スモモ(読み)すもも(その他表記)plum

翻訳|plum

日本大百科全書(ニッポニカ) 「スモモ」の意味・わかりやすい解説

スモモ
すもも / 酸桃

plum

バラ科(APG分類:バラ科)サクラ属スモモ亜属(バラ科スモモ属とする説もある)のうちのスモモ類(英名プラム)の総称で、約80種があり、このうち十数種が果樹として栽培利用されている。落葉性の低木または中高木で、アジア、ヨーロッパ、北アメリカに分布する。花は白色で、萼(がく)、花弁とも5枚、雌しべ1本、雄しべは多数、ウメに次いで早春に開く。多くの品種は自家不結実性が高い。熟期は6~8月である。ニホンスモモ、セイヨウスモモおよびこれらを素材として育成された品種が多く栽培され、次の各種が果樹として重視される。

(1)ニホンスモモPrunus salicina Lindl. 原産地は中国揚子江(ようすこう/ヤンツーチヤン)流域から日本に及ぶ地域といわれる。小高木で、枝に刺(とげ)のあるものがある。葉は薄く、淡緑色、長倒卵形で細かく鋭い鋸歯(きょし)がある。開花期は早い。果実球形ないし長球形で、果皮や果肉は黄色または紫紅色である。これまでに米桃(よねもも)、寺田李(てらだすもも)、万左衛門(まんざえもん)、甲州大巴旦杏(はたんきょう)(別名ケルシー)、ソルダムサンタローザ、ホワイトプラムなどの品種がつくられ、栽培されている。ニホンスモモの大果品をハタンキョウ(巴旦杏)、ボタンキョウ(牡丹杏)とよぶこともある。

(2)セイヨウスモモP. domestica L. 原産地はカフカスコーカサス)からカスピ海にかけての地域。中高木で枝に刺はない。葉は肉厚で暗緑色、卵形または倒卵形で不ぞろいの鋸歯がある。花は大きい。果実も大きく、球形または卵形で、果肉は黄色のものが多い。豊産性で、これまでに1000品種余りが発表されている。日本ではかつて雨の少ない東北地方で栽培され、セイヨウハタンキョウの名で知られたが、熟すと果実が裂けるものも多く、おもな用途が乾果であったため栽培は伸びなかった。

(3)ダムソンスモモP. domestica subsp. insititia (L.) Bonnier et Layens(P. insititia L.) 原産地はヨーロッパ南東部から西アジア。前種に似るが、果実は広楕円(こうだえん)形または卵円形で小さい。

(4)アメリカスモモは、アメリカスモモP. americana Marsh.やメキシコスモモP. mexicana Wats.などアメリカ原産のスモモの総称で、種類は多いが、品質不良で、日本では栽培されていない。このほかP. maritima Marsh.もアメリカ原産で、主として観賞用とする。

[飯塚宗夫 2020年1月21日]

栽培

繁殖は接木(つぎき)による。台木にはモモやアンズのほかミロバランスモモmyrobalan/P. cerasifera Ehrh.などが使われる。植え付け本数は10アール当り15~18本がよく、自家不結実性が高いので、交配用に交雑親和性のある品種を10%程度混植する。日本での結果樹面積は2810ヘクタールで、年生産は1万9600トン(2017)、山梨県での生産がもっとも多い。全世界の生産は1205万トン(2016)である。

[飯塚宗夫 2020年1月21日]

食品

日本スモモは可食部100グラム中にカロチン48マイクログラムを含む。そのほかは栄養的にはみるべきものは少ないが、夏の生果物として貴ばれる。缶詰やプラム酒にもされるが、ペクチン含量が多いのでジャムゼリーに適している。プラム酒は、焼酎(しょうちゅう)1リットルにスモモ500グラム、砂糖150グラムを加えて漬け込む。ジャムは、生果1に対し砂糖0.7を目安とする。西洋スモモは乾燥果としての利用が多く、核をつけたまま乾燥しても良質の乾燥果の得られる品種をプルーンpruneといい、とくに需要が多い。この乾燥スモモを一晩水に浸してから甘く煮つめたものは洋菓子の飾りに用いられる。乾燥果の収率は品種や熟度によって異なるが、生果1.8~3キログラムから1キログラムの乾燥果が得られ、10アールの栽培から500キログラムの乾燥果が期待できる。

[飯塚宗夫 2020年1月21日]

文化史

中国では周代の『詩経(しきょう)』に載る王風(おうふう)の「丘中有麻篇(きゅうちゅうゆうまへん)」と題する詩には、丘中に李(り)ありと描写され、栽培下にあることがうかがえる。李白(りはく)は「春夜桃李の園に宴するの序」を詠んだ。日本へは上代に伝わり、『日本書紀』には「李(すもも)みのれり」(推古天皇24年)、「李華」(同34年)などの記述がある。『万葉集』では大伴家持(おおとものやかもち)の歌1首だけが載る。「わが園(その)の李の花か庭に落(ふ)る(ちる)はだれのいまだ残りたるかも」(19巻4140)。

[湯浅浩史 2020年1月21日]

『農山漁村文化協会編・刊『果樹園芸大百科14 スモモ・アンズ』(2000)』


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改訂新版 世界大百科事典 「スモモ」の意味・わかりやすい解説

スモモ (李)
Chinese plum
Japanese plum
Prunus salicina Lindl.

