火山ガス(読み)かざんガス

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「火山ガス」の意味・わかりやすい解説

火山ガス
かざんガス
volcanic gas

火山から噴出する気体。噴気ともいい,火山ガスが絶えず噴出する場所を噴気孔という。マグマに含まれる揮発性成分を起源とするが,火山作用によって噴出するまでの間に,周辺の岩石との反応,地下水や熱水だまりへの溶解,地下水との混合などの影響を受けて組成変化する。主成分は水(水蒸気)で,日本列島など島弧(弧状列島)の多くの火山では体積比はおよそ 90%以上を占める。ほかに二酸化炭素,二酸化硫黄酸化硫黄),硫化水素水素ヘリウム窒素塩化水素フッ化水素水銀などが含まれるが,成分の割合は火山によって大きく異なる。たとえば有珠山の平均的化学成分は水 99.2%,二酸化炭素 0.43%,二酸化硫黄 0.067%,硫化水素 0.017%等で,ハワイ島のキラウエア山では水 70.75%,二酸化炭素 14.07%,二酸化硫黄 6.40%,窒素 5.45%,三酸化硫黄 1.92%,一酸化炭素 0.40%,水素 0.33%,アルゴン 0.18%,硫黄 0.10%,塩素 0.05%等である。また一つの火山でも,噴出する場所や時期によって火山ガスの成分が著しく変化することもある。火山ガスのうち,二酸化硫黄(無色・刺激臭),硫化水素(無色・腐卵臭)などは有毒で,人体に悪影響を及ぼす。2000~05年に三宅島で実施された全島避難措置は,有毒な火山ガスの発生が大きく影響した。気象庁は火山活動に関する情報として,噴火警報予報,降灰予報(→火山灰)のなどほかに火山ガス予報を発表している。また,大規模な火山噴火に伴い硫黄分を含んだ大量の火山ガスが成層圏に入ると,生成された硫酸エアロゾルにより地上に到達する日射量が減少し,一時的に世界の気温を低下させることもある(→火山の冬)。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「火山ガス」の意味・わかりやすい解説

火山ガス
かざんがす

地下のマグマに溶け込んでいた揮発性成分が、気体となって地表に噴出するもの。火山の噴火はその圧力を原動力として引き起こされ、それに伴って溶岩などが噴出する。固形物を伴わずにガスだけを放出するのを噴気という。火山ガスは、平常火口、噴気孔、温泉などから徐々に噴出されることが多い。火山ガスの主成分は水蒸気であり、水の沸点以下の温泉ガスを除くと、95~99.5%をも占める。そのほか、二酸化炭素、一酸化炭素、二酸化硫黄(いおう)、硫化水素、塩素、フッ素、窒素、水素などのいくつかを含む。噴気の温度・量や組成の変化は、噴火予知手掛りになりうる。噴気孔には、火山ガスから凝固・析出した種々の昇華物ができていることが多い。

諏訪 彰]


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