マグニチュード(読み)まぐにちゅーど(その他表記)magnitude

翻訳|magnitude

デジタル大辞泉 「マグニチュード」の意味・読み・例文・類語

マグニチュード(magnitude)

地震そのものの規模を表す尺度。また、その数値。通常、震央から100キロ離れた地点にある標準地震計の最大振幅ミクロン単位で測り、その常用対数で表す。マグニチュードが1増加すると、エネルギーは約30倍増加する。震度とは異なる。記号M →モーメントマグニチュード地震モーメント
[補説]地震の大きさとマグニチュード
大きさマグニチュード
極微小地震M1未満
微小地震M1以上、M3未満
小地震M3以上、M5未満
中地震M5以上、M7未満
大地震M7以上
※M8以上の大地震は巨大地震ともいう。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

共同通信ニュース用語解説 「マグニチュード」の解説

マグニチュード

地震の規模を示す値で、数値が0・2増えるとエネルギーは約2倍、1・0増えると約30倍になる。複数の計算法があり、気象庁が地震発生時に速報するのは「気象庁マグニチュード(Mj)」で、短周期地震波の最大振れ幅から計算し、早く算出できるが、M8以上の巨大地震では精度が低くなる。断層運動を反映し地震規模をより正確に表す「モーメントマグニチュード(Mw)」は揺れが収まるまでの地震波のデータを使うため、算出まで約10分かかる。東日本大震災で気象庁が当初、発表した速報値はMj7・9、確定値はMw9・0だった。

更新日:

出典 共同通信社 共同通信ニュース用語解説共同通信ニュース用語解説について 情報

精選版 日本国語大辞典 「マグニチュード」の意味・読み・例文・類語

マグニチュード

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] magnitude ) 地震の規模を表わす数値。震央から一〇〇キロメートルの距離にある地震計に記録された最大振幅の常用対数値を基準とし、震央から適宜の距離にある地震計の測定結果をそれに合わせて換算・補正してだす。震度が観測地点での揺れを表わすのに対し、これは地震そのものの大きさを示す。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マグニチュード」の意味・わかりやすい解説

マグニチュード
まぐにちゅーど
magnitude

「地震の大きさ」を表す指標。地震の大きさというものを定義することにより、それぞれの地震を定量的に比較することができる。なお、マグニチュードのことを、日本語では「規模」ということもある。マグニチュードを定義する際には、地震波として放射されたエネルギー量として定義されることが望ましい。しかし、地震波エネルギーそのものが実際に計測できるわけではないので、以下に述べるアメリカの地震学者リヒターCharles Francis Richter(1900―1985)によるマグニチュード算出式の提案以降、伝統的には、地震計で計測された地動の最大振幅をもとにしてマグニチュードは決定される。具体的には、震源から一定の決められた距離に置かれている標準的な地震計に記録された地動の最大振幅の常用対数に比例する量としてマグニチュードは定義される。実際には標準的な地震計が震源から一定の距離の場所に置かれていることはめったにない。しかし、距離とともに地動の最大振幅がどのように減少していくかということ(これを距離減衰とよぶ)は経験的にわかるので、地震計がどのような場所に置かれていてもマグニチュードは算出できる。そのため、マグニチュードの算出式は、地動の最大振幅に関する項と地動の最大振幅の距離減衰に関する項からなる。普通は、多くの観測点で算出されたマグニチュードを観測点全体で平均したものをその地震のマグニチュードとする。以下で述べるように、用いる地震波や地震計の特性の違いにより、マグニチュードにはいくつかの異なる定義がある。

[山下輝夫]

沿革

歴史的には、マグニチュードという概念は、1935年にリヒターにより初めて導入された。彼は、カリフォルニア州で発生する浅い地震の大きさを客観的に定義するため、震央から地表に沿って測った距離(震央距離という)が100キロメートル離れた地点に置かれた当時の標準地震計(ウッド・アンダーソン型地震計)で記録された最大変位振幅をミクロン(μm:マイクロメートル)単位で表し、その常用対数により地震の大きさを定義した。

 このリヒターの定義によるマグニチュードの算出式において用いられている最大変位振幅の距離減衰に関する項は、カリフォルニアの浅い地震にしか適用できないため、ローカル・マグニチュード(ML)とよばれる。その後、世界各地で起きている地震の大きさを適切に決めるため、MLとの整合性を保ちながら、新たなマグニチュードが提案されてきた。

[山下輝夫]

