ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スメール」の意味・わかりやすい解説
スメール
Smale, Stephen
アメリカ合衆国の数学者。1948年から 1956年までミシガン大学で学び博士号を取得,1956~58年シカゴ大学で研究生活を送る。その間,自己交叉は許容したうえで特異点をもたないように変形することによって,3次元空間内の球面を裏表反転できることを証明した。1960年カリフォルニア大学バークリー校教授,翌 1961年コロンビア大学教授などを歴任。1966年にソビエト連邦のモスクワで開催された国際数学者会議で,位相幾何学(→トポロジー)に関する業績によりフィールズ賞を受賞した。1960年,スメールは二つの重要な成果を得た。一つはカオス理論(→複雑系)のパラダイムに大きな役割を果たす馬蹄型写像の発見,もう一つは 5次元以上におけるポアンカレ予想の証明である。古典的なポアンカレ予想によると,コンパクトで単連結な 3次元多様体は 3次元球面と位相同形となる。2次元の場合のこの球面の特徴づけについてはすでに 19世紀に証明されていた。一般の次元におけるポアンカレ予想は,球面とホモトピー同値な多様体は球面と位相同形であると定式化される。1961年にスメールは h同境定理を証明し,高次元多様体の分類の基礎となった。スメールの業績は,力学系,経済学,非線形解析学(→解析学),計算数学などの幅広い領域に及ぶ。
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