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スーパーコンピュータ supercomputer

翻訳|supercomputer

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

スーパーコンピュータ
supercomputer

同時代のなかでぬきんでて高速の処理能力をもつコンピュータスパコンと略される。定義は必ずしも明確ではなく,個人で使用する端末のパーソナル・コンピュータや,複数台の端末が接続して利用するワークステーションサーバなどよりもさらに高性能のものをいう。たいていは,大学などの共用機関に設置され,多数の端末で共同利用される。計算性能も,同時代の最高技術(半導体素子,装置実装,冷却,アーキテクチャ,システムソフトウェアなど)を用いて設計され,単体でもパーソナル・コンピュータの 10倍程度になるが,さらに数百個規模で並列化することでシステムとしては 1000倍以上に増強でき,地球規模の気候変動を予測するシミュレータ(→コンピュータ・シミュレーション)や生体のタンパク質と化合物との相互作用を予測する創薬研究などに役立てられている。そうした並列化によって組み立てられた個々のシステムについてもスーパーコンピュータと呼ぶ(→超並列コンピュータ)。歴史的に,CDC 6600/7600,IBM 360/195,ILLIAC IV,TI ASC,STAR-100などが知られており,日本では海洋研究開発機構の地球シミュレータや理化学研究所の京(けい)が性能世界ランキングで 1位になったことがある。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

スーパーコンピュータ
すーぱーこんぴゅーた
supercomputer

並列計算処理などを活用し、膨大なデータを超高速演算できる大型コンピュータ。略称スパコン。明確な定義はないが、家庭用のコンピュータの少なくとも1000倍以上の演算速度があるものをスパコンと一般的によんでいる。
 演算速度は、1秒間に四則演算を何回できるかで計る。1秒間に1回できることを1FLOPS(フロップス)(Floating-point Operations Per Second)というが、2015年時点の最速スパコンは中国国防科学技術大学の「天河(てんが)2号」で33.86PFLOPS(ペタフロップス)(1ペタは10の15乗を意味する)、つまり1秒間に3京(けい)3860兆回の計算ができる。ちなみに日本の理化学研究所(理研)と富士通が共同開発したスパコン「京」は10PFLOPS、つまり1秒間に1京回の計算ができる。京には「大きな門」の意味があり、スパコン京には、計算能力と「計算科学の新たな門」という意味が込められている。
 スパコンは、コンピュータの命令・解読などを行うCPU(中央処理装置)を複数もち、同時(並列的)に複数のタスクを実行する「並列処理機能」をもつ。1960年代から本格的に開発が進められてきたが、世界最初のスパコンは1976年に開発された「クレイ1」である。アメリカのコンピュータ技術者のシーモア・クレイSeymour R. Cray(1925―1996)が手がけた。性能は、160MFLOPS(メガフロップス)(1秒間に1.6億回)で、「クレイ1」開発から35年後の2011年に発売されたスマートフォンのiPhone(アイフォーン) 4sの性能140MFLOPSと同等の速さしかなかった。以後、CPUの向上などで計算速度は右肩上がりに速くなった。
 日本の最初のスパコンは、1977年(昭和52)に富士通が開発した超高速科学計算用コンピュータ「FACOM230-75APU」である。計算速度は最大22MFLOPSあり、航空宇宙技術研究所(現、宇宙航空研究開発機構:JAXA(ジャクサ))に納入され、流体解析などに用いられた。その後、スパコンの開発競争は激化し、日本政府もスパコン開発に本腰を入れ始めた。計算速度から上位500基のランキングを発表する「TOP500」(ドイツとアメリカで、それぞれ6月と11月に開催されるスパコンの会議で公表)では、日本のスパコンはこれまで5基、延べ13回世界一に輝いている。
 最初の世界一は、1993年(平成5)、航空宇宙技術研究所と富士通が開発したスパコン「数値風洞」である。性能は280GFLOPS(ギガフロップス)(1秒間に2800億回)に達し、1993年11月、1994年11月~1995年11月(1994年6月は2位)に世界一に輝いた。1996年6月には日立製作所が発表した「SR2201」が、同年11月には筑波大学と日立製作所が共同開発した「CP-PACS」が世界一の座についた。2002年(平成14)6月には、海洋科学技術センター(現、海洋研究開発機構)とNECが開発した「地球シミュレータ」が41TFLOPS(テラフロップス)(1秒間に41兆回)で1位になり、2004年6月まで5回連続1位となっている。京は、2011年6月と11月に世界一になった。一方で、スパコンの性能を示す指標にはほかに、消費電力当りの速度を競う「The Green 500 List」というものがある。このランキングで、2003年に日本のスパコンとして初めて、東京工業大学の「TSUBAME-KFC」がトップになった。
 中国の「天河2号」は、2013年6月から現在4回連続でTOP500のランキング1位を圧倒的な速度で維持しているが、応用面や消費電力の大きさで課題が指摘されている。その点、京は低消費電力の汎用(はんよう)型スパコンで使い勝手もよく、実行効率がきわめて高い。実行効率は、理論上の性能(計算速度)をどこまで出せるかを示すもので、京は93.2%を達成した。「天河2号」は61.7%、2位のアメリカエネルギー省(DOE)オークリッジ国立研究所にある「タイタン」は64.9%である。
 京が利用される重点5分野は、以下のとおりである。(1)生命科学・医療および創薬基盤、(2)新物質・エネルギー創成、(3)防災・減災に資する地球変動予測、(4)次世代ものづくり、(5)物質と宇宙の起源と構造。政府系の研究機関だけでなく、大学、民間企業もすでに利用している。
 こうした京を利用した日本のプロジェクトは世界的にも評価され、卓越した業績をあげた研究に贈られ、スパコンのノーベル賞といわれる「ゴードン・ベル賞」を、2011年と2012年に2回受賞している。1回目は、理研や筑波大、東大、富士通などの共同研究チームによる、次世代半導体材料として注目される「シリコン・ナノワイヤ」の電子状態の計算で、実行効率は43.6%、3PFLOPSの計算を達成した。普通、計算以外の実行効率は10%なので飛躍的に向上した。2回目は、筑波大、東工大、理研の研究チームによる宇宙ダークマター(暗黒物質)の計算である。宇宙創成の鍵(かぎ)を握る物質であるダークマターのシミュレーション計算を京で行った。こちらも実行効率を55%引き出すことに成功した。
 政府は2013年12月24日、京の次世代のスパコンを開発する「エクサスケール・スーパーコンピュータ開発プロジェクト」を閣議決定した。目標は、京の演算速度の100倍。2020年まで総事業費1400億円(国費負担1100億円)としている。アプリケーションも京の100倍の向上を目ざす。消費電力は30~40メガワットとし、京の12.7メガワットの2~3倍程度に抑える計画である。[玉村 治]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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