マグニチュードの種類

実体波マグニチュード・表面波マグニチュード・気象庁マグニチュード

国際的によく使われてきたものとして、実体波マグニチュード(mB)と表面波マグニチュード(MS)がある。日本では、地震情報として気象庁からマグニチュードが公表されているが、これは普通、気象庁マグニチュード(MJ)とよばれる。表面波マグニチュードは、周期20秒前後の表面波の最大変位振幅を用いて算出される。しかし、表面波は震源の浅い地震でしか放射されないため、震源の深い地震については、周期1秒前後の実体波(P波、S波)の最大変位振幅を用いた実体波マグニチュードが用いられる。気象庁マグニチュードは、周期数秒程度の地震波の最大変位振幅に基づいて決められている。ただし、小さな地震については、最大変位速度振幅を用いている。なお、変位とは地震に伴って地面が動いた距離、変位速度とは地面が動いた速度のことである。

 一般に、大きな地震になるほど、放射される地震波の卓越周期(もっとも大きな振動を引き起こす周期)が長くなる傾向がある。一方、それぞれの地震計は、固有周期(地震計の特性を反映した、その地震計固有の振動周期のこと)をもっているため、その固有周期より長周期の地震動ほど、地震計による地震動の計測が不正確になり、地動の大きさの割にはマグニチュードが十分大きくならないという現象が生じる。これを、一般にマグニチュードの飽和(または、頭打ち)とよぶ。表面波マグニチュードや気象庁マグニチュードでは、おおむね8程度でこのような飽和が起きると考えられている。

[山下輝夫]

モーメントマグニチュード

表面波マグニチュードや気象庁マグニチュードとは対照的に、1977年(昭和52)に地震学者の金森博雄(1936― )により提案されたモーメントマグニチュード(MW)は、震源での破壊の起き方に直接関係した量であり、マグニチュードの飽和の問題は起きない。具体的には、地震モーメントの常用対数に比例するものとして、モーメントマグニチュードは定義される。なお、地震モーメントは、断層付近の剛性率、地震に伴う断層のずれ、および断層の面積の積に比例する量である。モーメントマグニチュードは物理的意味が明確であるという利点があるが、その算出のためには、単に地動の最大振幅を計測するのではなく、震源で破壊がどう起きたかということの情報が必要となる。現在では、モーメントマグニチュードは大きな地震のマグニチュードの決定に、広く用いられている。

[山下輝夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「マグニチュード」の意味・わかりやすい解説

マグニチュード
magnitude

一つの地震の全体としての大きさを表す数値。一般にMと略記するが,決定方式によってMlMsmbのように添字を付けたり,小文字を用いたりして区別することもある。現在使われているマグニチュードはリヒターC.F.Richterによって1935年に提案されたものMlがもととなっているが,その決定法にはいろいろな方式がある。これらの方式は本来は同じ地震に対して同じ値が得られるものとして開発されたはずであるが,実際には方式によってかなりの系統的な差が出る。気象庁が発表する日本の地震のマグニチュードは,深さ60kmより浅い地震については坪井忠二の方法,深い地震については勝又護(まもる)の方法によって算出される。世界的には浅い地震については,グーテンベルクB.Gutenbergによる表面波マグニチュードMs,あるいはバネークJ.Vaněkほかによる表面波マグニチュード(これは上記のMsより平均0.2ほど大きい値となる),またはグーテンベルクによる実体波マグニチュード(広帯域地震計によるmbと短周期地震計によるmbがあり,両者はかなり違った値となる)などが広く使われている。なおきわめて大きい地震については,上記のマグニチュードはみな飽和してしまう(地震が大きくなってもマグニチュード値は大きく決まらない)ため,この欠点をもたないものとして,金森博雄によるモーメント・マグニチュードMw)が使われる。深い地震については,グーテンベルクの実体波マグニチュードが広く使われている。国際地震センター(ISC)やアメリカ地質調査所(USGS)では,全世界の地震のデータを集めて震源とマグニチュードを決定しており,バネークほかの方式による表面波マグニチュードをMsと記し,短周期地震計による実体波マグニチュードmbとともに発表している。

 マグニチュードは,特定の地震計(とくに指定しない方式もある)で測った特定の地震波(種類を指定しない方式もある)の最大振幅(周期を併用する方式もある)と震源の深さ,観測点の震央距離から,数式または図表によって算出する。方式によって異なる値が求まるのは,振幅を測定する地震波の種類や周期が違うことと,地震にはいろいろな性格のものがあり,また観測地点の条件もまちまちなことなどが組み合わされた結果である。マグニチュードは原理的にはいくらでも大きい値からいくらでも小さい値までありうるが,実際には20世紀最大の地震は1960年チリ地震のモーメント・マグニチュード9.5,日本付近では1933年三陸沖地震のモーメント・マグニチュード8.4(気象庁のマグニチュードは8.1)である。小さいほうは-2くらいまで観測される。

 マグニチュードの大きい地震ほど,震央付近の震度は高く,また広い範囲で感じられる傾向はあるが,震度はいろいろな条件に左右されるので,大きい地震のほうが必ず震度が高く,被害も大きくなるとは限らない。気象庁のマグニチュードでM8.0以上の浅い地震が内陸や沿岸部に起これば,広い範囲にわたって大災害が生じ,海底に起これば大津波が発生する。M7クラスでも,内陸部に起こり震源が浅ければ大震災となる。M6クラスでも条件が悪いとかなりの被害を伴う。M5クラスでは被害を生じることはまずないが,ときには震央付近で被害が出ることがある。

