一般には、新しく発生した信仰や、従来の信仰に対する新しい解釈を、守りかつ維持する目的で、教祖や分派指導者を中心に自発的に結成された宗教運動をいい、常識として、いわゆる新興宗教や小さな分派がセクトとして扱われる。また世俗的には、政治集団やイデオロギー組織として新しく発生した小集団や分離独立した分派を、当の社会の主流をなす諸集団と対置して、セクトとよぶことも多い。宗教的、世俗的のいずれの場合にも、セクトは思想(教学やイデオロギー)上、組織上、まだ未成熟さを残しているが、またそれだけに、当の社会に大きな影響をもつ既成教団や公認教会、あるいは主要思想集団に対して、つねに批判的かつ挑戦的に立ち向かう活力をもつ宗教運動、政治運動である。その意味でセクトは反権力であり、その庶民性を特徴とする場合が多い。
セクトは、宗教用語としては、とくにキリスト教文明圏において、チャーチ(制度的正統教会)と対比して使用される。この分野ではE・トレルチの研究が有名で、普遍的教会としてのカトリックや、各国の国教会、公認教会のような主流組織をチャーチとし、それに対抗する福音(ふくいん)主義的な分派や新興小会派のように、個々人が信仰に基づいて集まった宗教運動をセクトと定義した。自分たちの主義主張を維持する必要上、セクトは、宗教的、世俗的組織を問わず、つねに伝道や教宣活動に重きを置いている。なかには、宗教改革後の小会派であるメノナイトやバプティスト、あるいは時代は飛ぶが、わが国の新左翼セクトを典型例として、日常の伝道や教宣活動の範囲を超えて良心的徴兵拒否、反戦運動などの過激な反権力活動に走った者もある。
[井門富二夫]
『B・ウィルソン著・池田昭訳『セクト その宗教社会学』(1972・平凡社)』▽『S・デ・グレージア著、佐藤智雄・池田昭訳『疎外と連帯――宗教的政治的信念体系』(1966・勁草書房)』
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