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スピン波 スピンはspin wave

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

スピン波
スピンは
spin wave

絶対零度で原子的な磁気モーメント (スピン) は強磁性体では磁化容易軸方向に整列しているが,この状態からのスピンの整列の乱れが,スピン間の交換相互作用によって次々と結晶内を伝わる。この波をスピン波という。これを量子化して得られる量子マグノンである。スピン波の波数 k とそのエネルギー E との間には,強磁性体やフェリ磁性体では Ek2 ,反強磁性体では Ek という関係がある。低温の物性に重要な役割をしている。スピン波は中性子散乱実験などで直接に観測できる。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

スピン波
すぴんは

強磁性体の結晶で、原子(あるいはイオン)が励起されたとき、スピンの方向が首を振りながら波のように伝播(でんぱ)するという運動が考えられる。これをスピン波という。結晶中で電子の波動関数が磁性イオンによく局在しているときには、各磁性イオンの格子点に局在した磁気モーメントを考えることができる。局在した電子には、なおスピンの自由度が残されているので、磁性イオンは外界との相互作用においてスピン系として取り扱うことができる。一方スピン系内では、電子間のクーロン相互作用に起因する相互作用が働いている。それは交換相互作用とよばれ、i格子点のスピンをsij格子点のスピンをsjとすると、

と書ける。Jijは交換積分とよばれ、隣接する二つの磁性イオンijにそれぞれ局在している電子の間のクーロン相互作用のうち、それぞれの電子の波動関数の干渉によって引き起こされた部分を表している。
 スピン波は強磁性体や反強磁性体のように秩序状態にあるスピン系において発生する。絶対零度では各スピンは整列していて動かないが、温度がすこし上がったとき、これらの物質のようにスピンの自由度をもつ場合には、熱的励起がスピン系にもおこる。すなわち、各スピンは整列方向からすこし傾いて、整列方向を中心軸とする円錐(えんすい)状に回転する。このとき、隣接するスピン間には交換相互作用Hexによる力が働いているのでスピン系は連成振動をおこす。これがスピン波である。スピン波はスピンの集団運動であり、スピン系の素励起である。このようすは格子振動に例えることができる。格子振動のエネルギー量子をフォノンとよぶのに対応して、スピン波のエネルギー量子はマグノンとよばれる。スピン波のふるまいは、おもに中性子散乱などの実験手段によって詳しく調べることができる。[安岡弘志]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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