 マグニチュードは便宜的なもので,物理的に明確な意味のある量ではない。地震の大きさに対応する物理的な量としては,震源域から出る地震波のエネルギーEsが考えられるが,これを正確に測定するのは難しい。表面波マグニチュードMsとerg単位で表したEsとの間には,ほぼlog10Es=1.5Ms+11.8という関係が成り立つ。地震は断層の急なずれ動きにほかならないから,地震の大きさの表示として,断層面の面積Sとずれの量Uとの積SUを用いることが考えられる。これに対応するものとして地震モーメントM0が地震学では広く使われている。断層付近の岩石の剛性率をμとすると地震モーメントはM0=μSUで表される。先に述べたモーメント・マグニチュードMwM0(dyn・cm単位)からlogM0=1.5Mw+16.1という式によって変換したものである。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マグニチュード」の意味・わかりやすい解説

マグニチュード
magnitude

地震の大きさを表すスケール。アメリカの地震学者チャールズ・F.リヒターが 1935年に提案した定義がもとになっている。最初の定義はカリフォルニアの地震を対象に特定の地震計で観測された最大振幅の対数を基準にしたスケールであったが,その後同じくアメリカの地震学者ベノ・グーテンベルクとリヒターらにより,1940年代から 1950年代にかけて地震から放射される表面波の振幅をもとにした表面波マグニチュード (Ms) や実体波 (P波とS波) の振幅による実体波マグニチュード (mBあるいは Mb) などが考案され,世界中の地震についてマグニチュードが決められ,マグニチュードの基礎ができた。日本では地震の規模を気象庁が公式に発表し,気象庁マグニチュードと呼ばれている。また世界各地にある地震観測所では,それぞれの観測網に適したマグニチュード推定方法が用いられている。これらのマグニチュードは地震から放射されるさまざまな地震波で決められるため,個々の地震の特性によって,同じ地震に対して異なる値になることは珍しくない。近年モーメントマグニチュード (Mw) という地震断層の規模を反映したマグニチュードが提案され,規模の大きい地震ではモーメントマグニチュードが用いられることが多い。しかし,従来のマグニチュードも簡便性と小さな地震までマグニチュードを決めることができる実際性から,依然重要な指標となっている。マグニチュードは,その定義から1だけ増やせば地震のエネルギーは約 30倍になるという特徴がある。なお,マグニチュードが地震の震源での規模を表す量であるのに対し,震度は地震により引き起こされた地表でのゆれの強さを表す値で,震度は震源から離れるに従い小さくなる。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

知恵蔵 「マグニチュード」の解説

マグニチュード

地震の大きさを表す数値。震度とは違う。1935年にC.F.リヒター(米国)が南カリフォルニアの地震に対し便宜的に使ったのが最初。その後改良され、現在(1)ローカル・マグニチュード(リヒターの最初の定義による)、(2)表面波マグニチュード(グーテンベルクの式)、(3)表面波マグニチュード(バネークらの式)、(4)実体波マグニチュード(広帯域地震計を用いるもの)、(5)実体波マグニチュード(短周期地震計を用いるもの)、(6)モーメント・マグニチュード(地震モーメントから換算したもの)などが使われる。気象庁が発表するマグニチュードは、震源の浅い地震では(2)、深い地震では(4)にそれぞれ相当する数値。全世界の地震資料の取りまとめをしている国際地震センターや米国地質調査所では(3)と(5)を併用。(1)から(5)までには、大きな地震ではスケールが飽和し、地震の規模を適切に表現できない欠点がある。特に(1)と(5)はM7以上では使えない。(6)にはこの欠点がない。

(阿部勝征 東京大学教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

百科事典マイペディア 「マグニチュード」の意味・わかりやすい解説

マグニチュード

地震の規模を示す尺度。記号M。たとえば関東大地震ではM=7.9。震央距離と地震動の最大振幅とが与えられれば決まる量。最大振幅の対数をとって計算する。地震のエネルギーEとマグニチュードMとは次の関係がある。log E=11.8+1.5M(Eの単位はエルグ,logは常用対数)。これをグーテンベルク=リヒターの式という。
→関連項目地震首都直下型地震東南海地震

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のマグニチュードの言及

【地震】より

…この揺れのことを地震動というが,一般には地震動のことも地震と呼んでいる。
[マグニチュードと震度]
 地震には,数百kmの範囲にわたって強い地震動をもたらし,大災害を生じるような巨大地震から,地震動は人体に感じられず,高感度の地震計だけが記録するような微小地震まで,大小さまざまなものがある。地震の大きさ(規模)はマグニチュードによって表示される。…

※「マグニチュード」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android