セントヘレンズ山(読み)セントヘレンズさん(その他表記)Mount Saint Helens

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「セントヘレンズ山」の意味・わかりやすい解説

セントヘレンズ山
セントヘレンズさん
Mount Saint Helens

アメリカ合衆国ワシントン州南東部のカスケード山脈にある火山標高 2549m。1980年に起こった北アメリカで過去最大級の大噴火で知られる。イギリスの航海士ジョージ・バンクーバーが命名。火山活動(→火山作用)は 1857年以降みられなかったが,1980年5月18日の朝にマグニチュードM )5.1の地震が発生,それが引き金となり,北側の斜面で巨大な土砂崩れ(→山体崩壊)が起こった。北側斜面の崩壊により,内部に蓄積したマグマが噴出して大規模な火砕流が発生し,温度 350℃,時速 500kmの火山噴出物山頂から約 25kmにわたり猛烈な勢いで流れ出した。一方,爆発と同時に火山ガス火山灰が混ざり合った噴煙が高さ 2万6000mまで噴き上がり,降灰は東方のモンタナ州中央部付近にまで達し,約 400km北東のスポーケン暗闇に包まれた。火山円錐丘は完全に吹き飛ばされ,標高は 2950mから 2549mに減少し,馬蹄形の巨大な火口が出現した。この噴火は 57人の犠牲者を出し,数千頭の動物が死に,約 500km2にわたる森林が火砕流にのまれて焼失した。噴火は 1986年まで続き,火口には溶岩円頂丘が断続的に形成された。また地震活動は 1989~91年(小規模な爆発も含む),1995~98年にもみられた。1982年,山を取り囲む 445km2地域がセントヘレンズ山国定火山記念物に指定された。

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改訂新版 世界大百科事典 「セントヘレンズ山」の意味・わかりやすい解説

セント・ヘレンズ[山]
Saint Helens

アメリカ,ワシントン州南部にある大型の活火山。過去数千年間活発に噴火し,標高2975mの秀麗な富士山型の玄武岩,安山岩,デイサイト質の岩石からなる成層火山であった。最近の噴火は1980年に始まったが,5月にマグニチュード5の地震が発生し,山頂部が大崩壊し,ひきつづいて軽石,火山灰が噴出した。この結果,山頂の北半分が失われ,山頂は350m低くなった。死者は70人以上,広大な針葉樹林爆風でなぎ倒され,岩屑流は谷を埋め,洪水を生じた。なおこの噴火により,成層圏内の硫酸エーロゾルが増加し,気候に影響を与えるのではないかと懸念された。
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世界大百科事典(旧版)内のセントヘレンズ山の言及

【カスケード[山脈]】より

…カリフォルニア州シエラ・ネバダ山脈の延長として,約1100kmにわたって同州北部のラッセン山から北に延び,オレゴン,ワシントン両州を貫き,カナダの海岸山地Coast Mountainsへと続く。コルディレラ褶曲山系に属し,火山が連なり,とくにワシントン州のセント・ヘレンズ山の近年の噴火活動は注目を集めている。最高峰は〈タコマ富士〉とも呼ばれるレーニア山(4392m)でその他3000mを超す高峰が多い。…

※「セントヘレンズ山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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