バラ科スモモ亜属スモモ区の落葉果樹。英語のプラムplumはスモモ亜属スモモ区に属するものの総称である。中国の華中地方,長江流域が原産で,日本でも多くの品種が分化していた。高さ3m以上になり,春に長い花柄を有する白色花を咲かせる。果実がやや酸味の強いことからスモモ(酸桃)と名づけられたが,完熟すると甘さをます。中国,朝鮮半島および日本での栽培歴は古い。日本では《古事記》に記載がある。米桃(よねもも),甲州大巴旦杏(こうしゆうだいはたんきよう)などの品種は明治時代になってから全国的に知られた。ハタンキョウ(巴旦杏。牡丹(ぼたん)杏ともいう)の名は明治時代にニホンスモモの大果品種につけられた名称である。アメリカは日本から1870年以後に導入し,L.バーバンクらが改良を行って多数の品種を育成した。現在の日本の栽培品種の多くはアメリカで育成されて逆導入されたものである。主要品種にはビューティ,大石早生(わせ),サンタローザ,フォーモーサ,大石中生(なかて),ソルダム,レートソルダムなどがある。

 スモモ亜属は北半球温帯に約30種が分布し,野生種の果実は調理の味つけや果実酒に利用されるが,ヨーロッパで栽培されてきたものにセイヨウスモモ(ヨーロッパスモモともいう)P.domestica L.(英名garden(European) plum)がある。ニホンスモモと一括してスモモと扱われることも多い。セイヨウスモモはアジア西部の原産で,二倍体のP.cerasifera Ehrh.と四倍体のP.spinosa L.の交雑から生じた六倍体と推定されている。欧米の夏季に雨の少ない地域で栽培が多い。果実を乾燥した乾果および乾果用品種をプルーンpruneとよぶ。日本へは明治初期に導入されたが,夏の湿潤気候に適さなかったため大半の品種は普及しなかった。現在では夏季に雨の少ない東北地方や長野県の一部地域で数品種が栽培されているにすぎない。

 栽培されている両種とも接木で繁殖される。台木は共台(スモモ自身を用いる)とするかモモの実生を用いる。自家不結実性が強いので受粉樹の混植または人工受粉が必要である。開花期が早いので晩霜のない地域が適する。主として生食とするが,果実酒,ジャム,ゼリーなどの原料にも用いる。セイヨウスモモは乾果や砂糖漬として料理や菓子にも用いられている。

 なお,中国ではスモモはモモと並んで春の代表的な花であり,果実も賞味される。〈桃李ものいわず,下おのずから蹊(みち)を成す〉(《史記》),〈君子は瓜田(かでん)に履(くつ)を納(い)れず,李下に冠を正さず〉(《古楽府》)などの格言があるゆえんである。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スモモ」の意味・わかりやすい解説

スモモ(酢桃)
スモモ
Prunus salicina; Japanese plum

バラ科の落葉小高木で,高さ 10mに達する。中国原産で古くから果樹として日本で栽培されているが,野生状態になって生育しているところもある。枝は多数分枝して横に広がり,若い枝には樹皮に光沢がある。葉は細長い楕円形または倒披針形で縁に鋸歯があり,互生する。春にアンズ (杏)よりやや遅れて,長い柄をもつ白色花が散形花序をなして1~3個集って咲く。果実は球形の核果で,赤紫または黄色に熟し,食用となる。糖果および飲料の原料とされる。今日,一般にプラム,またはスモモと呼ばれている果実には本種をもとに主としてアメリカで改良された一群の品種群と,まったく別種でヨーロッパ原産のセイヨウスモモ P. domesticaの品種群とがある。

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百科事典マイペディア 「スモモ」の意味・わかりやすい解説

スモモ(李)【スモモ】

バラ科の果樹。プラムとも。ニホンスモモとヨーロッパスモモとがあり,日本のものは大部分が前者で,原産地は中国の長江沿岸。甲州大巴旦杏(はたんきょう),ビューティ,ソルダム,万左衛門,米桃などが代表的品種。3月下旬ごろ白い小花をつける。5月中・下旬果実を間引き,7月中に収穫される品種が多い。開花期が早いので,晩霜のあるところは避ける。また品種を混ぜて植えないと結実が悪い。生食のほか,ジャム,干しスモモ(プルーン)などにする。
→関連項目ハタンキョウ(巴旦杏)

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事典 日本の地域ブランド・名産品 「スモモ」の解説

すもも[果樹類]

北陸甲信越地方、山梨県の地域ブランド。
主に南アルプス市・甲州市・笛吹市で生産されている。山梨県では大正時代に栽培が本格化した。現在は生産量全国トップクラスである。6月中旬頃から8月まで順次出荷される。生食のほかワイン・ラム酒・ジャムなどに加工されている。

出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域ブランド・名産品」事典 日本の地域ブランド・名産品について 情報

栄養・生化学辞典 「スモモ」の解説

スモモ

 →プラム

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