示す以外は一般には認められていない。また墓壙(ぼこう)を伴うことから埋葬との関連も考えられる。
[寺島孝一]
『G・S・ホーキンズ著、竹内均訳『ストーンヘンジの謎は解かれた』(1983・新潮社)』
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イングランドの南部ソールズベリ平原にある巨石遺構。環状列石(ストーン・サークル)の形態をとり,直径107mの環状の濠と土塁の内部に巨大な数十個の立石と一個の平石を配している。青銅器時代の前19~前15世紀に数回に分けて建造されたとみられる。その用途としては祭儀,太陽崇拝,あるいは葬儀の場と推測されているが,不明であり,建造した民族もはっきりしていない。
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…19世紀末のアーツ・アンド・クラフツ・ムーブメントはその意味で,イギリスに典型的な運動であったといえよう。
【建築】
[古代,中世]
本来の建築とは見なされないが,先史時代の建築的な遺物としては,ソールズベリー平野のストーンヘンジがある。ヨーロッパの巨石記念物の代表的なもののひとつに数えられるが,その目的については定説がない。…
…たとえばフランスのブルターニュ地方のカルナック列石は,3群に分かれて東西3kmにわたって続くが,各群の端部にはストーン・サークルあるいはドルメンが付属する。またストーンヘンジ遺跡は二つのストーン・サークルからなるが,それぞれ中央にドルメンおよびメンヒルが立っている。 クレーンとか滑車などの道具がない時代に,このような巨石を動かしたり立てたりすることは極めて困難であったろう。…
…北西ヨーロッパの新石器時代から青銅器時代にかけては,巨大な石で構築した各種の遺構の存在が目だっており,巨石記念物と総称されている。その代表例とされるイギリスのストーンヘンジや3000本近い立石を列に並べたフランスのカルナック列石(クロムレクcromlech)は,ともに太陽崇拝との関連が論じられている。 農耕祭祀とのかかわりとは無縁だが,日本の縄文文化にも環状列石(ストーン・サークル)がある。…
…ウェールズ語の呼称クロムレックcromlechを採用したり,立石の上に楣(まぐさ)石を置いて相互に連結したものをヘンジhengeと呼んで特に区別することがある。ヨーロッパの大西洋岸に多くの遺構があり,イギリスのストーンヘンジ,エーブリーや,フランスのエル・ラニック,カルナックのものが著名である。ヨーロッパ以外でも,西南アジアのシナイ,アラビア,イラン,インドのデカン高原やアッサム地方,南シベリアのミヌシンスク地方,中国の甘粛省,日本の北海道,東北地方などに存在する。…
※「ストーンヘンジ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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